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「市民シンクタンク」吉川市(5)
先日、中原恵人市長のもと、多くの領域で、優れた政策を行っている吉川市を視察しました。市民参加推進課の方より、市民シンクタンクに関する説明を以下のとおり受けました。ご報告させていただきます。
〇 市民シンクタンクは、市民の参画及び協働を推進し、市民と市とが連携して市政運営に取り組むとともに、市民が有する専門的知識及び経験を市政に生かすことを目的としている(平成28年4月開始)。
研究員は地域課題を提起し、調査研究を行い、解決を図るための政策を市に提言できる市内在住、在勤、在学のもので市長が認める者で、現在50名である。
〇 研究員が相互の意見交換及び交流を行うための懇談会を年度初めに実施し、提言を得た後、提言の採用、一部採用、不採用を決定するための検討会議を開催する。構成員は市長、副市長、教育長、参与、各部長である。
これまで22件の提言が採用されている。昨年度は、「市内女性農業事業者を広く知っていただく機会の創出」が採用され、今年度は、「シニアネットワークの構築について」が一部採用されている。本制度の事業予算はゼロである。
(所感)
市民シンクタンクの制度は、「市民の市政への参画」「市民の専門的知識、
経験を市政に生かす」という二つの課題に応えるものです。このうち後者
については、通常は諮問委員会などで生かされているようではあるが、諮問
という行為は受動的と言える一方で、専門性を持ったシンクタンク研究員
による主動的につくられた提言を受け入れるという制度は、市の施策に正
の効用を果たすことが期待されます。研究員は、いわゆる「ブレーン」の役割を果たしているとも言え、地方行政の中でそうした機能を制度化している
ことが注目されます。
研究員の個人名、肩書は非公開であるが、採択された提言には姓名が書か
れており、企業経営者、自治会役員、子育てのNPO代表、障がい福祉の
NPO代表、介護予防のNPO代表、国際交流活動者、能面製作者などの方
がいらっしゃることがわかります。研究員は50名であるが提言数は22となっ
ており、提言書を作成されない方、提言まで至らなかった方が半数以上とな
っています。
制度開始の数年後は、比較的多くの提言があったが、その後は少なくなっ
ています。残念ながら、時間の流れとともにパフォーマンス、アウトプットが低下していると受け取れます。この事業に予算はないので、研究員の報酬、調査費の支給もありません。
研究員のパフォーマンス、アウトプットを改善する案として、以下のことが考えられます。研究機関としてのシンクタンクが政策に関して提言を行う場合、政策の研究段階での政策策定の提言、政策策定後の予測分析、政策の執行後の評価(見直しを含む)が主に考えられます。市民が政策に意見を述べる機会は通常、事業アイデア企画の募集、ワークショップ、サウンディング、パブリックコメント、政策執行後の評価などの段階が挙げられます。市民シンクタンクの研究員においても、上記の市民同様、あらゆる段階で提言を求めることが有用かと考えます。
レベルの高い提言を作成するには、研究員自身も自己研鑽をし続けることが必要です。これを担保するためには、提言において実績のある研究員を中心に、研究機関での研修視察を行い、提言能力の向上を図ることも有用かと考えられます。これには予算措置が必要であるが、費用対効果を得る観点から、研修内容を録画し、行政職員も同様に研修の機会を得られるようにすることが考えられます。講座や会議にはリモート参加も可能ですし、研修内容が動画配信サービスであれば、市役所の職員もその内容を共有できます。