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男木島上陸(瀬戸内海)

高松港の待合室。
テレビで甲子園の決勝をやっている。
京都国際と関東第一の試合。
九回の裏だ。
ボール球を振ってアウト。
延長のタイブレイクに突入。

12時発 高松⇨女木島⇨男木島のフェリー「めおん」に乗り込む。
「めおん」のボディは赤と白のボーダー柄。
車が乗り込む橋桁部分は黄色と緑のブラジル色。
フェリーの中のデザインが好きなのであちこちの写真を撮る。
光が差し込んでいる。

波しぶきの白が光っている。
海がキラキラ光っている。
高松のドームみたいな丸い建物がぐんぐん小さくなる。

海の上で京都国際が優勝。

女木島の港につく。
下船する人が結構多い。
かもめのオブジェが等間隔に並んでいる。
鬼の灯台で写真を撮る人たち。


男木島の港につく。
テントを出している食堂で、ものすごく日焼けしているおっちゃんが、のれんを片づけようとしている。

「やってますか」と聞くと「やってるよ」と言う。
「中入って。涼しいから」と建物の中を勧められたので入る。

えべっさんと大黒さんがいる。



本当に営業しているのか若干の不安を感じつつも、昼にうどんを食べそこねてお腹が空いていたので、たこの天ぷら600円と、炊き込みご飯800円を注文。

おっちゃんが冷蔵庫から実家の麦茶サーバーみたいなやつを出してきて、かき氷のカップを二つ、べたべたのテーブルの上に置いてくれる。

かき氷のカップで麦茶を飲むと、少しシロップの味がした。

おっちゃんが握る取手付きの鍋は、ペンキみたいに白い小麦がべちょっとはみ出している。

あの中にたこが入っているのだろうか。

そのお鍋を持っておっちゃんが外へ出て行った。
たこ天は外で揚げるのかもしれない。
洗い場にごちゃっと積んである調理器具は時が経ちすぎていて使えそうもない。

しばらくするとおっちゃんが揚げたてのたこ天を手に帰ってきた。
ああ、やっぱり外で揚げたのか。

外で調理して、中で食べる。いま、普通とは逆の形式になっている。

続いて、おっちゃんがべたべたっと茶色っぽい炊飯器の蓋を開ける。
もわんとした蒸気とともに、海産物を炊き込んだご飯のめっちゃいい匂い。
炊飯器が、アラジンの魔法のランプのように見える。
おっちゃんは炊き込みご飯をパックに詰めて、ほら、と渡してくれる。
先ほど外から持ってきた、たこ天もパックにつめて輪ゴムでぱちんとして「はい」と渡してくれる。

中で食べるのになぜパックに詰めてくれるのか。
なぜ蓋を閉めて輪ゴムでぱちんまでしてくれるのか。

一応、「ここで食べてもいい?」と聞いてみる。
「ああ、食べて食べて」とおっちゃんが言う。

若干の不安を感じつつ、その場でパックを開けて食べる。

うま!
うまい!
うううーうまい!

たこ天も炊き込みご飯も絶品だった。
私は、「めおん」に乗船する前にあれだけ欲していたうどんのことは忘れて、一心に食べた。そして、古事記の中でイザナギが禊をした時、体から落ちた汚れからも尊い神々が生まれ出たことを思い出していた。



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