地球防衛父

我が家実家付近は駅から程よく徒歩圏内ながら離れていて、程よく住宅地なんだけど旧家という御宅が多く道からお家が離れていた。そのせいかひったくりや痴漢の被害の悲鳴がよく聴こえてその度に父や私たち家族が出て行くという構図。

ある日、ほぼ家の前で悲鳴があがった。
夏日である。暑い夜とはいえ、窓を開けていると涼しい風が窓辺の風鈴を揺らす地域。
家の前は道路に面して当時は2mほどの高さの生垣があり外から我が家は覗き込まれないが逆に死角にもなる。

そして父は昭和の父よろしく上半身裸にステテコ姿にサンダル。被害者の女性を見つけると、女性は這々の態で「ドロボー、ドロボーが」と指差した先にこちらを振り返る自転車に乗った黒っぽい影。

よし!と父ダッシュ。手が手刀の形になっていたから本気走りだ。若い頃山岳部と陸上部で鍛えた足は当時も健在で瞬く間に追いついたのだが、今度は自転車の影が

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

ドップラーで叫びながら小さくなっていき、追いかけた父も

「待たんかい、おのれぇぇぇぇっっ」

とこれまたドップラーで消えた。

玄関脇の生垣の前に女性を腰掛けさせて様子を見に来た母に詳細を伝え警察に24してもらい、20分後にはパトカーが10数台集まり、その頃になって気づいたご近所さんが我が家に詳細を聞きに来たりと賑やかになってきた。そして、やってきたパトカー中の一台に捕まっていました。

父がw

いや、正確には職質されて詳細を伝えて送ってもらったんだけど。やってきたパトカーの一台に父が職質されるの巻。

上半身裸にステテコ、必死の形相で「待てぇぇぇぇいっっ」って追っかけてる50代おっさんは呼び止められるだろうな、そりゃ。

その間に犯人逃走。結局それから数週間経って父が走りながら見ていた特徴で犯人が捕まり(常習者だった)、警察の偉い方とやらが「この度は…」と間違えたお詫びと犯人が捕まったと報告に来てくれたのでした。本来なら後日の報告というのはないのですが、犯人逮捕に協力したとかで特別に教えてもらったのでした。
なんでも、犯人が

「父に追いかけられた時に【殺される】と思った」とのたまったそうだ。

どんな顔してたんだ、父。

そんな父ですが、弟の友人曰く「お前ん家の父ちゃん、弁当箱丸ごと食ったんか?」という大きな四角い顔をしている。そんな四角い顔の必死の形相てどんなだろうと思ったが、私たち家族には日常茶飯事なので、「ああ、あの顔ね」で済む程度。まあ、一般の人は恐かったと思いますよ。

今は旧家もなくなり新規の住宅地になった我が家実家付近は街灯も増えてひったくりや痴漢もかなり減ったそうです。

#変人ホイホイ
#父でした

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