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将来の夢?超チルなラッパー🤟
幼子が描く「将来の夢」というものは基本、秋の空より移ろいが早いもので。
私も例にもれず、掲げる将来像がころころと変わる子どもだった。
「パティシエ」「ファッションデザイナー」「イラストレーター」…。
昔から一貫してクリエイティブな仕事に夢見ていたとまとめてしまえば聞こえがいいが、残念な(?)ことに、その枠組みからは少しはみ出す「将来の夢」を小さな胸に抱えていた時期があった。
たしか、小学校4年生くらいの頃。将来の夢は「弁護士」だった。
人に誇れるような大層な動機はなかった。
志望理由は「口ゲンカがべらぼうに強いから」、ただそれだけ。
当時の私は、己の頭の回転の速さと口の悪さはピカイチだと自負していた。
「頭の回転の速さ」においては今は無惨なことに名残も何もないが(口が悪いのはちょっと残っているかも)、年間200冊を超えて読書をする小学生だった私は当時、同世代の中では平均以上の語彙を操る、一筋縄ではまるめこめない面倒くさい子ども…要するにけっこうなクソガキだったのである。
この口ゲンカの強さは金になる。そう考えて自分には「弁護士」が適任だと信じていた、今となっては本ッ当に恥ずかしい、無知すぎる時代があったのだ。
もちろんこんな世の弁護士様と世間様をナメ腐っている「弁護士志望」は成長と共に淘汰されていったのだが、動機となる芯の部分はまだ自分の中にくすぶっていると感じている。
言葉を操るという行為に、楽しさと深い興味を覚えている。
高校生〜大学生の頃に作文のおもしろさに気づき始め、noteや小説の公募のために文章を書くようになった。
ありがたいことに、私が何かを書けば周囲の家族や友人が反応をくれる環境にいて、私は調子にのってさらに書くようになった。
正直、「書きたいこと」「書いて伝えたいこと」はあんまりない。誰かに何かを訴えかけるような大層な人間じゃないことは自分がよくわかっている。
「書く」という行為の工程そのものが楽しい。書こうとしているものの意味ひとつひとつに、それぞれ表現方法が無限にあって、その中からその時に最適な表現をピックアップして。そのピックアップの集合体(文章)が誰かの琴線に触れることがあろうならば、もうこれ以上の喜びはない。これ以上におもしろいことを私は今のところ知らない。そんなもの、あるのだろうか。
そんなふうに文章をつくる楽しさに熱中し始めて数年たった頃。社会人になりたての頃だろうか。
「ラップミュージック(ヒップホップ)」というものが目に(正確に言えば耳に)留まった。
具体的に感動を覚えたアーティストはCreepy Nuts。彼らの紡ぐ言葉の気持ちよさ、華麗さ、爽快感は目を見張るものがある。
もともと、ダジャレというものがあまり好きじゃなかった。
韻を踏んでいるおもしろさはわかるのだが、音の響きだけを重視してそれぞれの言葉の持つ意味や味わいを無視しているような使い方が多いように感じて、無粋な気がしてしまうのだ。
しかし、Creepy Nutsやその他ヒップホッパーの紡ぐ楽曲の歌詞は一味違う。
軽薄ささえ感じてしまうファストフードのような軽快な音楽に反して、深い教養と知性の上品さのようなものが綿密に、余すことなく散りばめられているように感じる。
ただ韻を踏んでいるだけじゃない。時には聴き手の教養が求められる場面さえ往々にしてある。
書こうとしているものの意味ひとつに、表現方法が無限にあって、その中からその時に最適な表現をピックアップして。そのピックアップの集合体(文章)が誰かの琴線に触れることがあろうならば、もうこれ以上の喜びはない。
これはさっき私が作文の楽しさについて語った文章だが、まさにこれの「最適な表現」をコンマ数秒感覚でぶち抜き続けて、琴線に触れるどころかガンガンに揺さぶってくるのが彼らの作品なのだ。
彼らの楽曲に触れた時、悔しくって涙が出た。最高すぎて。私の手が届かない高みすぎて。
しかも一曲や二曲じゃない。彼らはそれが当然のようにクオリティを保ち続けたまま、TPOに合った作品をどんどん発表する。
作詞だけじゃなく歌唱まで自分たちでやっているのだからもうお手上げだ。
何を隠そう、私は超絶音痴なので、生涯を賭して彼らの言葉の操縦力に追いついたとしても、それを自分の喉で歌い上げるなんて到底できっこないのだ。
彼らのタレントが眩しすぎる。うらやましい。私もその高みになってみたい。
そんな気持ちを抱えながらも、平々凡々な小市民として生まれ落ちてしまった私は、今日もイヤホンを耳にさして再生ボタンを押すばかりなのであった。
私が浅学なりにすごいと思っている楽曲のひとつがこちら。
最初のサビに辿り着くまでに1から10までの数字が順番に登場する技巧に気づいた時は、ぞわりと鳥肌が立ってその才能に恐怖さえ覚えた。