重複立候補に関する覚書

本日、10月27日は衆議院議員総選挙の投開票日です。
そこで、開票の際に分かりづらい重複立候補と比例復活の仕組みについて、公職選挙法の規定を参照して解説していきます。

総選挙の比例代表選挙の仕組み

衆議院議員総選挙は、小選挙区と比例代表によって議員を選出する。また、比例代表の選挙区や定数は、公職選挙法の「別表第二」で定める。

公職選挙法
4条1項 衆議院議員の定数は、465人とし、そのうち、289人を小選挙区選出議員、176人を比例代表選出議員とする。

13条2項 衆議院(比例代表選出)議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第二で定める。

別表第二(第13条関係)
選挙区  議員数
北海道  8人
東 北  12人
 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北関東  19人
 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 
南関東  23人
 千葉県 神奈川県 山梨県
東京都  19人
北陸信越 10人
 新潟県 富山県 石川県 福井県 長野県
東海   21人
 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県
近畿   28人
 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
中 国  10人
 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
四 国  6人
 徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九 州  20人
 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

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各党への議席の配分

比例代表における各党への議席の配分は、ドント式を採用する。

公職選挙法
95条の2 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の得票数を一から当該衆議院名簿届出政党等に係る衆議院名簿登載者(…)の数に相当する数までの各整数で順次除して得たすべての商のうち、その数値の最も大きいものから順次に数えて当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにある商で各衆議院名簿届出政党等の得票数に係るものの個数をもつて、それぞれの衆議院名簿届出政党等の当選人の数とする

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図1 ドント式による各党への議席配分の例(第49回総選挙・比例北海道ブロック)

重複立候補と比例復活の仕組み

小選挙区の候補者は、所属する政党の比例名簿に登録することができる(重複立候補)。

公職選挙法
87条1項 一の選挙において公職の候補者となつた者は、同時に、他の選挙における公職の候補者となることができない。

86条の2第4項 …政党その他の政治団体は、第87条第1項の規定にかかわらず、当該衆議院(比例代表選出)議員の選挙と同時に行われる衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における当該政党その他の政治団体の届出に係る当該衆議院(比例代表選出)議員の選挙区の区域内にある衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区における候補者(…)、当該衆議院(比例代表選出)議員の選挙において、当該政党その他の政治団体の届出に係る衆議院名簿の衆議院名簿登載者とすることができる

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各党による比例での当選人の決定は、名簿の順位による(拘束名簿式)。

公職選挙法
95条の2第4項 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の届出に係る衆議院名簿登載者のうち、それらの者の間における当選人となるべき順位に従い、第1項及び第2項の規定〔注:ドント式による配分〕により定められた当該衆議院名簿届出政党等の当選人の数に相当する数の衆議院名簿登載者を、当選人とする。

86条の2第1項 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、…政党その他の政治団体は、当該政党その他の政治団体の名称(一の略称を含む。)並びにその所属する者の氏名及びそれらの者の間における当選人となるべき順位を記載した文書(以下「衆議院名簿」という。)を当該選挙長に届け出ることにより、その衆議院名簿に記載されている者(以下「衆議院名簿登載者」という。)を当該選挙における候補者とすることができる。

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重複立候補の場合に限って、名簿登録者を同一の順位とすることができる。

公職選挙法
86条の2第6項 …政党その他の政治団体が、…当該選挙と同時に行われる衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における候補者を2人以上当該政党その他の政治団体の届出に係る衆議院名簿の衆議院名簿登載者とする場合には、第1項の規定〔注:当選人となるべき順位を決めなければならないこと〕にかかわらず、それらの者の全部又は一部について当選人となるべき順位を同一のものとすることができる

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同一の順位の登録者(重複立候補者)については、
(1)小選挙区で当選した場合は、名簿から外れる。
(2)小選挙区で落選した場合は、当選候補と比べてどの程度の割合の票を獲得しているか(惜敗率)で名簿の順位を確定させる。

この(2)によって比例代表で当選人となる場合が、いわゆる「比例復活」と呼ばれるケースである。

公職選挙法
95条の2第5項 第1項、第2項及び前項の場合において、当該選挙と同時に行われた衆議院(小選挙区選出)議員の選挙の当選人とされた衆議院名簿登載者があるときは、当該衆議院名簿登載者は、衆議院名簿に記載されていないものとみなして、これらの規定を適用する。

95条の2第3項 衆議院名簿において、第86条の2第6項の規定により2人以上の衆議院名簿登載者について当選人となるべき順位が同一のものとされているときは、当該当選人となるべき順位が同一のものとされた者の間における当選人となるべき順位は、当該選挙と同時に行われた衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における得票数の当該選挙区における有効投票の最多数を得た者に係る得票数に対する割合の最も大きい者から順次に定める。

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具体例でみる重複立候補と比例復活

第49回総選挙・比例北海道ブロックの例(自由民主党)

図2-1 自由民主党の名簿(第49回総選挙・比例北海道ブロック) 
図2-1-1 北海道9区の選挙結果
図2-1-2 北海道11区の選挙結果

自由民主党の獲得議席は4であるので、
① 名簿順位が1位と2位の候補はまず当選人となる
② 名簿順位が3位の候補(重複立候補した者)が11人いるが、このうち6人が当選しているため、名簿から外れる
③ 名簿順位が3位の残り5人の惜敗率を比較し、上位2人が当選人となる

第49回総選挙・比例北海道ブロックの例(立憲民主党)

図2-2 立憲民主党の名簿(第49回総選挙・比例北海道ブロック)
図2-2-1 北海道4区の選挙結果
図2-2-2 北海道3区の選挙結果
図2-2-3 北海道10区の選挙結果

立憲民主党の獲得議席は3であるので、
① 名簿順位が1位の候補(重複立候補した者)が12人いるが、このうち5人が当選しているため、名簿から外れる
③ 名簿順位が1位の残り7人の惜敗率を比較し、上位3人が当選人となる

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