なぜ統計が重要なのか
この問への答えは明確です。現状を定量的・客観的に把握するため。現状を把握することで、合理的な判断を下す。より良い計画をたてる。これから行う行動の成功率を高める。その他にもいろいろあるでしょう。
統計(現状の正確な把握)の重要性は誰もが知っているはずです。
しかし残念ながら、日本ではこれが軽んじられてきた歴史があります。
太平洋戦争における大本営発表はその典型でしょう。戦後、こんな発言があったそうです。
吉田茂:「もし日本の統計が正確だったらむちゃな戦争などいたしません。また統計どおりだったら日本の勝ち戦だったはずです。」
そして同じようなことは、最近も起きています。「統計不正問題」と呼ばれる不正が2018年に発覚しました。厚労省の「毎月勤労統計の調査」に問題が見つかったのです。毎月勤労統計調査とは、民間や官公営事業所の賃金、労働時間、雇用状況の変化を把握する目的で政府が実施する調査。統計法に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計として、厚生労働省が実施・公表しているものです。不正の結果、平均給与が全体として低めになっていたことがわかりました。(例えば失業保険の金額が少なく査定されてしまっていた)
実は今現在も、統計、つまり現状データを把握する調査が疎かにされている例があります。新型コロナウイルスの感染者数の把握です。感染者を特定することは、当然ながら医療につなげていくために重要です。これは同時に、国内の状況を把握するための基礎データのはずです。現状の正確な把握なしで、将来の対策はたてられるでしょうか。今後の推移を推定できるでしょうか。医療体制をどうすれば良いのか、適切な施策が可能でしょうか。