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時の薬

私の奉職している神社は、駅から5分くらいのところにあります。
すぐ隣には公園もあるので、通勤や朝の散歩がてらにお詣りされる方も多い、地元に密着した神社です。

早い時間帯には、仕事のできそうなスーツの人、あきらかな野球部員、すでにお店のユニフォームに着替えている自営業の人などが毎朝の参拝にみえます。

その時間帯が過ぎると、スピリチュアルな方々もちらほら、みえます。

境内の真ん中に、光の柱を立てる人。
楠の木に抱きついてエネルギーを受け取る人。

個人個人でするなら、それぞれのお詣りの仕方、自分自身のチューンナップの仕方があって良いと思います。(ただ、それが集団になると、他のお詣りの方が自由に参拝できなくなってしまうので、注意することもあります)。

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神社でおこなう「お祓い」も、自分をチューンナップする方法のひとつ、と言えます。ただし、それが1500年以上、世代を超えて続けられてきた方法である点が、他との決定的な違いです。

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NHKの大河ドラマ「光る君へ」。
今、私たち神職が神社でしている「祈祷」や「お祓い」「季節行事」と、ほぼ同じ様なことを、平安貴族がしているので、普通に同僚が仕事している様子を見るような感覚で楽しんでいます。

彼らが日常で着ている装束にも全く違和感がありません。むしろ戦国時代の甲冑を見る方が、時代劇だなー!という異世界感があります。

私たち女子神職は十二単ではなく、男子の装束「狩衣」か、それをベースにした「水干」を着ているので、紫式部や清少納言よりも、男子の貴族の方にコミットして見ているのですが。


これが普段のご祈祷スタイルです


一緒ですよね

それから、公家たちが朝廷で行う、会議のシーン。あれも意外と「あるある」です(進行具合や雰囲気が)‥。

そんなわけで、「祈祷」「お祓い」は1500年、ほとんど変わらぬ形で日本人が続けてきているものなんです。先進国になってもデジタル社会になっても、残っているというのは、驚くべきことです。おそらく、この先の1000年も残るのではないかと、私は考えています。

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ところで、大阪ではお医者さんにかかると「日にちぐすり」と言われることが結構あります。

「インフルエンザは日にちぐすりで治るんやから、寝なアカンよ」
「あとはもう、日にちぐすりやね」
なんて感じです。

それは、時が経てば体調が良くなる、「時の薬」という意味です。

神社にお詣りしたり、古典を読んだり、太古からの季節の行事をちゃんとすることは、凝縮した「時の薬」を体に入れるようなものです。

だから心が洗われたような、フレッシュな元気さが戻ってくるのではないでしょうか。

私は、神職歴たったの20年ですが、1500年の歴史を持つ神社に20年いると、本当に「時の薬」はすごいなあ、と実感することが多いのです。

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11月の終わりに、関西外大の留学生向けの「SHINTO」のクラスにゲストスピーカーに行った時。留学生からこんな質問を受けました。

「ジョージ・ワシントンを祀っているハワイ大神宮は神社だと思いますか」
「アメリカ人が作ったビリケンさんは、神様だと思いますか」

私は答えました。
「1000年後に残っていたらそれは神社や神様だと思います。1000年後に消えていたらそれは神社や神様じゃなかったのでしょうね。答えは未来にしかないです。でも、今、そこに存在しているということは、1000年後にも存在している可能性がある、ということで、私自身は良いことだと思います」

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12月4日に出た桃虚の本「神様と暮らす12ヶ月」を読んでいる姉から、「光る君へ で、薬玉がチラっと映ったので、初夏を表現しているのかなと思った!」とLINEがきました。5月の項で、「薬玉」を紹介しているので、それを読んでいてくれたみたいです。

この本を読んでから、「光る君へ」を見ると、こまごまとした季節のアイテム、小道具の意図するところが分かって、さらに味わい深く楽しめると思います。







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