[短編小説]死にたがりの少女と山田ネコの9つの命の行方
こんにちは私、山田ネコ15歳ネコと言ってもれっきとした人間です名前がネコね、今日から高校生になりました。
得意科目は体育、他の勉強はちょっと苦手かな好きな食べ物はお肉、肉、肉、肉ぅ〜。
ちょっぴり好奇心旺盛な女の子、ちょっぴりなのか旺盛なのかは突っ込まないで。
入学式早々おかしな女の子と出会いました。
お約束ですが遠くの方にウロチョロしてる子猫を見つけた時の事、野良か飼い猫か今時は室内飼いを獣医師さんも推奨してるんだぞっ、まっ私は室内飼いなんて真っ平だけども。
あっ子猫が広い道路の方に、いかん私の脚でも間に合いそうにない!危ない!そう思った時、彼女が飛び出してきた。
彼女は子猫を颯爽と拾い上げ、細い路地に子猫を避難させようと……路地から飛び出してきた車に轢かれた!
彼女の元へ駆け寄ると、子猫がトコトコ彼女の手をすり抜けて歩み寄ってきた、子猫は無事か良かった彼女は!?
時すでにお寿司彼女は死んでいた、いかんこんな面白い子、いやっ勇敢な子をみすみす死なせる訳にはいかない。
「ネコ貴女の力は無闇に使っちゃダメよ」
ママの声が頭をよぎる、私には特別な能力があった、それは命を人に分け与えるというもの、元々9つの命を持っていたが訳あって今は8つ、いやっ彼女に今分けたから残り7つか、彼女が目を覚ました。
「猫ちゃんは無事!?あっ無事なようね、私も無事か英雄的死は得られなかったか、アレっ貴女同じ制服ね新品で少し大きめの制服貴女も新入生ね私、山県ニヤよろしくもしかして貴女が助けてくれたのかな」
子猫を真っ先に心配するのはよし、しかしなんかおかしな事も言ってたぞ英雄的死がどうとか……私も挨拶する。
「子猫は無事、ご明察同級生のようねよろしく私は山田ネコ、早速だけどニヤ貴女の作戦を変更するわ"いのちだいじに"が貴女の新しい作戦よ、んっ?私が助けたって言ったわねどうしてそう思ったの?」
「なんかねさっきだんだん命が冷たくなって行くのが分かったの、ああやっと死ねるんだって思ってたら急に命が温かくなってね、目を開けたらネコがいたの、ネコが助けてくれたんだって直ぐに分かったわ」
「ねっお礼に私の家に遊びに来ない?……と言いたいところだけど私、児童養護施設住みなのよねあまり悪くは言いたくないけど厳しくてとても友達を呼べる所じゃないの、良かったらネコの家に遊びに行ってもいいかな?私なんかを助けてくれたネコのこともっと知りたいし仲良くなりたい」
関わらない方が良いような、でもほっとけないような、私はニヤの提案を渋々快諾した、渋々なのか快諾なのかは突っ込まないで、私の家に来るまでもなく直ぐにニヤは話出した、よく喋る子犬のような子だ私は子犬に懐かれたようだ、悪い気はしない。
「私の母親は小さい頃亡くなっていてね父親はDV野郎で、弟と2人で施設暮らししてるの、そんな環境で育ったからか私は自己肯定感が薄くて早く死にたいって思っちゃう、だけど自殺は人に迷惑かけるから、誰かを助けるとかして死にたいの、これも承認欲求なのかな」
ニヤは美少女だった私がキレイ系だとするとニヤはカワイイ系、好きな男の子でも出来たら承認欲求は直ぐに満たされるんじゃ……等と考えながら歩いてると1件の民家から煙が出てるのを見つけた。
「ニヤあれ!」
ニヤも直ぐ気付いた火事だ!消防を呼ばなければ私は火が怖い、高いところは平気だが、2つ悪い予感がした、1つ目は火事の原因よくあるのが子供の火遊びだ取り残された子供がいるんじゃないか、2つ目はニヤがどう動くか。
ああやっぱりかニヤは煙の出ている民家に駆け寄って、何故か制服を脱ぎ出した制服の下はTシャツと短パン、まあ夏ならそのままでもOKな格好だ、しかしニヤはその上から庭にあった水道から水をかぶり煙の出ている民家の中に突進して行き暫くして幼稚園位の子供2人抱えて戻ってきた。
「ネコ!後はお願い!」
お願いって言われたってなぁ……子供2人は既に亡くなっているようだった、私の命は無限ではない今までこういう面倒事には巻き込まれないよう生きてきたのに、こんな小さい子供見捨てたら可哀想ではあるし何よりニヤが悲しむだろう、仕方ない私は命を分け与えた、残りの命5つ。
「ネコ、ありがとう!ありがとう!」
ニヤは泣いて喜んでるしかしちゃんと話して置かなければ、消防や警察に連絡してその場を去る、私の家に向かいながら私はニヤに語りを入れた。
「いい?ニヤ確かに私は人に命を分け与えることが出来る、だけど私は命を大切に扱いたいと思ってるの、本当に大切な人にだけ大切な時にだけこの命を使いたいの、それに私の命は後5つしかないのよ」
「え〜5つもあればいいじゃん私なんて1つしかないよ、あっそのひとつもネコから貰ったものか、そう考えると大切にしなきゃなって気になってきたわ」
「元々私の命は9つあった、でも昔事故でママが1度死んで私の命を1つ分け与えたの、家族だとか友人……死ななくてもいい時に死んでしまった、そんな時にしかこの力は使いたくない5つもあるったって逆を言えば5つしかない、そんなヒョイヒョイ亡くなった人を生き返らせてはいられないよ?」
「うんっ私にも少し分かってきた、私は今まで死に急いできた、でも実際死んで生き返らせてもらって、他の人の死にも直面して死に急いでいたのがおかしなことだったんだなって」
話しながら歩いてるとニヤを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ニヤお姉ちゃ〜ん」
「おおナオじゃないか、偶然だな帰るところか?あっネコこいつ弟のナオト、姉弟ともよろしく!」
「ほっほう〜可愛い弟じゃないか、やっぱ犬系なんだな1匹欲しくなってきたな」
ニヤはナオの頭をしっかり抱き締めて慌てて言う。
「あっあげないぞっ!」
「アッハッハッハッハッ冗談だよ」
ナオと別れて私の家に向かう、家に着くとママが出迎えてくれた。
「ママ〜ただいま〜友達連れてきたよ〜ニヤって言うのジュースとオヤツよろしく」
「あらーニヤちゃんよろしく私がネコの母親のマヤです……あらっネコ貴女、力を使ったわねっCuriosity Kills the Cat」
「なんでそれをママが……」
「猫は20年以上生きると色々な能力が使えるようになるのよ、あっ私たちは人間ですけどねほほほっニヤちゃんゆっくりしてってね」
「キレイなお母さんね、あの人も1度死んでネコに生き返らせてもらったんだね、なんか親近感……」
「うん5歳の時家族旅行でねパパの運転する車が、煽り運転の無理な追い抜きで崖から転落しちゃってね、私とパパは無事だったんだけどその時ママだけ死んじゃった、もし私にあの力がなかったらって想像すると今でも泣けてくる」
私の部屋に着くと女子トークがはじまった。
「おお〜意外と可愛いねネコの部屋」
「意外とってなんだよしっけいな」
「いやっネコはクールビューティーって感じだからさ、部屋もモノトーンとかでシックなのかとへへっ」
「まあ私がクールビューティーなのは否定しない」
「しないのかよ」
「いやっでもニヤもカワイイ系でモテるだろ、さっき考えてたんだけど彼ピでも作ったら承認欲求なんて簡単に満たされるんじゃない?」
「いや〜男は子供作る時だけでいいっすわ、何なら精子バンクから提供してもらうだけでも……」
「わかりみが深い、私なんて発情期以外は、男に興味ないしね」
「……」
「……」
「なんかモテない女たちの負け惜しみにも聞こえるね……」
「そっそんなことはない、あっそうだニヤ街に遊びにいかない?」
「いいけど私、制服だし不味いような……」
「服なら貸すよ何ならあげる、可愛いから買ったけど私には似合わないから着たくても着れない服が山ほど……」
お着替えタイム。
「おお〜ニヤ〜さっき制服脱いだ時から薄々気付いてたけど、おっぱいおっきいねうらやますぃ〜」
「ネコこそ細くてうらやますぃ〜何そのくびれ細長い手足、お前はモデルか」
「でもあんま細過ぎてもこお言う可愛い服は似合わないんだよねぇ」
「なになにその服可愛い〜それ借りていいの?ちょっと待ってね……あっでも胸のとこが若干キツイかな」
「イヤミか、ちくそ〜でも悔しいけどニヤはカワイイ系の服似合うね、あとボタンがはずれそうでエロい」
「ネコの成長しきってない肢体もエロいよ」
「……」
「……」
「虚しいからやめよう、さあっ街へ繰り出すぜ!」
結論から言おう私たちはモテまくった、つーかナンパされまくり10メートル歩く事に声掛けられた、でもだからってあんな事になるなんて。
「ネコぉ〜前に進めないんだけどぉ、あっごめんね今日は女子会だから」
「そうだねニヤこんな事になるなんて、そこ通して興味ないから」
駅から降りてから、ナンパ師の山をすり抜けて200メートルほど進んだろうか私たちは完全に浮いていた、目立っていたそこを怖い人たちに目をつけられた。
「お前らこんなとこ来といて男ども完全に相手しないとか、どこの姫だよあんま調子くれてんなよ」
「ゴメンなさいそんなんじゃないんです、私たちLGBTなんです、レズビアンなんです」
私は適当なことを言って誤魔化そうとしたが。
「おおてぃてぃ、でもなそんな女に男の良さを分からしたいのが俺らな訳よ」
ダメだ話にならない身体に分かってもらおう、私は人間離れした身体能力で、絡んできた怖いお兄さん達を叩きのめした。
「???なっなんだ何された???クソっクソー覚えとけよ」
怖いお兄さん達は(私が加減したから)走り去って行ったが念の為今日はもう帰ろうと思った、ニヤを促してそそくさ駅に向かう。
と、ブォンブォンと車のアクセルをベタ踏みしたような大きな音がこちらに近づいてきたさっきの男だ加減しすぎた、猫はびっくりすると一瞬動きを止める、それでも持ち前の反射神経で何とかなる、1人ならば……ニヤが居た。
どうする後でまた生き返らせるか、悩んでるうちに判断が遅れた、私とニヤは猛スピードで突っ込んでくる車に轢かれた、意識が朦朧としているヤバいこれはホントに死んじゃうんじゃなかろうか、ニヤの声が聞こえる。
「ネコぉ……私たち死んじゃうのぉ……嫌だぁ生きたい!」
私たち2人、ネコとニヤは死んだ。
――――
が、私は生き返った元々猫の9つの命は人に分け与える為のものではない、猫自身が長生きする為のものだ、直ぐにニヤも生き返らせて2人で帰路に着く暫くは大人しくしていよう人間怖いよぉ〜命残り3つ。
「ネコ!貴女また力を使ったわね後いくつ残ってるの!?」
家に着くとママにこっぴどく叱られた。
「残り3つ!?ああなんて事なのネコいい?私が山田姓のパパと結婚する前の姓は猫塚、人に化けた猫が人間と恋をして産まれた一族、人間の長い寿命と猫の9つの命を持った長寿の家系、何度も言うようだけど"好奇心は猫を殺す"って諺よぉーっく心に留めておいて」
ママに言われるまでもない、5歳の時にママに1つ命を分け与えてから10年今日まで私は1つも命を減らすことなく生きてきた、それが今日だけで5つも命を減らしてしまった簡単に、ニヤに言えた義理じゃない私ももう一度命と言うものを考え直さねば。
考え疲れて寝ていると携帯が鳴った、ニヤからだった、悪い予感。
「ネコ、助けて!DV野郎に見つかった!今、ナオと一緒にあいつの車のトランクの中!警察にはもう連絡したけど上手く検問に引っかかってくれるかどうか……」
DV野郎と言うとニヤとナオの父親か、どうする私は命が3つある以外普通の可愛い女の子だぞ……その時ママの言葉を思い出した、猫は20年以上生きると色んな能力が使えるようになると、ママを叩き起した。
「大変な事になったようね、ママに任せて起きなさいワンちゃんにはかなわないけど猫の嗅覚は人間の数十万倍、聴覚にいたっては蟻の足音も聞こえるほどよ」
ママの運転する車で、ニヤとナオを探しまわった、ほどなくママが何か見つけたようだ廃工場の前で停車した。
「ネコ見て!乗り捨てられた車にニヤちゃんの匂いがあるわ、工場の中に3人が居るのが聞こえる、行きましょう」
「ニヤーナオー」
「ニヤーナオー」
居た!3人を見つけた!荒んだ顔の男はこう言った。
「なんだ猫かと思ったら女2人か」
「だ〜れが発情した猫か!」
「誰もそんなこと言ってねえよ」
男の足下には血だらけのニヤとナオが転がって居た。
「ころ……したのか自分の子供を……」
「自分の子供だから殺したんだよ、子供の命ってのは親のもんだろそれなのにコイツら俺の元から逃げやがった許せねえよ」
「違う!自分の命は自分のものだ!例え親でも好きにしていいもんじゃない!」
私はブチ切れたもう問答無用だ!殺しはしないけど今後の人生、五体不満足で暮らさなければならない程度にDV野郎を痛めつけた。
「ニヤ、ナオ痛かったよね直ぐ助けてあげる」
「ネコ貴女……」
「ママごめんねこれで最後だから、いやっホントにもう残り1なんだけど……アレっおかしいな残り1のはずなんだ、け、ど……」
「ネコ!」
「あれっマヤさん?ネコ?ナオは?」
「ニヤお姉ちゃん!ネコお姉ちゃんが!」
「ネコ!嘘っまさか私たちを助けるために……」
「ニヤちゃんよく聞いて、私も可能性は考えていたわ、あの時、私が事故で死んだ時、ネコも死んでいたのよそして自らの命で生き返った、その後私に命を分け与えた、ネコは"数え間違え"してたのね」
「そんな……ネコはどうなるの!?」
「ネコは大丈夫、ネコはね……」
「ニヤちゃん、ネコに伝えてくれぐれもバカな事は考えないで、私はネコに借りた命を帰すだけだから……そして貴女たちのこれからの作戦は"いのちだいじに"よ忘れないで」
――――
これ以上グダグダ語るまいママは死んで私は生き返った、そして日常が帰ってきた。
――――
「ネコ起きな遅れるよ、寝子だからっていつまで寝てんの」
「ニヤーいつも悪いね、朝は弱くてね」
「大丈夫、友情しか勝たん!」
「多くの場合は肉親の愛情も勝つるよ、ニヤには悪いけど」
「情しか勝たん!」
「「愛しか勝たん!」」
-了-