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酒田市のDX戦略の取組を視察しました②(地域のDXと共創の産業振興)

 1月17日、山形県酒田市で、同市の「デジタルテクノロジーを用いたリビングラボ」の取組を視察しました。ご協力いただきました酒田市議会事務局、デジタル変革戦略室の皆様、大変ありがとうございました。ご報告の2回目となる今回は、デジタル技術の利用と普及という同市のデジタル変革戦略の内容、酒田市の取組む「共創」の産業振興について報告します。 

(所感)
 酒田リビングラボは、地域の課題解決にデジタルテクノロジーを開発し、これを利用することは、非常に先進的です。こうしたデジタル技術を用いたサービスデザインの手法は、IT事業者を含めた地域の事業者に、ビジネス手法を最新化する、またとないモデルを提供しています。こうしたビジネスモデルや技術の波及効果は、上述した「地域のDX化」の中心部分と言えます(地域のDX化は、酒田デジタル変革戦略(2021年~)の3つの柱の一つ)。

酒田市HPより

https://www.city.sakata.lg.jp/shisei/dx/dxsenryaku.files/dxsenryaku_ver1.pdf

 

デジタルテクノロジーを用いた行政サービスのコストが下がるのであれば、政策順位や少数などの理由で、意見や要望が施策に取り入れられない人々の意見も、政策化されやすくなります。このように考えると、創造的問題解決の方式であるリビングラボと、デジタルテクノロジーを用いた課題解決を目指す酒田市の取組は、市民の主体的な市政参画、効率的な行政サービスの開発と提供、市政と地域におけるDXの普及という現代的課題に対応し、これに応えていく施策である。本市において、市民の主体的な市政参画、効率的な行政サービスの開発と提供、市政と地域におけるDXの普及、を図る際のそれぞれに重要なモデルを示しています。
 

酒田市HPより


 酒田市は、IT企業の集積と人材の育成に力を入れています。以下の内容が、リビングラボ推進の背景であり、また、並行的条件となっている。サービス開発型 IT 企業の集積については、「マーケティング用のデータ」「サービス開発時のテストユーザーの生の声」、「サービス実証を行うフィールド」などの提供支援を行っています。リビングラボは、こうした支援の一角を担っている。市の産業振興組織である「産業振興まちづくりセンターサンロク」は、ビッグデータ分析企業と連携しており、サービス開発支援として、データの利活用を行っている。作成された情報サービスは、データ連携基盤を通じて、市民が利用でき。そのデータが、情報サービスの開発に提供される「データの循環」のビジネスモデルが進められている。
 

産業振興まちづくりセンター、サンロク


 本市を含めた他自治体が酒田市の事例を学ぶ上で、見逃せないことは、酒
田市が早い段階からIT人材の育成、IT企業の集積に取り組んできたこと である。人材育成では、市内の東北公益文化大学では、2017年に、市の寄付講座として、メディア情報コースを設置、データサイエンティストなどIT人材の育成を進めている。また、NTTデータなど先進IT企業との協力関係の構築である。地域のDXを行い、ビジネスとして成立させていく上で、大小はともかく、民間の実力を有する企業の協力は欠かせない。
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64142690T20C20A9L01000/

IT企業の酒田市への進出について、信用調査会社を通じて、地方にサテ
ライトオフィス進出検討企業を調べ、営業を行っている。公衆無線LAN・域
内通信速度の充実、コワーキングスペースの開設、テレワークオフィス・移住補助などの施策が評価され、2021年9月、日本経済新聞によるテレワークに適した都市として全国2位に選ばれている。 
 https://www.city.sakata.lg.jp/sangyo/roudo/telework/index.html

上の内容から、酒田市のデジタル変革、地域のDX化の取組も、2021年に
デジタル変革戦略を策定する数年前から行われていることがわかります。DXの取組が、人材育成、企業誘致、サービス開発のフィールド提供、データ提供支援、リビングラボでのUI(ユーザー接点)、UX(ユーザー体験)の支援、大手IT企業によるサービスデザインへの支援など、横串的に展開され、相互に推進、発展の触媒となっていることが理解できます。こうした、それぞれの要素が有機的に結びつくことが地域のDXには必要であり、酒田市は、俯瞰的に目配せしながら、それを推進して地域課題の解決や、市民が実感できるサービスの向上を図っていることが確認できます。
 留意しておく点が一つあります。酒田市における地域のDXの産業振興分野における主要なターゲットが、「地域づくりや社会課題解決型ビジネスコミュニティ」で、いわゆる個社への支援ではなくて、コミュニティへの支援となっていることです。

https://www.city.sakata.lg.jp/shisei/shisakukeikaku/kikaku/chikisaisei/tiiki_saisei_keikaku.files/sanroku.community.pdf

  以下、酒田市の地域再生計画の説明文書を引用する。
○ 特定の業界や業態単位で、民間主体のビジネスコミュニティが形成され、そのコミュニティ又はそのメンバーが商品開発や販路開拓などの新規事業開発や、人材の確保やシェア又は業界の慣習的課題などをクリアするなど、特定の「テーマ」を設定し、そのテーマに沿ったビジネスプロジェクトを実施するものである。運営メンバーである民間事業者又は個人が、各社のアイディアやソリューション、ネットワーク又はその他リソースを持ち寄り、「共創」する。そしてそのコミュニティの活動に対して行政がサポートする形が、新しい産業振興の形であり目指すべき将来像である。
○ コミュニティは、農林水産業、ものづくりなどの産業分野に即したコミュニティ、女性ITフリーランス、高校生といった個人の属性に沿ったコミュニティ、さらに地域づくりや社会課題解決に取り組む NPO法人、一般社団法人等の一般法人または中間支援団体等のコミュニティもサポート対象にしていく。これらのコミュニティを総称して、「共創コミュニティ」とする。
  ふじみ野市においては、地域のDXと言える施策は採られていないが、将来を見据えた場合、必ずや地域のDXの施策は、恩恵を地域に、市民に及ぼすことは容易に想像できる。留意すべきは、酒田市のように、産業振興においてコミュニティへの支援をどう捉えるかである。以下の酒田市の説明は、非常に含蓄に富むものである。
○   本市での既存のビジネスコミュニティは、業界団体や同業組合(農業協同組合、建設業組合等)や、商工業者が加盟する商工会議所等がある。これらの組織では、会員メリットに資するような取組等を行っていると承知しているが、上述の将来像にあるような、特定のテーマを掲げ、経営規模拡大、共同での商品開発等の協業を生み出す仕組みや、地域内外のコミュニティと交流し新産業を生み出す仕組みとはなっていないことが課題であると考えています。
 

「チーム庄内」のチラシ、サンロクHPより


 酒田市は、新産業を生み出すコミュニティの支援を行う組織として、「産業振興まちづくりセンターサンロク」を位置付けている。ここでの「まちづくり」「サンロク」は、「共創」を表した用語です。サンロクとは、江戸時代に発展した湊町酒田で政治的・経済的・文化的に活躍した「酒田を興した三十六人衆」のような人材に由来しています。産業振興のプロセスと結果に「まちづくり」、「共創」という概念が含まれています。
 ふじみ野市では、経営規模拡大、共同での商品開発等の協業を生み出す仕組みや、地域内外のコミュニティと交流し新産業を生み出す仕組みについての施策は採られていません。「共創」を意識した産業振興策は、そうした次代の地域産業をつくる上で、参考となるアプローチと考えます。
 

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