
くそお世話になりました!!!
(いわゆる #退職エントリー です)
はじめに
2017年12月ごろに出戻り入社して以来約7年間お世話になったナイルを2025年2月をもって退職することになりました。
本記事では、在職中の経験を振り返り、感じたことや学んだこと、そして退職の理由と今後の挑戦についてまとめたいと思います。
ナイルでの経験
ナイルではエンジニア、マネージャーとして様々なプロジェクトに携わり、貴重な経験をたくさん積むことができました。ここでは特に印象に残っている主なプロジェクトと、その中で挑戦したことについて振り返ります。
漫画サービス立ち上げ(2018年〜2022年)
この期間は、CGM(ユーザー生成コンテンツ)機能の導入や無料漫画コーナーから有料漫画ストア、漫画ビューワー、さらには決済システムなど、大規模かつ多機能なサービスを一から立ち上げるという貴重な経験をしました。
サービスが成長するに従ってコードベースも巨大化していきましたが、変更容易性を維持しながら新機能を素早くリリースする必要があり、“短距離を全力で走りつつ長距離も安全に走りきる”みたいなノリで開発していました。
それまでは受託開発の経験が中心だったため、自社プロダクトを長期的に育てるという点で設計やアーキテクチャに対する意識が大きく変わりました。ドメイン駆動設計(DDD)やクリーンアーキテクチャなどを実践しながら学ぶことができたのは非常に大きかったです。
また、当時すでに強力な競合としてLINE漫画などが存在する中で、自社の強みをどう活かして戦うのか、という事業面での戦略や意思決定にも触れることができ、サービス立ち上げの難しさと面白さを味わうことができました。
エンジニア組織改善プロジェクト(2022年〜2023年)
スピードを最優先にした目的別組織の形が長く続いた結果、プロダクトごとに縦割りが進み、横の連携が弱くなるなどの問題が顕在化していました。具体的には、似たような機能を別々のチームで開発していたり、あるチームでうまくいっている開発オペレーションが別チームではまったく共有されていないなど、非効率が目立っていたのです。
そこで、エンジニア組織として横の連携を強化しながら、チーム単位の開発効率や組織満足度を向上させるための改善施策を実行しました。問題解決の進捗がなかなか測定しづらかったので、外部のCTOアドバイザーサービスを利用したり、エンジニア組織サーベイを実施して満足度やモチベーションなどの指標を数値化し、改善の進捗を追いかける仕組みを構築しました。
こういった「形が見えにくいけれど大切な組織課題」に取り組み、データを基にした継続的な改善の流れをつくれたことはとても良い経験になりました。
Generative AI Lab(2023年〜2024年)
2022年末にOpenAIがGPT-3やChatGPT、OpenAI APIを公開して以来、社内で生成系AIの可能性をいち早く活かそうという動きが高まり、僕もその中心で動かせてもらいました。Embedding APIを利用して社内情報を検索するSlackBotを数日で実装したり、WhisperとGPT-3を組み合わせて商談の文字起こしを自動化・要点抽出するツールを開発するなどしました。
ニューラルネット、ディープラーニングの進化がソフトウェアの可能性を広げていく感覚を得ながらとても楽しく開発していたのを覚えています。
挑戦したことと得られた学び
以上のようなプロジェクトを通じて、常に新しい課題に挑戦し続ける姿勢を培うことができました。サービス立ち上げでは技術力だけでなく企画力・発想力、仮説検証力が問われ、組織改善では人と向き合うマネジメント力を問われ、Generative AI Labでは新しいテクノロジーへの対応力が試されました。プロジェクトごとに求められる役割は異なりましたが、いずれも自分の成長の糧となり、たくさんの経験と自信を与えてくれたと感じています。
学びと成長
ナイルでの経験を通じて、エンジニアとしてだけでなく一社会人として大きく成長できました。特に印象的だった学びを以下にまとめます。
持続的ソフトウェアエンジニアリング: 目先のリリースや一時的な成果だけでなく、長期的に保守・拡張できるソフトウェアを追求する大切さを学びました。開発初期に迅速さを優先した結果生まれた技術的負債を後から返済する苦労も経験し、テストやリファクタリング、設計の重要性を痛感しました。機能追加のたびに痛むコードベースを改善し続けたことで、ソフトウェアを持続可能に育てる視点が身についたと感じます。
マネジメント、組織づくり、コーチング: エンジニア組織改善プロジェクトや日々のチーム運営を通じて、人を育て、チームとして成果を出す難しさと向き合いました。メンバー各々の強みを活かし弱みを補う体制づくり、信頼関係を構築するコミュニケーションの取り方、動機付けやフィードバックの与え方など、マネジメントの奥深さを実感しました。新人エンジニアのメンターを務めた際には、自分の知識を言語化して伝える難しさを経験しつつも、メンバーの成長がチーム全体の力になる喜びを味わいました。技術と人の両面でチームを支えるスキルを伸ばせたことは、今後の財産になると考えています。
経営視点での技術負債やエンジニアリングの評価: 開発リーダーやVPoEとして採用や育成、評価などに責任を持つ経験を通して経営目線でエンジニアリングを捉える視点も身につきました。ただ良いプロダクトを作るでなく、ビジネス上のインパクトやROIを意識して技術選定や投資判断を行う重要性を学びました。開発リソース配分や技術負債の返済計画を経営層とすり合わせる経験を通じて、エンジニアとして経営に貢献するためには数字に強くなること、事業戦略を理解することが欠かせないと痛感しました。この視点を得たことで、技術的な提案をする際にも事業価値との関連付けを意識できるようになりました。
退職の理由と次の挑戦
これまでは与えられた役割の中で、何をやるかより誰とやるか、という感じでしたが、今後は自分が何に情熱を注ぎ、どんな価値を社会に提供したいかを優先して考えることにしました。
Generative AI Labでの取り組みに深く携わったことで、生成AIや自動運転など、ニューラルネットワークを活用したさまざまな先端テクノロジーに強い関心を持つようになりました。昨年車をテスラに乗り換えたこともあって、“Software Defined Vehicle” や “Fleet API” の設計、そして最近話題の “AI Agent” のコンセプトに大きな刺激を受けています。
将来的には汎用人型ロボットや自動運転車両などがローカルに大規模言語モデル(LLM)を搭載し、ネットワークを介して協調動作する時代が来る、その未来を想像するとワクワクが止まりません。そこで、こうしたテクノロジーが社会課題を解決していく過程に自分も深く関わりたいという気持ちが高まり、自分のキャリアの方向性が明確になってきました。
以上の理由から、私は次のステップとして PKSHA Technology(パークシャテクノロジー) へ転職することに決めました。PKSHA Technologyは『未来のソフトウェアを形にする』というミッションのもと、『ソフトウェアと人の共進化』をビジョンに掲げ多様な産業向けにソリューションを提供している会社です。
ソフトウェアエンジニアとしての目線で見ると、LLM(大規模言語モデル)の急速な進化やソフトウェア定義車両、汎用人型ロボットなどは、まさに“ソフトウェアがどこまで可能性を広げられるか”を問いかける存在だと感じています。
また最近は、Devinなどの「開発タスクを自動実行するAIエージェント」も次々と登場しており、ソフトウェアエンジニアリングそのものの在り方も大きく変わり始めています。しかし一方で、長期にわたって柔軟に機能追加・変更ができる設計や、ユーザーニーズに即したサービス運営の難しさはそう簡単にAIで置き換えられるものではないとも思っています。
だからこそ、テクノロジーの進化を取り入れつつ、事業やユーザー体験を支える根幹の部分で人間の創造性を発揮していく――その両輪をうまく回していくことが今後ますます重要になるはずです。
ナイルで学んだ事業づくりやマーケティングの知識・経験を活かして、これから先の社会で人々が本当に必要とするソフトウェアやサービス、事業をつくり上げていこうと思います。
そして最後に代表から授かったテーマである『新たな企業価値を自らの視点で定義し、仲間を巻き込んでそれをゼロから作り上げられるやつ』
これになれるよう、がんばってゆきます。
例え20年かかっても自分の意志で生き、築き上げる。それが聖域(サンクチュアリ)だってな気概でがんばります。
おわりに

ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。これを書いている今、僕は最終出社を終えたその足で友人と共に海を渡り、フィリピンにいる先輩を訪ねる旅の途中ですが、つい先月、日本人が拳銃で襲われるニュースがあったマニラを経由してさらに謎の島へ飛ぶというルートが指定されており生きて帰れるのか不安でいっぱいです。せっかく新しいチャレンジを見つけて盛り上がってきたところでうっかり死んでしまっては死んでも死に切れないので必ず生きて帰ってきたいと思っています。
最後にナイルのみなさん、そして関わってくださった全ての方々、本当にくそお世話になりました! これからもよろしくお願いします!!