審査員インタビュー ノイン株式会社代表取締役CEO渡部賢氏の考える、アクセラレータープログラム「TOKIWA Lab.」の意義
渡部賢氏
ノイン株式会社代表取締役CEO
Naver Japan (現LINE)にてディレクション業務を行った後、グリーにてスマホ版GREE NEWSを立ち上げ、同サービスを数百万MAUに成長させる。その後、サービス開発のマネジメント、新規事業の企画/開発/提携業務/子会社の立ち上げを経験。2015年よりフリーランスのプロデューサーとして、上場企業など数社の新規サービスの立ち上げや運用などを行う。2016年11月に個人事業を法人化させたノイン(株)を設立。
プロダクト一つで世界を変える
僕のデジタル系のファーストキャリアを作ったのが、Naver Japan、LINEの前身となる会社です。日本版NAVERのサービスローンチ前に面接を受け、入社日がローンチ日だったことを覚えています。NAVERは韓国でトップシェアの検索サイトで、ポータルサイトの緻密さやユニーク性が素晴らしかったんです。それが日本に参入してくるとなったときに、面白そうだと思ったし、何より未経験の僕に企画職としてのチャンスをくれたのがNAVERでした。
NAVERに在籍していた3年の間に、LINEという物が組織の中から出来上がっていくのを横目で見ていて、プロダクトたった一つで世界を変えてしまう、そんなことができてしまう世の中なんだということを知りました。そのときに、「あの瞬間、あの時代にあの会社があったから、今のこの価値観があるんだよ」と言ってもらえるような、そんなサービス作ることができたら、とても幸せだなと思い始めました。
とはいえ当時の自分はまだまだ、起業するような自信がなかったので、グリーに転職し、サービスを作るディレクターや事業を作ることの経験を積み上げていき、独立に至りました。
デジタルで化粧品業界を変える
「化粧品業界の不整合とNOIN」
僕が起業した2010年代は激動の時代でした、通信インフラの成熟とともにスマートフォンが普及し、”検索”ではなく”SNS”が人々の情報収集の根幹に位置づけられたんです。この変化が様々な業界に大きな影響を与えるということは間違いありませんでした。中でも、個人の肌質や好みや相性など、買うまでのプロセスに人の介在余地が多くある化粧品業界は、この情報革命の影響で、売り方・買い方・商品の見つけ方も含めて、全て大きく変化する瞬間だったんです。
また、化粧品業界の構造にも自分が介在できる余地を感じました。化粧品売場は、ブランドによって百貨店、ドラッグストア、バラエティストア、化粧品専門店の、大きく四つにティアに分けられているんですが、女性の化粧ポーチの中にはそれらが一緒になって入ってる。買っている人にとってはどこに売っているかではなく、自分がなりたい姿になるために化粧品を選んでいることを知りました。僕はここに、売り場と買い手の間の不整合が生まれていると思いました。そして、僕が持っている経験値やスキルによって、この世界の不整合を整えることができるじゃないかと思いました。
渡部氏がTOKIWA Lab.に審査員として参画する理由
「ものづくりのロールモデルとしてのTOKIWA Lab.」
TOKWIA Lab.の審査員をする理由は大きく分けて二つあります。一つは、「TOKIWA Lab.」が、僕がこの業界に感じていた課題を突破する、一つのいいロールモデルになるんじゃないかと思ったから。もう一つは、このアクセラレータープログラムを通して、直接的な事業貢献ができると考えたからです。審査員としてだけではなく、採択された事業自体を自分たちがアップサイドできる具体的なイメージが湧いたっていうことが、審査員としてプログラムに参画する理由です。
僕たちは、商品開発の段階で、『誰に』『どのように』情報発信したらがモノが売れるのかを突き詰めた上で開発を進めていきます。そんな僕たちからすると、この業界の商品開発部門、いわゆるラボ的な部門が、トレンドとシンクしていないという点がとてももったいなく感じられるんです。
そんな中で、「TOKIWA Lab.」は、新しいアイデアや技術、トレンドと研究開発の組織が真横に並んで商品開発をするという、理想の形を叶えようとしています。まさに僕がやりたいと思っていたことでした。「TOKIWA Lab.」は、ものづくりができるトキワと、良いアイデアを持つスタートアップの人間が横に並んで、ものを作っていけるプログラムなんです。
ノインの強みである、良い商品をディスカバリーして、その商品が人気になるきっかけを作るという部分と、「TOKIWA Lab.」が出せるバリューの相性が抜群だと思いました。
第1回「TOKWIA Lab.」を経験して
このプログラムに参加するスタートアップは、化粧品作りの経験やそのプロセスをわかっている必要はない。それができるのがトキワだし、審査員のメンバーです。なので、緻密なビジネスプランよりも、「これはこの先世の中に絶対に必要とされるんだ」とか「これはこういう人たちに絶対に必要なものなんだ」というストーリーの強さ、思いの強さが一番必要なんだと、改めて思いました。
ビジネスって絶対にどこかで失敗するんです。いろいろ現実的に考えなくてはいけなくなったときに、削らなくちゃいけないものが絶対に出てくる。そのとき、最終的に残るような強みがなくちゃいけないんです。何があってももう一度立ち上がれるかどうか、その思いの強さを、審査のときに見ていました。それさえあれば、実現の過程の中で商品が変化したとしても大丈夫です。そして「TOKIWA Lab.」は、そんな強い思いを持っている人をフォローできるプログラムだと思います。
多くの化粧品を見てきた渡部氏ならではの審査基準
「Why now?」「Why this?」「Why you?」
前回採択された株式会社ユーブロームさんが、弟さんのアトピーに寄り添って生きてきた中で自分が弟のためにできることを考えたときに、皮膚常在菌の可能性にたどり着いたっていうのを聞いたときに、絶対にこれだ!と思いましたね。
化粧品が選ばれる理由の一つに、そのブランドの背景に強烈に共感するっていうのがあります。これまでの世の中もそうでしたし、これからの世の中はより一層ストーリーが大切になっていきます。そして、「そのストーリーからブレイクダウンして出来上がった化粧品の機能性」というような、ブランドの一貫性というのが、類似した機能の商品と横並びになったときに、自分たちがお客様に選ばれる理由になるんです。
僕たち伝える側にとっては、やっぱりストーリーがある商品の方が、その魅力を押し出しやすいんです。様々な化粧品と並べられたときに、選ばれる理由をしっかり持っているということですからね。
このストーリーというのはブレイクダウンすると、「Why now?」「Why this?」「Why you?」の3つの問いになると思います。なので、審査をするときにも、なぜ今、なぜこれを、なぜあなたがやるのか、という必然性を探しています。この三つがはっきりしていたら、僕はそのアイデアを引き揚げていきたいと思います。
第2回参加者に向けて
企画から販売までを、この「TOKIWA Lab.」に関わっている全てのメンバーが支えるというのが、このプログラムの最大の魅力です。
何かに対する専門知識が必要というわけではありません。「TOKIWA Lab.」では、心の底から「これがあったらいいのに」「こんなふうになっていたらいいのに」を実現することのできるメンバーが共創します。その力を使って、製品・サービスを世の中に出すことができる。そんなすばらしいプログラムだと思います。
TOKIWA Lab.概要はこちらの記事をご確認ください↓↓
渡部賢氏ご登壇のTOKIWA Lab.説明会はこちら↓↓
インタビュイー:平内茉莉