舌は忘れない:Horseradish/ホースラディッシュ
1994年にロンドンへ留学した時、『イギリスに美味しいモノ無し』と言うのは嘘だと直ぐに気付きました。観光客向けの店(ガイドブックに載っていたりツアーに組み込まれているところ)が‟美味しいとは言えない”だけの話で
スーパーに行けばEU諸国から集まってきた豊富な食材・食品が溢れており、街中のレストランやカフェも、美味しい処ばかり。そもそも美味しいモノが大好きな私、自身が大型化していくのにそんなに時間は掛かりませんでした。両親は『痩せこけて帰ってくるに違いない』と心配していましたが、逆に洋服のサイズが2つも大きくなって帰国したのでした(笑)。
もちろん、学生の身分だったので自炊が基本でしたが(ホームステイ時以外)、時には友人達と高級店にも足を延ばしたり。ダイアナ妃御用達のイタリアンや、5ッ星ホテルのアフタヌーンティーなど、地元の食通が通う処はどこも素晴らしく、その当時から既に美味しかったのです。逆に、‟イギリスは不味い”という人は、一体どこで何を食べたんだろう?と思ったもの。
もしも、ロンドンで1食しか食べられないとなった時、私が選ぶのは間違いなくシンプソンズ(Simpson's in the Strand)。ここはどのガイドブックでも一番最初に出てくるレストランじゃないでしょうか?ローストビーフで有名な老舗高級レストランは、ロンドンを代表する大通りのひとつストランドにあり、サヴォイホテルに隣接して建っています(中で繋がってもいる)。
格がある分、‟良い”お値段なので、日本人旅行者を除けば客層は圧倒的に年配者が多いです。平日のランチ時などは、見るからに政治家という人や(ウェストミンスターも近いので)ひと目で高級と判るスーツを着た上流階級の紳士方が多く、未だに貴族制度が残る英国の階級社会を垣間見る場としても楽しめます。
英国では伝統的に、ローストビーフはグレービーソース&ホースラディッシュで食べるのです。私が初めて本物の(生の)ホースラディッシュを体験したのも、シンプソンズでした。近頃は日本でもチューブ入りなど出始めており、ホースラディッシュを機会がありますが、生を摩り下ろしたモノは全くの別モノ!ほんの少量で、脳天突き抜けるほどの刺激!鼻に抜けて痛いとか、辛くて涙が出るとか、そんなレベルではないのです。脳の中枢を第7チャクラまでガーンと劈く、突き抜ける衝撃。そして、何口食べても全然慣れない(笑)。まるで、電流を流して刺激されている様なショックが、ひと口食べる毎にやってくる。それでも、食べる手を止めないというのが食いしん坊。シンプソンズのローストビーフは、本当に絶品ですから。しっかりローストされているのに、口入れると溶けるような柔らかさ。塊肉のまま、シェフが銀のワゴンに載せてテーブルまで運んできてくれ、目の前でスライスしてくれるんですよ。
生わさびも練りモノわさびとは全然違いますが、ホースラディッシュの生は、その倍以上の違いがあります。比較対象、類似品が思いつかないほどの脳天チョップの衝撃。これ、脳の活性化に繋がるんじゃないかと思うのですが。そういう文献、探してみましょうかね。年1回くらいで食べていたら、結構良い影響あるんじゃないかと思うのですが。
久しく渡英もしておりませんので、近いうちにぜひ、脳天ガツンを味わいに行きたいところです。意外と、嫌いじゃない脳天パンチの味なのですよ。