ストレスと戦うのをやめる
発達支援施設での学び
娘が幼稚園に入園して1か月が経った頃、幼稚園の先生から「娘ちゃんは家でよくお話しますか?」と聞かれたことがありました。
私は、娘の言葉の発達が遅いことに気づいていましたが、「そのうち喋る様になるだろう」とあまり問題にしていませんでした。
しかし入園して2か月後、娘の髪が抜けだした時、病気は幼稚園のせいだと思いました。
娘は言葉でうまく人に伝えられないから、強いストレスがかかっているに違いないと思い、あわてて市の発達支援施設に相談しました。
すぐに言語療法士のD先生と面談することができました。
私は「言葉でうまく言えないストレスが脱毛の原因だと思うから、言葉のトレーニングをしてほしい」と話しました。
D先生は「娘ちゃんはそんなに酷く言葉が遅れているわけではないから、言語指導の必要はないと思う」とおっしゃいましたが、私は不安で仕方なく、空きがあるならと無理にお願いしました。
D先生は私の不安を汲んでくださり、言語指導を受けられることになりました。
私は、発達支援施設は何か特殊で問題のある子供が行くところだという偏見がありました。
しかし先生方から「普通なんてない、みんな白と黒じゃなく、グレーなんです。そしてこの世界を引っ張っているのは発達障害と言われている人たちです。」
と教えていただき、私はいままでどんなに狭い価値観で生きていたかを思い知り恥ずかしくなりました。
まず子供たちが一番最初に目指すことは、「嫌なことを嫌と言えること」でした。
私は、人とうまくやっていくこと、みんなと仲良くすることから教えるものだと思っていたので、驚きました。
友達と仲良くすることが正しくて、嫌と言うのはわがままなこと、あまりよくないことだと思っていました。
ここでは嫌なことを嫌といっていい、自分の感情をそのまま伝えていい、それを許す雰囲気と言葉かけがありました。
幼稚園の先生には「娘ちゃんは声かけだけでは、先生の指示が理解できないようで、みんなと同じことが出来ません」と言われていました。私は娘が他の子供たちより劣っているように思えて、悲しくなりました。
しかし発達支援施設の先生方は、
「娘ちゃんは、とてもよく見ています。耳で指示されることが難しくても、絵や実際にやってみせることでいくらでもできるようになります。やり方は何でもいいんです。大切なのはその子供が出来るように、周りがサポートすることです。その手間をかけない幼稚園の先生が間違っています」
と言ってくれました。
この考え方を知らなければ、私は娘の出来ないところばかり見ていただろうと思います。先生方のおかげで、娘のいいところに注目しようと思えました。先生方との出会いは本当に幸運でした。
発達支援施設に通い出してから、幼稚園の先生に
「まだ他のお友達がやることを見なければ、自分からは行動出来ません」
と残念そうに言われたことがありました。
私はすかさず
「うちの娘は本当によく見ているでしょう」
と笑顔で言い返せました。他のお友達がやっている様子を見て出来るなら、それでいいじゃないかと思いました。
私は発達支援施設の先生方の考えが自分にいい影響を与えていることを実感しています。
ストレスを回避したくて必死になっていた
私は娘の脱毛症の原因は、幼稚園のストレスだと思っていたので、娘を幼稚園に通わせるのが嫌でした。(※実際は、自己免疫疾患なのでストレスだけが原因という事はないです。)
何か幼稚園で困っていないか、誰かに嫌なことをされていないか、娘を叱ったらストレスになるんじゃないか…と何もかもが不安でどうやってストレスを減らすかに必死でした。
しかしその考えが、病気に振り回されているようにも感じていました。
ストレスを取り除くことに必死になるより、たとえストレスがあっても自分は対応できると思える、助けてくれる人がいると自分を信じられるようになりたいです。
娘が発達支援施設で教えてもらっているように、「嫌なことを嫌と言えるようになる」と、「ストレスがあってもそれをがまんせずに言えば、助けてもらえる」そうすることで人を信じ、自分を信じることができそうです。
私も発達支援施設の先生方のように、娘の「嫌だ」という感情を認め、気づき、娘が安心して「嫌だ」が言える場所になりたいです。
ストレスは敵ではない。ストレスホルモン=オキシトシン
私はストレスを恐れいていましたが、TED talksのKellyさんのスピーチを見て、ストレスに対する捉え方が間違っていたことを知りました。
https://www.ted.com/talks/kelly_mcgonigal_how_to_make_stress_your_friend?language=ja
”人はストレスを感じると、オキシトシンというホルモンが分泌されます。
オキシトシンは「誰かに支えてもらいたい」と思わせ、「感じていることを閉じ込めないで誰かに話せ」と促す作用があります。
人生で困難なときに、ストレスホルモンが出て、愛する人たちと一緒にいたいと思わせるのです。
ストレスホルモンは誰かが助けが必要な時に、あなたが気付けるようにしてお互い助け合うようにしているのです。”
”またストレス下の人に手を差し伸べ、助けたり助けられりするとこのホルモンが更に分泌され、ストレスからもっと早く回復します。
あなたがストレスをこのように見ようとするとき、ストレスにうまく対応できるようになるだけでなく、自分を信じて人生の困難に立ち向かえるようになります。そしてそれは一人きりで立ち向かわなくてもいいということです。
どのように考え、どのように対応するかで、ストレスの経験が変えられるのです。”
ストレスを敵として避けたり戦おうとしなくていい、ストレスがあっても、人とのつながりの中で助けたり助けられたりして、うまくつきあっていくものなのだと知りました。
支え合えることの大切さ
私は、脱毛症の治療に必死になる親の気持ちが痛いほど分かります。
自分も娘が脱毛を再発している最中、なんとか目の前の症状をおさえたい、これ以上抜けないでくれるならどんなことでもしたいという気持ちになります。
Twitterで脱毛症の子をもつお父さんから、お話を伺ったことがあります。娘さんは3歳で脱毛症を発症し、今は小学生です。
"「最初に受診した脱毛症専門の病院で、医師に「治りますか?」と質問すると「そんなの分かりません」と言われ医療不信になりました。」
「自由診療のクリニックから月に10万の漢方薬を取り寄せて飲ませていました。大量なのでチョコレートに溶かして食べてもらいました。約一年続けましたが肝臓の数値に影響があったので中止しました。今は効果はよく分かりませんが、頭皮洗浄をしてくれる美容院に通っています。」"
私は、娘が脱毛症を発症した当時の自分を思い出しました。
知りもしなかった病気が自分の子供に起こり、確実に治るという治療法がない…今後どうなっていくのか先の見えない不安で押しつぶされそうでした。
そんな時に専門家から突き放すような対応をされたら、見捨てられた気持になって、医療不信になるのも当然です。
命にかかわらない病気だからと、軽視されたような気持ちになります。
髪が無くても命があるだけいいじゃないか、と言っていいのは当時者本人であって、他人が言うべき言葉ではないと思います。
特に医療者には、社会の偏見にさらされながら、長くつきあっていかなければいけない患者の気持ちを想像して欲しいです。
ひとりでこの病気に立ち向かうのはものすごいストレスです。
つい治療に必死になって目の前の子供の思いがみえなくなり、突っ走ってしまいそうになります。
そんな時に親の思いに寄り添ってもらえるだけで、どんなに救われるでしょうか。
親に少しでも余裕が生まれると、「本当に子供がその治療を望んでいるのか」と子供の思いを聞けるようになれそうです。
まだ小さいうちは、子供が病気に伴う色んなことを選んでいくのは難しいと思いますが、なるべく子供の気持ちを優先したいと思っています。
私は、信頼できる誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが落ち着くと実感しています。
同じように思い悩んでいる方がいたら、ひとりでがんばらなくてもいいと伝えたいです。
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