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《詩》青い線
助からないなら忘れてくれてもいいよと
あの夜君にいわれた僕はなにも考えられなく
みえなくなっていつも通り泣いてしまったね
下手な笑い声がきこえる夜のとばりに隠れて
静かにきらめくスズランの香りにたちくらみ
たやすく触れられないのは祈りでした
みえない鳥が僕のすぐ横を飛び
まだ準備ができていないのに
さあこちらへとあの日の告白の続きをみせてほしがる
開演前の興奮を思い出そう
君を目指していたら遠回りになるから
一つの嘘を捨ててその幕の裏にいるのだろう
ぼんやり映る影はただの蜃気楼だった眩暈で苦し い
心臓はどこかにいってしまった
水平線に横たわるのは見知らぬ海の寝どこ
細く浮かんでいた電信柱に絡みつくみたいに
どこまでもどこまでも伸びていって
いつしか君のいる街の明かりをともすだろう
きっとあなたは私であって
永遠にこの世界に結ばれた線は切れてしまいそうなほどに透明だ
静寂で泣くのはいつも いつも いつ も
涙が綺麗な夕陽を抱いて空になるだけ
いきつき戻ってきては許されたくなる
誰も許してなどくれないのに
ほどくとたやすく開いた ここだけの話をしよう
目をこらすとみえるのは冬のさざなみと
切っても切れないこの青い線だけ
古屋朋