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熱い風と遠い夏

夏は嫌いだ。

暑い。虫に刺される。眠れない。エアコンで足が冷える。食べ物がすぐ腐る。日に焼ける。
基本、発想がネガティブな人間にとっていいことが思いつかない。
だから、夏は嫌いだ。

幼い頃はどうだっただろう?

水のきれいな田舎で育った子供の私は、振り返るとそんなに夏がきらいでなかったような気がする。
遠い思い出すぎて思い出せていないだけかもしれないが、思い出したくないというほど苦々しい気分にもならない。

「夏」という言葉と共に「冷たい水」の感覚が体に湧き上がってくる。

汲み上げたばかりの水にプカプカと浮かぶスイカ。
滑り込んだ学校のプールの青い色。
テニスコート脇のホースの水しぶき。

そんな風景の中で私はケラケラと笑っていた。
風の熱さも、焼けて真っ赤になった肌も、汗でぐしゃぐしゃになったシャツも気にせず。

あの日の私は、今より幸せだったのかな。


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