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Who can read the future?(3)〜そこにも風は吹いているけど〜

どうあがいてもコロナ禍。

母にしても、入院してしまってからの父の姿を一度もみることなく今日を迎えているのであって、帰ってきたとて、当然わたしたち娘も、病床の父の姿に出会うことはできない。
ただ、主治医(手術の担当医)はこの状況を鑑み、週に1度家族に対して現状を伝える面談の機会を持ってくれるとのこと。この日に合わせて面談の予約が取れたようで、同席させてもらえることになった。


医師の説明はかなりシビアなものだった。


ある程度の覚悟はしていたが、
「今まで通りの父」とはもう会えないのだ、と悟った。


そっか、
普段穏やかなのに車間距離は詰めすぎる父
普段穏やかなのに高速は飛ばしがちな父
納得のいく値が出るまで血圧を測り続ける父
壊れたおもちゃや電化製品をあるもので工夫してきれいに直してくれる父
料理番組のレシピをメモしていて
おいしい、といえば何度でも作って喜ばそうとしてくれる父
大きなみかんがあればその薄皮を一つずつ丁寧に剝いて
娘や孫にそっと差し出してくれる父


・・・そんな父にもう会えなくなってしまうかもしれないんだな。


ほんの数日前まであたりまえだったことが
こんなに急に
あっという間に
あたりまえではなくなってしまう


うん

悲しいけど

悲しいけどさ

でも、これが現実なんだもんな。


それでもさ、可能な限りの手を尽くし、父の命を繋いでもらえたこと。
そのことを本当に心から、ありがたいと思った。

全部終わったわけじゃない。
良くも悪くも、まだこれからがあるってことだよ。


起こってしまったことを、
これから起こることを、
ひとつひとつ受け入れていくしかない。


そう。


なにか悲しいことがあると決まって手を取り合い沼に落ちていくように
感傷に飲み込まれやすい母と妹に
「そっちは沼だよ」
「こっちにおいで」
手を差し伸べられるのは家族の中でいまやわたしだけなのだ。

「そうなったもんはしかたないわい」
「なるようになーわい」

間延びしたのんきな父の声が聞こえてくるみたいだ。
そうだった、わたしのなかにも父がいる。

そうだよ、もうなるようにしかならない。
わたしたちにできるのは、
これからの父と生きていく覚悟と、準備をしていくことなんだ。


なんかさ、思うよね。
本来さ、こんなにすぐに知的に処理できることじゃない。


もっと落ち込んだっていいし
もっと悲しんだっていい
それ相応の事態だもん

でも
わたし何度も脱皮してきて
その都度アップデートされて

そっか、ちゃんとそれなりに
少しずつ強くなってきたんだな


実感させられてもいるのだ。


これからがんばるのは父だ
不自由もたくさんあるだろうけど
ここからまた新しいステージを始める父に
こころから大丈夫のエールを送れるように

父の人生だけどさ
父だけの人生じゃないんだ

それはわたしの人生とも十分に重なっていて
父だけじゃない
わたしを愛で包んでくれる大切な人たちの人生とも
重なり合ってる
触れ合ってる

だからわたしだけの人生じゃないけど
でもわたしにしか
わたしを生きることはできないから


わたしはね
これまでどおり
昨日のわたしを少しずつアップデートしながら

時々
振り返ったり
よそ見をしたり
泣いたり
笑ったり
転んだり
滑ったり
跳んだり
跳ねたり
踊ったり
歌ったり
ふざけたり
怒ったり

そんな自分を抱きしめながら
そんな自分を抱きしめてくれる愛する人たちを抱きしめながら

生きていくよ
大丈夫だよ

そんなにつよくもないけど、
そんなによわくもないからさ。

と、思いながら
ボロボロ泣いていたりもするけど
8割方大丈夫だ、わたし。


家に帰りついたらホッとして
夫の胸を借りて呼吸困難になるくらいわんわん泣いて
泣いて泣いて
笑って
でもやっぱり泣いて
を繰り返しながらも

うん
わたし大丈夫だ

大丈夫

って本気で思ってる



そしてほんっと、、、みんな元気でいてほしい。
こころも身体も。
元気でいようね。



幸い(?)
わたしの生業は
誰かが「自分」を生きていくために
足踏みをする
立ち止まる
そしてそこからまた旅を始めるための
宿屋みたいな
そんな役割なので

あたりまえをうしなっても
きのうまでとはちがってしまっても

大丈夫

そう信じられるわたしで

今日も目の前に座るあなたを
心の底から大丈夫って
信じながら見守っていたいと思う

心理臨床の世界って
いわずもがな
基礎的な知識に加え
いろんな理論があって
いろんな学派があって
いろんなアプローチがあって
当然各々磨かなくてはならない資質やそもそものセンスとかもあって
・・・そう簡単じゃない

そういうのは前提としてあるんだけど
(もちろんそれらを大切に身にまといながらそばにいるのだけど)

でもさ
知的に処理できることばかりじゃないことも知ってる
教科書通りにはいかないことも知ってる
「今!」の感覚を信じたほうがいい場面があることも知ってる


もがいていい
泣いていい
そのくるしみ
そのかなしみ
明日のよろこびに
ちゃんとつながってるから


って

わたしは、、、信じてる。

今日見る夢を
明日見る夢の世界を大切に生きて
無意識に抗わず

これもすべてこれからのわたしにとって
意味のあることなんだろうなって

ぼんやり抱きとめて大切に守っておくんだ


わたしは、わたしを信じてる。
あなたを信じているように。

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