おとな女子:旅先ワードローブに着物!
有難いことに、祖母や母が折に触れ誂えてくれていたので、数としては多く持っている方なのです。結婚した当初は暇だったこともあり、着付けを習ってみたものの、なんやかんや‟縛り”が多いことに嫌気が差して、次第に遠のいてしまいました。そんなことで、結婚後もずっと実家に預けっぱなしだった着物たち。いつになったら引き取るのか、と母からせっつかれていた矢先、海外から結婚式の招待状が届いたこともあり、これは再チャレンジのタイミングかも?と思い動き出した訳です。
海外で和服を着たいという野望は、常にあったことはあったのですよ。TravellinGorgeous®チャンネルでインタビューさせて頂いたルレ・エ・シャトー前日本・韓国事務局長の神谷さんからも、『おとな女子の方には、ぜひお着物でお食事に行っていただきたい!ルレのシェフたちは、本当に喜んでくれますよー!良いお席をもらえるかもしれませんよー!』というお話を伺ったこともひとつの要因。
そもそも、身長が低く手足が短い体形では、どうドレスを着こなしたって、欧米人には叶わないのです!胸も平らだし!せっかくドレスアップするのだもの、少しくらいは勝ち目が欲しいじゃないですか(笑)。
とは言え、合理主義者(要は面倒くさがり)としては、なるべく簡単に着たい。特に海外で着るには、着付け時間を短縮し、必要小物は最小限に、片付け・手入れも簡単に。着付けを習い直せば良いじゃないかと母にも言われましたが、五十肩で肩の可動域が狭くなっていて、後ろに手を回すとかもう無理!兎にも角にも、着物を着ることに関するハードルを出来る限り下げたい!ということで、いろいろ調べてみたらなんとビックリ、和装業界もかなり変化&進化しているじゃないですか!
まずは『洗える着物』という品。中でも東レが開発した『限りなく正絹に近い』シルックなどのシリーズは(この類では一番高級の様です)、ポリエステル100%なのに見た目も手触りも、ほぼ絹で遜色なし。むしろ絹じゃない分、着た時の軽さが素晴らしい。虫も喰わないから、仕舞う前に干す必要もなし。食べこぼしたり汚しても、ネットに入れれば洗濯機で洗えるという優れもの。旅用の着物には、これ一択の様な気が…。軽くて洗えてすぐ乾く。
この『洗える着物』は有名老舗呉服店の多くでも取り扱いがあって(老舗も最新テクノロジーを取り入れていることにちょっと感動)、各々が東レに発注したオリジナル柄を販売しているので、取り敢えずのネットリサーチもかなり時間を要したのは予想外でしたが(お値段もお店により異なるし)。
当初、手持ちの中から持って行くことを考えていましたが、和装リハビリ始めだし、初海外着用ということで、洗える着物を一枚購入。この先の着回しを考えて、色無地に1つ紋を入れました。更に、ワンタッチ加工も。ただ、このワンタッチ加工も2種類あって、どちらにするか一長一短につき悩ましかった!
ひとつは二部式:上下別々セパレート加工にするもの。仕立て上がりの江戸小紋セール品があったので、別途、試しに購入してみました(こちらもポリエステル100%の洗える着物)。長所としては、上はカシュクール式、下は巻きスカート式だから着ること自体は非常に簡単。腰紐など着つけに必要な紐が不要。おはしょり部分の余分な布が無くなる分、着物自体の総量が断然軽い。小さく畳めてかさばらない。短所としては、別々に分かれているので、上下のおくみ線(縫い合わせた境目の線)を合せて揃えるのに結構手間取り時間がかかる。
購入先から感想を聞かれたので、この点について尋ねたところ、『背中の中心線だけ合っていれば綺麗に見えますから、おくみ線は気にしないで着てください』とのこと。いや~、気になるから聞いたのですが…。
ということで、今回新調した色無地は、もうひとつの切らないワンタッチ式にすることに。海外で着るには、着付け時間短縮が一番重要と考えたので。こちらは、おはしょりを縫い付け、左右の身ごろに紐をつけたガウン式。おはしょり部分が残っている分、重量はそのままだけど、着るのは簡単。私には、こちらの方が合っている気がします。
ついでに帯もワンタッチ加工をすることに決定。こちらも切る/切らないで様々な加工法がある様ですが、何より『簡単に』着ることが目的なので、帯を切る2部式を選択。嵩張らないし。呉服店、業者さん、個人でやってらっしゃる裁断士の方、いろいろと比べた結果、京都の帯工房に発注。普段、帯を作っている職人さん方が加工をしてくれるので、一番間違いがない気がして。出来上がりは言うまでも無く満足!
そして、和装小物も進化がスゴイ。帯揚げと帯枕が一体化したものや、帯締めもワンタッチのものがあるし。肌襦袢と長襦袢が一体化した『うそつき襦袢』なる品も。スリップ式やかぶりのTシャツ式があって、襦袢を重ねて着なくて済むから便利。あと、着慣れないと難しい衣紋抜きの塩梅。詰まっていても、開き過ぎても、美しくないし見栄えが良くないですよね。なんとこれも、カーブ付きの襟芯を入れれば一発で決まるのです。素晴らしい、このご時世。足袋もストレッチ素材があるし、うそつき襦袢用の半襟もある。
これだけ多くの便利品が出回っているということは、それだけ簡単に着物を楽しみたいという需要があるってことでしょう。私だけじゃない(笑)。着物を知る人から見たら、ワンタッチ加工やなんちゃってな品々は眉を顰めるものかもしれません。ダメ出しをする‟着物ポリス”なる人々もいるそうです。でも、着るのが面倒だからと箪笥の肥やしにしておくよりは、着る機会が増えた方が全然良いと思うのです。正式な着方じゃなくても、まずは着ることが大事!ドレスコードがフォーマルな場合は別として、気軽にそして自由に着物を楽しむ場があって良いのでは?
自分用に持っている着物はお出掛け用ばかり、訪問着や付け下げのよそ行き晴れ着ばかりで、普段使いのものはウール1枚と浴衣数枚のみ。この夏、実家の桐箪笥を開けてみたら、祖母が残してくれた紬や麻、小紋など、ちょっとしたお出掛けや普段使いに着られるものがいくつかありました。年齢的には十分、着物を自由に楽しめる訳なので、これからは機会がある毎に自由にチャレンジしてみようと思っています。旅先にも1枚は、持って行きたいところですね。いろいろ楽に着る技を仕入れているので、マダム・カズエ流ずるっこ和装で、旅先も楽しんで行こうという新たな野望。おとな女子こそ和服でTRIP。お仲間、お待ちしております。