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安心な僕らの旅路に

 今年も京都音楽博覧会が終演した。

 初開催の2007年から毎年観てきたけれど、今年のくるりの演奏は過去18回の中でも指折りだったと思う。それくらい素晴らしかった。

 そしてくるりだけでなく、他の出演者の演奏や歌声も大変素晴らしかった。
 いろいろと感慨深い気持ちになって感想は尽きないけれど、ひとつだけ。くるりのステージで演奏された『ばらの花』について書き残しておきたい。

 『ばらの花』はくるりのライブでは最もたくさん演奏されている楽曲だけれど、弦楽でちゃんとアレンジされたのは(岸田繁による『Quruliの主題による狂詩曲』を除けば)おそらく今回がはじめてだと思う。

 もう何十回と聴いてきたというのに、この楽曲がまた新しい表情を見せてくれたことに胸が震えたし、アウトロに『Baby I Love You』のフレーズが忍ばされていたのには胸が高鳴った。
 これは2008年前後の岸田・佐藤・BOBO・三柴・内橋編成のころに演奏された、アウトロのコーラスが前述のフレーズに変化するアレンジへのオマージュではないかと思う。

 そしてSHOW-GOのビートボックスが、かつてレイハラカミがこの楽曲に宿した息吹を呼び覚ましてくれたようにも聴こえた。

 もう二十年以上にわたり、ずっと長く演奏され続けているこの楽曲の歴史をも織り込んだような、豊かで素晴らしいアレンジと演奏だった。

 くるりの音楽はずっと旅を続けている。

 今年は岸田氏が敬愛するというDaniele Sepeをイタリア・ナポリから招聘し、彼らと一緒に演奏された新曲『La Palummella』と『Camel('Na Storia)』は、くるりの新しい旅のはじまりを祝福と共に告げた。

 一方で『ばらの花』にはこれまでの旅のおわりを労うような何かが込められていたと思う。
 それはあのころ、旅に出た安心な僕らへの、思い切り泣いたり笑ったりしてきたその旅路へ向けての贈り物なのかもしれない。

 これからはじまるくるりの新しい旅が、ますます楽しみになった京都音博だった。

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