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理学療法士,NASM-PES,CES,PNF3a修了 クライマーのパーソナルケア,パーソナルコンディショニング クライマーの役に立つ、身体に関するあれこれをお伝えします。

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最近の記事

腹筋といえばアブローラー?

 体幹って鍛えたくなりますよね。クライミングに限らず、様々なスポーツで言われます。    どんなに押されても倒れない、不安定な状態でも垂直を保ち続ける、などなど、「体幹が強い」「体幹がしなやかだ」と言われることが多いですよね。    体幹とは、いわゆる体の中心部(肩甲骨から股関節の長方形の部分)を言うことが多いと思います。体のあらゆる機能のうち、体幹部分だけ非常に抽象的な気がするんですよね。体幹が強いって?筋力が強いの?パワーがあるの?柔らかいの?硬くなるの?と言う感じで、全

    • 運動制御とクライミング

       身体が運動をするという現象は、思った以上に複雑です。  現代のトレーニング理論で注目されているエコロジカルアプローチは、身体運動は「個人と環境の相互作用によって生じる、知覚、認識、意思決定のプロセス」と定義されています。  身体を動かすことは環境との相互関係であり、その環境を設定しないトレーニングは、実践への転移が得られないと言われます。  環境を制約して行うトレーニング(例えばスペースを狭くしたり、何かしらのルールを設けたりする)を、制約主体型のトレーニングと呼びます。

      • クライマーの肩のケア2

         前回の記事は肩甲骨周りの柔軟性についてでした。今回は肩関節についてお伝えしていきます。 肩関節は構造的に安定しにくいです。  肩甲骨の関節面に対して上腕骨の関節面は大きいです。適合する面積が狭いんですね。このような球状の関節では、動きの中心となる軸を作ることが必要になります。  肩の筋肉の柔軟性が失われると、軸が偏位してしまいます。その結果、肩甲骨の肩峰下や烏口下で衝突が起きるんです。  肩の軸を偏位させる要因は様々ですが、多いのは「上腕三頭筋長頭腱複合体」と「棘下筋

        • 「保持力だけではない」を神経的な側面で考える

           クライミングにおいて保持力が重要な要因の一つであることは、様々な論文で報告されています。  「Finger Strength」「Finger flexor Strength」「Finger flexor performance」などなど、様々な呼び方で表現されています。重要なことは呼び方ではなく、それをどのように計測して数値化するかです(呼び方を統一することも重要ですが)。身体機能を数値化することはとても重要です。成長目標を可視化することはモチベーションにも繋がります。

          しっかり休む。 フィットネス疲労理論

           トレーニング効果は、どのようにして現れるのでしょうか。  おそらく最も認知されているものは「超回復理論」でしょう。これはもともと「汎適応症候群:GAS」というものから来ています。  人間は「今ある生理的バランス状態を維持」しようとします。これは「ホメオスタシス」という人間の機能です。  トレーニングというストレスに対して、身体に適応を引き起こそうとします。これが「筋力の向上」だったり「柔軟性の向上」だったり、さまざまな反応が生じるわけです。  この反応は「警告反応期」「抵

          しっかり休む。 フィットネス疲労理論

          「筋肉は遊ぶ」を前提にコンディショニングする

           ワイワイ、キャーキャーするわけでは無いです。  例えば車のハンドルを動かすとき、車の進行方向は変わらないけどハンドルが動く、わずかな範囲がありますよね?(説明下手)  あれが「遊び」というものです。工学の言葉になるようですね。  wikipediaによると、「接合部などに設けられた隙間や緩み。遊間とも呼ぶ」  東建コーポレーション建築用語集によると、「機械の作動や取り付けを円滑にする目的で、機械の部分同士を密着させず、その間に意図的に設けた隙間のこと」とされています。  

          「筋肉は遊ぶ」を前提にコンディショニングする

          クライミングと肘の痛み2

           以前、保持の主動筋である浅指屈筋が原因となる可能性がありますよ、という記事をあげました。  今回は、別の要因でも肘の痛みが起こりうるということについて記事にしようと思います。  まず、肘の内側に関して。肘の内側の靭帯は「複数の腱による複合組織」という特徴があります。  肘の内側を構成している筋群は「円回内筋」「尺側手根屈筋」「浅指屈筋」「上腕筋腱内側」 これらを総称して「屈筋回内筋群(FPM)」と呼びます。    今回は、肘を曲げる時に最大のトルクで寄与する「上腕筋

          クライミングと肘の痛み2

          クライマーの肩のケア

           クライミングにおける肩関節の障害発生の頻度は、クライミングによる怪我の全体の約17.2%を占めているそうです。多いですね。   高所からの転落による外傷もありますが、慢性的なオーバーユースによる障害では「腱板損傷」「インピンジメント症候群」「上腕二頭筋腱障害」「スラップ損傷」が挙げられるそうです。    Comprehensive review of rock climbing injuries. June 15 , 2020 より  また、5年以上のクライミング経験を持

          クライマーの肩のケア

          クライミングホールドで懸垂すると何が良いのか。論文紹介

            クライマーが「ボルダリング・クライミング」以外で行うトレーニングの代表格といえば、ビーストメーカーをはじめとするフィンガーボードを使用した保持力強化かと思います。  私は基本的に週1クライマーです(月1の時もあれば3ヶ月に一回になることもあり・・・)。ムーンボード3段を目標に、日々フィンガーボードでのトレーニングに励んでいます。そんなとき、ふと思いました。 浅いホールドと深いホールドで、筋活動は何が違うのか。 本当に浅いホールドでやることが、保持の強化に繋がるのか。

          クライミングホールドで懸垂すると何が良いのか。論文紹介

          肩は犠牲者

           今回は肩の痛みについて投稿していきます。  肩は専門用語で「肩関節複合体」と呼ばれ、複数の関節で構成される場所です。 上図にある4つの骨でいくつかの関節を構成し、協調的に動きます。 ・肩甲上腕関節 → 肩甲骨と上腕骨で構成される関節。これが多くの方が想像する肩関節です。 ・胸鎖関節 →  胸骨と鎖骨で構成される関節。 ・肩鎖関節 →  鎖骨と肩甲骨で構成される関節。 ・肩甲胸郭関節 → 胸郭(肋骨)と上腕骨で形成される関節。 ・第2肩関節 → 肩甲骨の一部と人体組織を機

          肩は犠牲者

          クライマーの指は慢性的に痛んでる

           クライミングと指の痛みは、切っても切れない関係にあります。多くの方が経験しているのではないでしょうか。  クライマーの指の痛みで有名なものは「プーリー損傷」でしょう。いわゆる「パキり」です。  プーリーは長い屈筋腱の機能を落とさないように滑車のような役割を果たしています。  ただ、プーリー損傷ほど重症ではなくても、慢性的に痛みがある場合もあります。  そのような場合に考えられることは、腱組織の変性による組織の脆弱化です。 本来、腱という組織はコラーゲン繊維に富んでお

          クライマーの指は慢性的に痛んでる

          姿勢とパフォーマンス

          今回は「姿勢」についての記事になります。 良い姿勢とは何か。いわゆる「理想的な立位姿勢」というものはありますが、何に対して理想的なのかは定義されていません。 個人的には、「目的に対して効率的で安全かつ、さまざまな方向の動きに対応できる」姿勢が理想的かと思います。 そして大事なことは、姿勢というのは基本的に、意識して作るものではありません。勝手に作られるものです。 例えば写真のような姿勢を気にして背筋を伸ばすと、普段よりも疲れることが多いと思います。 人の姿勢は「Hum

          姿勢とパフォーマンス

          肩甲骨を使いたい

           肩甲骨、使いたいですよね~!!  強度が上がると肩が上がってしまう、肩甲骨が下に入る感覚が分からない  色々な悩みがあると思います。  結論 意識的に肩甲骨を下げようとしても下がらない(窮屈になるだけ)  です。    でも、肩甲骨はやはり下にあったほうが上半身は安定しますので、下げたいですよね。 肩甲骨が下がらない要因を知る前に、まず人間の運動特性を把握します。  ①人間の運動は「その課題(今やろうとしていること)に対して、現状の身体機能で遂行できる最善を出して

          肩甲骨を使いたい

          トレーニングは個別性が大事。

           陸上競技で有名な為末さんは、「あるトップ選手の真似をしても、その骨格でその人の人生でない限り、上手くいかない」と話していました。  よく耳にするのは「あの人は登る以外のトレーニングをしなくても登れるから、トレーニングなんて必要ない」とか、「とにかく登っていれば強くなるから、登ろう」、「トップクライマーがやっているトレーニングは有効だからやってみよう」といった声をよく耳にします。  「登っていれば強くなる」これは間違い無いです。クライミングは、技術と同程度にフィジカルの要

          トレーニングは個別性が大事。

          股関節が硬い時は背骨も動かそう

             前回の記事は、感覚的な側面からの柔軟性をお伝えしましたが、今回は純粋な身体の硬さに関してお伝えしていきます。  股関節が硬い人は要チェックです。(私もとても硬いです・・・)  股関節は関節の形状では、球関節という種類に分類されています。この球関節は名前の通り「球」の形で関節面を形成しており、多平面にわたって大きな自由度を持つことが特徴です。  とはいっても、股関節にも限界はあります。実際、股関節の純粋な屈曲可動域は約90度程度であり、それ以上の動きは腰椎の動きを伴

          股関節が硬い時は背骨も動かそう

          硬いよりも柔らかい方が良い

           クライマーの方々は、「股関節が硬くて乗り込みができない」「狭い」といった経験をされることが多いと思います。  「身体が硬いと動きの範囲が狭くなる」というのは、多くの方々が知っている事実だと思います。  そのような側面で「柔らかい方が良い」ということももちろんありますが、今回は感覚的な側面での「柔らかい方が良い」について、記事を書いてみます。  ここで一つ、想像してみてほしいことがあります。 ・2本の野球バットがあります。 ・片方の手に1本ずつ持ってください。(この時、バ

          硬いよりも柔らかい方が良い