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花はどこへ行った?「シェリュイ」

半蔵門駅というと、東京FMへお出かけしたり、皇居ランのために使われることが多いのではないでしょうか。古びた半蔵門駅から皇居のお堀への道すがら、イギリス大使館の美しい庭木を眺めたり、ダイヤモンドホテルでぜいたくにお茶したり(その昔はダイヤモンドホテルは今より大きかった気がする…)、都会の喧騒を離れてほっこりできるスポットが多い場所だ。

今からもう15年以上前、半蔵門といえばこのブラッスリー、いや半蔵門にとどまらず全国にその名を轟かせた「シェリュイ」に通っていたことがあった。世の中にはおいしいパン屋というものがあって、それに出会えることはあっても、通える幸せに恵まれることはそうはない。今考えるとぜいたくな時間だ。

現在では、半蔵門の店は「ル・グルニエ・ア・パン」という名に変わっている。また、シェリュイは代官山に本店を構えているようだ。その経緯は知らないが、想像するに、半蔵門のシェリュイの遺伝子は確実に東京の街に受け継がれていったにちがいない。すばらしい。

シェリュイで記憶に残っているパンは、チーズパン。焼きたてを購入して半蔵門線に持ち込むと、チーズの得も言われぬ香りが立ち込めて困った。困ったふりをして、ホームで一口、口に入れた。

総菜パンのクロックムッシュ。こちらも焼きたてを購入して半蔵門線に持ち込むと、チーズの得も言われぬ香りが立ち込めて困った。困ったふりをして、ホームで一口、口に入れた。

ケーキ類も充実していた。今のようなスイーツブームの前段階にあって、強気のお値段設定ではあったが、お使い物で頂くのをいつも楽しみにしていた。

もちろん基本のバゲットも、食パンもうまい。数千円出して生食パンを買っている人たちには悪いけど、そちらのものより当時シェリュイの食パンのほうがおそらく旨いのではないか(未確認)。

また、パンがボリューミーで食べ応えがあったところもよかった。現在のおしゃれ系のパン屋はみんな見習ってほしい。パンはパンであるがゆえにひとの腹を膨らませるものであってほしい。そう願う。

シェリュイではプティ・サレと呼ばれる、小さな塩味のパイを缶に詰め込んだ贈答品を販売していた。これが鉄板に旨かった。スイーツ嫌いの方にも贈り物として十分。むしろひとにあげるくらいなら一缶独り占めしてチビチビ食べてしまいたい逸品である。購入当時は小指の爪くらいの小さな破片だったのだが、次第に少し大振りになったと記憶している。

正直に言うと、このプティ・サレはウィスキーのつまみとしてもぴったりであった。ハイボールでもロックでも。プティ・サレさえあればご機嫌だ。

シェリュイ代官山では小缶プティ・サレ・アペリティーフという名で同じものを販売している。

おいしいパン屋には違いないが、通うことができそうにないのは残念だ。

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