お坊さんに悩みを相談できる! 築地本願寺の「悩み相談」ってどんなもの?【前編】
コロナ禍の生活下で疲労やストレスが積もり積もって、気が付けば人知れず不安を抱えている人もきっと少なくないはずです。現在、築地本願寺ではお坊さんが無料で悩み相談を実施しています。築地本願寺の僧侶で、各相談サービスの担当者・秦明人部長にお話を聞きました。
築地本願寺の相談サービスとは?
――築地本願寺では、さまざまな悩み相談サービスを実施していると伺いました。相談には、どのような種類があるのでしょうか?
現在、築地本願寺には、二種類の無料相談があります。一つ目は、銀座にあるGINZA SALONでおこなっている「よろず僧談」です。これは、仏事やお墓のことはもちろん、人間関係や日頃の生活の不安など、気になるあれこれを僧侶に相談できる場です。現在は、築地本願寺倶楽部という会員組織(入会費・年会費無料)にご登録いただいた方が対象で、週に2回、1日3枠の予約を設けています。
二つ目が、どなたでも対応可能な「僧侶相談」です。以前は境内のインフォメーションセンターでお受けしていましたが、7月1日より、本堂の中に設けた相談スペ―スで、様々な仏事や悩みのご相談を受けるという取り組みを行っています。相談内容によっては、場所を変えての対応を行います。特に予約等は必要なく、築地本願寺にお越しいただき、近くの僧侶や係員に気軽にお声がけください。 ※平日9:00~12:00、13:00~16:00 で対応
「会社が潰れそう」「葬式ができない」など悩みの種類も様々
――悩み相談に来られる方は、どんな方が多いのでしょうか?
どちらかというと、女性の相談者の方が多いですね。年齢層は30~70代くらいまで幅広いです。きっかけとしては、築地本願寺の合同墓をご契約ただいた方や、職場が近くてよく前を通りかかっていたという方、あとは仕事などで頭がぐちゃぐちゃした時に本堂に座るのが習慣だったという方など、入口はごく様々ですね。あとは、「築地本願寺とまったく縁はなかったのですが、話を聞いてもらいたくなった」と飛び込みでいらっしゃる方も、もちろんいらっしゃいますよ。
――相談の内容はどんなものが多いのでしょうか?
とても幅広いです。たとえば、GINZA SALONで行っている「よろず僧談」については、申込時にご自身のお名前や住所などの情報を入力していただく必要があるんです。そのあたりのハードルを越えて相談にいらっしゃるので、内容的にはその方にとって重い相談であることが多いです。たとえば、ご自身のお子さんを亡くした方。入院中で、その一時退院期間に心の安心を求めて相談にいらした方など。
一方、境内でやっている「僧侶相談」についてはふらりと立ち寄って受けていただくことができるので、「ついSNSなどで他人と自分を比較してしまう」「会社で仕事がうまくいっていない」というような悩みから、月に1回、茶飲み話や軽い愚痴だけを言って帰られる方もいますね。
あと、印象深かったのは、数年前に「会社が潰れそうだから経営相談したい」という方がいらっしゃったことです。最初は「お坊さんの僕でいいのですか?」と聞いたのですが、「いい」とおっしゃるので、二人で会社の立て直し案を必死で考えたこともありました。
――コロナ禍で、相談の内容に変化はありましたか?
コロナによって起こった、様々な社会変化が起こっているので、それに紐づいた悩みを抱かれる方が増えています。「景気が悪くなって会社を辞めさせられた」と未来への不安を感じる方もいれば、「コロナのせいでお葬式ができなかった」など、仏事の相談に来られる方なども増えましたね。
より幅広い相談者を募るため、夜間受付やオンライン相談もスタート
――相談者の数に変化はありますか?
年々、申込が増えています。この5年間の相談数は、500件を超えました。「よろず僧談」など予約制のサービスに関しては、告知を出すとほぼ100%予約で埋まるような状態です。以前は日中しか受け付けていなかったのですが、ビジネスパーソンに対応できるように、月1回ですが夜間受付も開始しています。また、コロナ禍で対面に不安を感じられる方も多いかと思うので、現在ではZoomなどでオンライン相談も実施しています。
大切にしているのは「なぜ、僧侶に相談をしようと思うのか」
――世の中には数多くの相談先があるなかで、お坊さんに相談に来る方が多いのは、なぜだと考えていらっしゃいますか?
時々、相談者の方に「なんでお坊さんに話をしたくなったのですか」と聞くのですが、返答としては、「お坊さんは特殊な存在だから」と言われることが多いですね。全くの他人でもあるし、目上でも目下でもない。自分が普段付き合っている人とは全く違う世界に生きる遠い存在だと。だからこそ、メンタルや金銭面な問題から、性的な話や恋愛話まで、人には言いたくないことでも打ち明けられるのだと。また、一度は名前を聞いたことがある築地本願寺のお坊さんであることも前提にあると思います。
――相談者の方にお会いしたとき、心がけているのはどんなことですか?
基本は傾聴の姿勢を持つことです。心が落ち着くまで、話したいだけ話をしていただくようにしています。最初の1時間はずっと話しっぱなしの方もいらっしゃいます。
あとは、個人的に気を付けているのは、先ほども申し上げた「お坊さんになぜ話をしたいと思ったのか」という部分です。ときには、ご自身の身に起こった説明のつかない不運な出来事を、お坊さんがスピリチュアル的に回答してくれるのではと期待されてくる方もいます。浄土真宗ではスピリチュアルな回答はできないものの、私にわかる範囲で、縁起や諸行無常といった仏教の話や浄土真宗にある考え方をお伝えすることもあります。
――それは、仏教の考え方がベースにあるお坊さんだからこそできる話ですね。
そうですね。もちろん、ものすごく難しい経典の一部を抜粋して話すのではなく、もう少し多くの人にわかりやすいような初歩的なお話ではありますが、少しでも相談者の方の心に触れるお話ができれば……と心がけています。
相談をいただけることは、自分にとってご褒美のようなもの
――深刻な相談を受けた後、ご自身の心が辛くなることはありませんか?
独りよがりに聞こえるかもしれませんが、多くの方のご相談に乗れることは、自分にとってはご褒美のようなものだと思っています。築地本願寺の職員として働くなかで、法要をさせていただくときと、この悩み相談をさせていただくときが、「一番お坊さんとしての仕事をしている」と実感します。いろんな方のご相談を聞いて、少しでもお役に立てるのならば、苦しいとは思いませんね。
――最後に、相談をする際はどんな気持ちで伺えばよいのでしょうか?
私たちは、どんな方でも是非相談に来ていただきたいと思っています。あと、特に気になっているのは、男性の存在ですね。先にも挙げたように、女性の相談者の方は多いのですが、男性の相談は極めて少ない。ジェンダーで分けるのはよくないことですが、男性は他人に弱みを吐き出しづらい方が多いように思います。ただ、男女共に悩みを持つことは変わらないはずなので、男性の方にも気軽に相談に来ていただきたいです。また、これは今後の課題として、「悩みはあるけれど、他人に打ち明けられない」というような方にもっと相談に来ていただくには、どんな窓口を用意したらいいのかを模索しているところです。
【心に不安を抱えたときは、お問い合わせください】
●築地本願寺の「僧侶相談」
開催日:年中無休 午前9時~12時、13時~16時
先着順。無料。
※詳細については電話やネット等で問い合わせを。
●築地本願寺 よろず僧談
実施場所:築地本願寺GINZAサロン
実施日:水・木曜日 午後1時30分~16時
人間関係や日頃の生活の不安など、気になるあれこれを僧侶に対面で相
談することができます。※築地本願寺倶楽部の会員対象
要予約制ですので、築地本願寺HPよりお申込みください。
【築地本願寺以外のお悩み相談窓口の情報】
●東京ビハーラ 電話相談 ☎03-5565-3418
受付:月~金曜日(祝日除く)午後2時~5時
お一人で苦しみ悩むことや悲しく辛いこと、憤りなどをお持ちでしたら、ど
なたでもお電話ください。1回最長50分間で、総勢25名のスタッフが日替わ
りで聴聞させていただきます。
●自死・自殺に向き合う僧侶の会 手紙相談
自死(自殺)に関する相談・質問等を手紙(書簡)で受け付けます。
【手紙(書簡)の宛先 】
〒108-0073
東京都港区三田4-8-20 往復書簡事務局
※返信の差出人は、返信する僧侶個人の名前になります。
●仏教情報センター 仏教テレフォン相談 ☎ 03-3811-7470
相談時間:月~金曜日の午前10時~12時、午後1時~4時までです。
浄土真宗は火曜日 午前10時~12時 午後1時~4時
150余名の僧侶がボランティアで参加しています。
どうぞお気軽におかけください。各宗派の僧侶がお応えしています。
※上記3団体は築地本願寺の運営する団体ではありません。