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子羊を抱いたイエス
母の通夜の晩、私は一人、薄暗い座敷に佇んでいた。外はしとしとと雨が降り続き、蝋燭の灯りが揺らめく中、母の遺影が静かに微笑んでいる。夜も更けて、知人たちは帰り親戚は寝静まり、家の中は静寂に包まれていた。
私は深い悲しみと、言いようのない孤独感に苛まれていた。母を失った喪失感は、胸に重くのしかかり胸の中心部が鉛で塞がれたようで、心の支えを失った想いでいっぱいであった。「母よ、なぜ私を置いて逝ってしまったのか」と、心の中で何度も問いかけた。
その時、不意に部屋の片隅がぼんやりと明るくなった。驚いて目を凝らすと、そこには一人の男性が立っていた。白い衣をまとい、優しい眼差しでこちらを見つめている。腕には小さな子羊を抱えていた。
「あなたは……」私は声にならない声で呟いた。その瞬間、彼が誰であるかを直感的に理解した。その人こそイエス・キリストであった。信仰の対象としてだけでなく、今、目の前に実在する存在として彼は立っていた。
「泣くな、我なり」
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彼は何も言わず、ただ静かに微笑んでいた。その微笑みは、私の心の奥深くに染み渡り、冷え切った魂を温めるようであった。抱かれた子羊は穏やかに眠っており、その姿はまるで安らぎそのものだった。
私は涙が止めどなく溢れ出し、膝から崩れ落ちた。「主よ、私はどうすればよいのでしょうか」と、心の中で問いかけた。彼は静かに近づき、私の肩に手を置いた。その手の温もりは、言葉では言い表せないほどの慈愛に満ちていた。
その瞬間、私の心の中の悲しみや孤独感が、まるで霧が晴れるように消えていくのを感じた。代わりに、深い安らぎと希望が芽生えてきた。
「あなたは一人ではない。私は常にあなたと共にいる」という無言のメッセージが、彼の眼差しから伝わってきた。
気がつくと、彼の姿は消えていた。しかし、私の心には確かな温もりと光が残っていた。母を失った悲しみは依然としてあったが、それを乗り越える力と勇気が湧いてきた。私は立ち上がり、母の遺影に向かって深く頭を下げた。「母よ、ありがとう。私は大丈夫です」と、心の中で告げた。
外を見ると、雨は止み、雲間から月明かりが差し込んでいた。その光は、まるで新たな旅立ちを祝福しているかのように、優しく私を包み込んでいた。