「マスクに意味がない」という主張の意味がわからない

日本人世界一マスクを着用しているのに感染者数がすごい、だからマスクは意味がない、と主張する人がいます。「世界一マスクを着用しているのに、陽性者数は世界最悪」。
いろいろな人が違うよ、と言っています。マスクを外している時に感染している、自然免疫を持っている人が少ない、日本だけが多いわけではない、などの説明が試みられています。実際、いろいろな仮説はあります。しかし真の理由はまだ解明されていません。少なくとも万人が認める詳細は、まだわかっていません。

しかしその前に、この主張は何なのか。きちんと論理的に説明しようとすると、どうなるのか。今回この問題にフォーカスしようと考えましたが、実はこの部分で躓きました。つまり、マスクに意味がないと言う人は、

(1)  多くのマスク着用者が感染 ⇒ マスクに感染防止効果がない

という主張しているのか?それとも

(2)  マスクに感染防止効果がない ⇒ 多くのマスク着用者が感染

を主張したいのでしょうか?まずはこの点がわからなくなりました。ただ、どちらの主張も間違っている、または主張を肯定するためのデータが足りない、と言えます。


(1) について
マスク不要論者の主張文章などから想像すると、使いたい因果関係は(1) のように見えます。しかし「マスク着用者」とはだれなのでしょうか?屋外でマスクをしている人が多いことを意味しているのなら、この人達は単なる「一時的なマスク着用者」です。マスクをしていない時の感染はあり得るわけです。多くの「一時的なマスク着用者」が感染したからという理由だけで、マスクに効果がないという主張はできません。マスクを外したタイミングで感染した、という主張を覆すことができないからです。
一方、人と会う時は常にN95をつけている人をマスク着用者と考える場合、誰もこの種の調査データを持っていないと思います。過去にあった調査も、マスク有無だけでした。だから現状(1) の主張はできません。(データがあれば、マスクに感染防止効果があることが肯定されると思います。)
さらに対偶:
 マスクに感染防止効果がある ⇒ 多くのマスク着用者が感染しない
を考えれば、マスクをしない意味がますますわからなくなります。

(2)について
続いてもしも(2) が主張ならば、そもそも「マスクに感染防止効果がない」を仮定していますので、効果がなければマスク着用者も、非着用者も感染することになります。ごくごく当たり前の話で、何も主張していないことになります。


以上、今回は簡単にマスク不要論者の主張が何かを考えてみました。しかし結局、データと論理に基づいた主張にはなっていないことがわかりました。


人は、自分の信じたい、受け入れたい情報を選択してしまう傾向があると言われています。このマスク不要論も、マスクを外したい願望が先にあって、その理由を探してたどり着いたことなのでしょう。まずは定義をしっかり把握し、論理的におかしな主張がないか、データに基づいているかを考えたいものです。

自分の願望で情報を選択することの恐ろしさを知り、受け入れようと思った情報が、データに基づくものなのかを考えてみたいものです。