見出し画像

連載「差押えコラム。未払金を取り返せ!⑭」 ー 支払督促の弱点が債権者の時間と労力を奪う話 ー

※当記事は連載「差押えコラム」の第14回です。第1回から読む方はこちらです。

こんにちは!筆者の渡邉です。このコラムは、私がある会社から、未払いとなった業務委託料を回収するまでの軌跡を記録したものです。初noteでいきなり生々しい体験談ですが、記憶が新しいうちに共有できたらと思い、筆を取らせていただきました。
私のように「会社から給料が払われない」「クライアントがギャラを振り込まない」といった被害にあわれている方にとって、少しでも問題解決の手助けになればという思いで執筆します。
現在は無事に未払金を回収し、元同僚と新たに「合同会社Mauve(モーヴ)」という会社を立ち上げ、アプリケーションやWEBサイトの受託開発を行っています。
※Mauveでもnoteにてコラムを掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://note.com/mauve_0210/

登場人物の紹介

私は2020年末から、アプリケーション等の制作会社(以下、A社)で、バックオフィスの仕事を業務委託で請け負っていました。

登場人物2

2021年5月12日 ― 支払督促の弱点 ―

4月27日に裁判所からA社に対して支払督促は送達されましたが、その後、支払督促がA社に届いたという連絡がないまま2週間ほど過ぎていました。

そこで私は状況を確認するべく、裁判所に状況を問い合わせることにしたのです。

※補足ですが、申請した案件にはそれぞれ事件番号という番号が付与されています。問い合わせ時にはその事件番号を伝えるとスムーズに進みます。

その結果どうだったのかというと、支払督促を送達したもののA社が不在だったため、不在票を入れており、その後、郵便局にも連絡がない状態が続いているのだそうです。ただ、郵便物にも保管期限があります。

そのため、保管期限内にA社が支払督促を受け取らなければ、支払督促は裁判所に戻ってきてしまうというわけです。

いずれにしても現状、私には待つよりほかになす術がなく、次のステップには進めないということです。

私はこの回答を聞き、こんな想像をしました。
恐らくA社には現在、何十枚もの督促や郵便物が届いており、不在票の郵便物などあえて取り寄せないのではないか、と。
あるいは、何かに不在票が紛れてしまい、そのまま破棄してしまったとか......。

私はここでようやく、支払督促の弱点を知ったのです。

まず債務者が郵便物を受け取らないことには、支払督促の次のステップである差押に進まないのです。

裁判所からは、支払督促がどうなったのか結果が分かり次第連絡をもらえるということで、私は通話を終えました。

0207アイキャッチ-2

2021年5月20日 ― 支払督促のカギは住民票だった ―

この日、裁判所から支払督促の件で電話がありました。
「郵便局の保管期限が過ぎてしまい、封書が返送されてきた」と。

そして、A社社長の自宅へ再度、同じ内容の支払督促を送るよう指示がありました。

そのための申請書類として用意しなければならないのが、再送達上申書(その他の書式:No.5)です。

しかしここで、私には2つの懸念事項がありました。

ひとつは、A社社長が自宅へ帰らず、オフィスで寝泊まりしていること。もうひとつは、登記上の住所には住んでいないことです。
つまりこの再送達は、送る前から結果が出ないことが明白でした。

私はそのことを裁判所に伝えましたが、裁判所が言うには「会社のオフィス、又は代表者の自宅へ送ることが通例であるため、自宅へ全く送らないということはできない」とのこと。

また登記上の住所と実際の住所が異なる場合は、そこにいないことを証明する必要があるのだそうです。

つまり登記に記載されている住所地の住民票を取得し、そこに記載されている新しい住所地に改めて住民票を取りに行くという作業を、最終的に転居していない住所が見つかるまで繰り返し探さなければいけないのです。気が遠くなる作業ですよね......

例:(登記上の住所)千代田区→(転居先1)港区→(転居先2)横浜市・・・・(転居先10)品川区

私はA社社長が登記上の自宅住所とは別に、実際に住んでいるだろう住所を知っていました。ですが、もしそこからまた別の場所(オフィスや実家)に移転していた場合、住民票探しだけで途方もない労力がかかります。ましてや県外にいるような状況であった場合は、住民票の取り寄せだけで1週間ぐらい時間を費やします。

考えるだけでも疲れる作業ですが、これをやらなければ、支払督促の申請は取り下げるより仕方ないのも現実なのです。

ちなみに、皆さんは家族以外の第三者の住民票を取得することはありますか? それも本人からの委任状なしという条件です。
恐らくほとんどの人にとって経験のないことだと思います。

基本的に、委任状なしで第三者の住民票を取得することはできません。できるとすれば、公的機関からの命令や令状等がある場合です。

今回は個人で第三者の住民票を取得するため、取得に関わる諸条件について事前に各役所で確認する必要がありました。必要な書類は手元にあるものだけで足りるのか? 足りない場合は、さらに時間がかかってしまいます。

気がかりばかりの状態で、A社の住所探しが幕を開けました。


いいなと思ったら応援しよう!