見出し画像

鳴門海峡 門崎砲台が現れた

子どもの頃、砲台の中を歩いた
                  狭間 孝

真っ暗なトンネルの向こうに
四角い出口がある
手前では運転席の前にエンジン部分の突き出た
ボンネットバスが停まり
降りた乗客が暗がりの中へ歩いている

暗がりの先に白波が立つ潮の流れの中で
無数の伝馬船がわかめを採っている
そして岬の突端では
遠足にきたのだろう
女子中学生が弁当を食べている

野水(のみず)正朔(まさあき)が撮った
昭和三十年代の淡路島
懐かしの写真館の中にある
モノクロの写真二枚に
心ひかれてしまった

子どもの頃 鳴門岬へ遠足に行った時
確か真っ暗なトンネルの中を
歩いたような記憶がある
それは何だったのか 
モノクロ写真を見るまで分からなかった

あのトンネルはどこへ行ったのだろう
鳴門岬へ行くたびに
恋人の時も
妻になった時も
あなたに幻のような話をしていた

六十年以上過ぎた今年の夏
老朽した道の駅うずしお(旧みさき荘)建て替え工事で
地下から門崎砲台が姿を現した
色褪せたドーム状砲台の先は四角い射撃口から
鳴門海峡が見えていた

おぼろげだった僕の記憶
コンクリートむき出しの
崩れかけた砲台の中を
子どもの頃 僕は歩いた
探していたものは地下に隠れていたのだ

砲台は、海峡に向いていた
鳴門海峡 南あわじ市門崎岬の先に砲台があった。この辺りには、3カ所砲台群が残っている
鳴門海峡 門崎岬遠望
行者ヶ嶽の砲台群、弾薬庫跡か。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?