デザインを学ぶ薬学部生が、実習を通して感じた薬歴システムの課題について
初めまして。
薬学部薬学科6年生でありながら、ものづくりを仕事にすることを目指すたまみかです。
先日、「Musubi」という最新の薬歴システムを作っているKAKEHASHIという会社にお邪魔してプロダクトを見せてもらったので、普通の薬歴に感じていた課題について述べてみたいと思います。
今回の記事を批判的に感じる方がいたら申し訳ないですが、私は医療現場はよりテクノロジーの力を取り入れて患者に最高の医療を提供するべきと考えております。
薬歴とは
薬歴とは薬局の医療カルテのようなものです。
薬学部生は5年生になると約5ヶ月間現場で実務実習を行うので、病院と薬局それぞれ少しずつ現場を体験してきました。薬局実習で感じた薬歴周りの課題についてお話しします。
薬剤師や医療関係者以外の方にも読んでいただけたら嬉しいです。
少し長くなりますがお付き合いください。
薬剤師の仕事とは
まず薬剤師という職業が何をやっているのかはっきりとわかっている方は意外と少ないと思います。
ざっくりいうと以下の三つです。
1、薬の調剤
医師の出した処方箋に従って、薬の準備をする。
2、薬の監査
処方箋の内容や患者個人の病気や他の病院でもらった薬の飲み合わせに問題がないか確認する。
3、薬の説明
患者に症状の確認をし、問題がなければ薬の飲み方や効果、注意点の説明を行う。
薬局の見取り図を基に説明すると以下のような感じです。
一般的に薬剤師というとこの1(調剤)だけ、薬を袋に詰める人のイメージがあるかもいるかもしれませんが実は大事なのは2(説明)と3(監査)なんです。
1(調剤)はどんどん自動化されてきていますしね。
クリニックなどで他に飲んでる薬を確認されても患者自身が正しく把握していないこともよくあるので、2(監査)で飲み合わせを確認することは医療事故を防ぐ大変重要な仕事です。
そしてこの2(監査)と3(説明)を行うのに重要なツールが、薬局版カルテである薬歴なんです。
薬剤師は患者に薬を出す前にこの薬歴を確認することによって、その人の他の病気や他の病院でもらった薬との飲み合わせを確認します。
監査と薬の説明に関して、実習のなかで感じた現場の課題
1、薬歴を見れる時間が短すぎる
調剤室の奥のpcで薬歴を確認します。
先ほども述べたように、薬歴を確認するというのはとても重要な仕事なのですが、患者を待たせているので見れるのがせいぜい数十秒なんですよね。
数十秒でその人の情報を頭に入れなきゃいけない。
これでは重要な情報が漏れてしまったり、焦って患者に確認する事項を忘れてしまう可能性が高いです。
2、薬について患者に説明するのが難しい
薬を説明するのが仕事なのですが、学校で習うのは専門的な薬効についてばかり。
患者に「ロキソニンというのはNSAIDsという分類の解熱鎮痛剤で、coxという物質を阻害することによって、痛みを発生させるプロスタグランジンという生理活性物質の合成を阻害します。」という説明は混乱を生みますね。
ですのでわかりやすい言葉、例えば「ロキソニンというのは痛み止めのお薬で、胃を荒らしてしまうことがあるためレバミピド(胃薬)と一緒にコップ一杯のお水で飲んでください。」という風に説明しなければならないのですが、新人でこれをいきなりやれと言われても難しい。
逆にべテランの人は、もうこの薬はこれと説明を覚えてしまっていますが、それもそれで薬の新しい情報が更新されないまま古い情報だけをずっと使ってしまっている可能性もあります。
3、聞かなきゃいけないことを聞き忘れてしまう
症状や薬ごとに聞かなければならないことが異なるので、思わず聞き忘れてしまうことがあります。
またメモをしっかりとる時間もなく、私が実習をしていた薬局では処方箋のコピーの端っこにちょろちょろっとメモしていました。
4、薬歴が溜まると大変
薬剤師の仕事は患者さんに薬を渡して終わりではありません。その後一人ひとりの患者の薬歴を書かねばなりません。
当然これはなくてはならない仕事なのですが、忙しい現場の中で薬剤師の大きな負担になってしまっていることは間違いありません。
また薬局が混雑する時間帯では、一回書くのは後回しにして患者に対応します。溜まった薬歴を一気に書くことが内容の空虚化を招いてしまう可能性は否めません。
5、薬歴ソフトのUI(画面のデザイン)が見づらい
toB向けのツールの多くに言える問題点かもしれませんが、薬歴ソフトの入力、閲覧画面もとても見にくいです。
薬局によって採用しているソフトの種類は様々だと思いますが、おそらくどれも見にくいんじゃないでしょうか。
私が使っていたソフトの薬歴の画面は前回までの薬歴を見れるスペースが小さすぎました。画面の1/6くらいでとても読みにくかったです。
先ほども述べたように、薬を出す前に薬歴を確認するのはとても重要な仕事でありながら時間がないのです。つまりこの画面によるUX(ユーザー、この場合薬剤師の感じること)は最悪です。
このような見づらい画面は、重要な事項の見落としに繋がってしまうと感じていました。
6、薬ごとに確認できない
上でも述べているように薬歴を確認するのに時間がない中、現在のシステムでは薬歴を薬ごとに分けて書いたり、確認することはできません。
KAKEHASHIの方に伺ったところ、薬ごとに入力する県もあるそうですが、それにしても最初から薬ごとに分けてかけるUI(画面のデザイン)、システム出あった方が便利です。
例えばある処方に対して「この患者高血圧だったけど、前回の数値どうだったかな?」と思った時すぐさま高血圧数値との薬についてだけ確認できた方が効率的です。
以上が私の感じた課題でした。
最後に
しかし私がお邪魔したKAKEHASHIさんの作っている「Musubi」はこの課題の多くを解決した画期的なシステムでした。
ぜひ確認してみてくださいね。
https://musubi.kakehashi.life/
最初にも述べたように、私は医療現場によりテクノロジーを取り入れヒューマンエラーを最小限にするべきだと思っているので、このようなシステムができて受け入れられ始めていることがとても嬉しいです。
分かりにくいところもあったと思うのですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。