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写真の主語、展示の主語┃〈UNTITLED2024〉を終えて

2024年11月22日~24日、原宿のデザインフェスタギャラリーにて行われました〈UNTITLED2024〉。
無事終了しました。
ご来場いただいた皆様、開催してくださった運営の皆様、展示を共に作り上げた出展者の皆様に感謝の限りです。
そして1年間お力添えいただいたモデルさん方にも御礼申し上げます。

2023年11月から1年間、このために撮影や執筆を進めておりました。
それほどまでに周囲のレベルが高く、下手な写真ではならぬと試行錯誤する原動力となっていました。
Mikuriaさんには感謝してもしきれません。
改めて御礼申し上げます。

さて、今年も作品に対する思いやなんかを書いていこうと思います。
風景写真が半数以上を占めるUNTITLEDにおいて、ポートレートが何を残せるのか、またアートの方向に舵を切りたいと思っている人間が何をできるのか、という目線で考えたアレコレ。
しばしお付き合いください。

展示全景

pictureとしての写真

今回、四葉を選ぶにあたって、「pictureとしての写真」を根底のテーマとして据えました。

英語で言うpictureは、絵画や写真など、広く平面の作品を指します。
私が昨年連載していた記事から続けている、絵画作品からのインスピレーションを具現化しようとしたとき、裏側でモティーフとする歴史上の絵画作品になぞらえてみようと考えました。

しかし、撮る段階でそれを考えるのではなく。
撮った後に自分が「いいな」と思う要素の一つとして、これまで見て来た「いいな」と思う絵画作品との共通点があるのだろうという解釈です。
私の中でそう解釈したのであって、観る人からしたらまた別の観え方があるかも。
そんな余白を生める作品を集めた次第です。

城酉諒《夢と観る場所》

今回の出展において、各写真の選定基準となった、ある種のキービジュアルです。
私の写真や記事を以前からご覧いただいている方なら見覚えがあると思いますが、新宿大ガード西の横断歩道。

この場所は、私の撮影コンセプトを作り上げた場所であり、幻想を追いかける場所でもあります。
イメージを一新することと、改めて今の実力でブラッシュアップすること。
両方を両立させるために諒さんへ撮影をお願いしました。

私のテーマカラーである緑がかった青色、新宿大ガード西交差点。
そして2024年もっとも挑戦した撮影だった諒さん。
時間軸として未来を観つつ、明るい空気感で、新たな世界を目指せるようにとコンセプトを練って撮りました。

そして今回の展示で唯一、元となる美術作品がないオリジナル。
ここは私の場所。
pictureとしての写真でありながらも、私自身の作家性というか、自分で撮る意味を見出すことにおいても重要な一葉なのです。

諒さんは常々新しい挑戦をしていて。
いずれ夢である映像へも挑戦することも視野にいれつつ、大きな舞台で実力を磨く姿は、観ていて勇気をもらえるのです。

だからこそ、ここは「夢と観る場所」。
新たな私のテーマ。

会場にお越しいただきました!

いそのさやか《浜辺、青》

かつおさんは演出次第で雰囲気がガラッと変わる方。
なので展示するにあたって、どうイメージを鑑賞者の方に伝えるかで色々難儀していました。
迷いに迷った結果、私の好きな色で彩った一葉にしました。

モティーフは黒田清輝《湖畔》。
言わずと知れた、日本近代美術における重要な一点であり、日本の重要文化財にしも指定されている絵画です。
あちらは芦ノ湖ですが、私の写真は七里ガ浜で。

彼女は自然と物語のある空間を作ることができる方なので、どちらかといえば組み写真向きだと考えています。
ただ今回に関しては4名で組むと決めていたので、勇気の決断で。

黒田の絵画は、芦ノ湖の静かな空気を描いていると個人的に捉えていて。
写真の撮影日は曇天で不安ばかりだったのですが、かえって似たような質感に仕上げられて。
雨降って地固まる。

かつおさんも、昨年撮影させていた時からずっと気になっていて。
2024年の挑戦という意味で欠かせない存在です。

國田あかり《風薫る庭》

國田さんのXのアイコンにもなっている一葉。
めちゃくちゃ暑いし、天気も万全とはいいがたい感じの日だった気がします。
その中で撮れた奇跡の一葉。

國田さんはいろんなロケーションでマッチしてくれる柔軟なモデルさんなので、逆にどう演出するかという面で悩みが絶えない方でもあります。
今回はキービジュアルをベースに考えて、ふんわりとした世界を描けた一葉に。
この写真は國田さんのXのアイコンにもなっています。

こちらのモティーフは、東京都美術館で開催されていた〈印象派 モネからアメリカへ〉で見た、アメリカ印象派のチャイルド・ハッサムの作品《花摘み、フランス式庭園にて》をベースに。
当該作品は私の自室にも飾ってあるくらい「毎日見ても飽きない」という目指すべき空気感。
國田さんの被写体力で表現していただきました。

またしっかりと意識したワケではないので、口頭での説明はしなかったのですが。
藤田嗣治の「乳白色の肌」を目指した作品でもあります。
光が拡散して柔らかくなる場所だったことと、花の色との対比を作りたくて、けっこう試行錯誤した一葉です。
ファンの方にドキッとしてもらえていたら嬉しいです。

國田さんにもお越しいただきました!

武藤彩《雪柳》

昨年に引き続き展示させていただいたいろさん。
さすがの被写体力で写ってくださるので、私の実力以上に華やかな写真に仕上がることで評判。
今回の展示でも鑑賞者さんから多くコメントを頂く一葉でした。

四葉のなかでは唯一、夜に撮影された写真だったこともあって、観る人からしても印象が強かったようです。
風でゆれる雪柳と、ぴたっと静止してるいろさんの対比が最高。
「モデルさんが浮き上がってるみたいです」と、何名かから同じ感想を頂いて、プリントするって印象変わるんだなと改めて思いました。

彼女とはポートレート活動の初期からお付き合いがあって、私の作風を語るうえでは欠かせない存在であることは間違いありません。
挑戦する年であった2024年においても、軸はブラしてはならないと思い、「この作品を飾らせてください」とお願いした次第です。
ポートレート然としている作品でありながら、pictureとしての写真という、コンセプトを体現するような一葉と考えているので。

いろさんの今後目指すところはどこになるのか。
いずれにしても応援するのみです。

写真の主語、展示の主語

裏テーマについて語るとキリがない私。
うまく言語化できなかったので表には出していないのですが、「写真の主語」について考える時間をたくさん作りました。
自分の撮る写真の主語は、Iなのか、sheなのか、weなのか、theyなのか。

私が観測する限り、写真の主語はIに偏ることが多い。
私は撮るときにこう思った、なぜここに行こうと思った、なぜこう撮ろうと思った。
つまり「写真を通じて私を知ってほしい、興味を持ってほしい」。
被写体に対しての思考もあるので、thisも主語たりえるのでしょうが。

併せて、日本語は主語を省いて話せる言語でもあります。
それが写真に反映されるのかという問題はありつつも、主語とか考えていないという意見もさもありなん。
なので主語ではなく主題を、という見解も妥当と考えています。

しかしここで考えたいのは、あくまで主語。
私が撮る写真がsheやtheyでなく、Iを経由することもなく、weになるには何が必要なのか、という問いです。
これまで自分という存在をひた隠す撮影をしてきた私が、主語をweにしうるのか。

モデルさんからしてみれば、私という存在と作った作品ですし、私もそう思っています。
だからこそ、展示の主体である私が胸を張って「we」と言えるか言えないか、という問題。
今後もテーマにあり続けるでしょう。

さらに発展して、この展示の主語、グループ展<UNTITLED>の主語は、と。
いまのところweであるとは思いつつ、私個人のスケールに落としてみると、他の方と相乗効果を生み出せているのか、について考える余地があります。
また鑑賞者の方のことをどこまで考えられているか、についても。

鑑賞者の方によい体験をしていただく、すなわち展示自体の主語をweにするためには何が必要なのか。
これはいち出展者の身として出来ることは多くありません。
ましてや外部要因が(今回は特に)多いので。
であれば自分がコントロールする側にたってみて、その景色から見える物を捉えてみよう、と2025年は考えています。

今回印象に残った作品

UNTITLEDは毎回実力者ぞろいなので、どれを観ても素晴らしいのですが。
私が気になった作品を僭越ながらピックアップさせていただいただきます。

主催のMikuriaさん
お人柄もさることながら、風景を見つめる視線というか
その情景に立っているかのように思わせる作りこみが好き
前回に引き続き同じお部屋となったハスカップさん
相変わらずの人気っぷり
私がUNTITLEDに出すうえで、いい意味でのプレッシャーでありつつ
ハスカップさんを目当てに来た方の足を止めるには、と考えるので
大事な要素でしかないです
前回の展示にお越しいただいたShiori*さん
色使いが凄く好きで、こんな世界を描いてみたいなと
いつも思いながら観ています
同じ部屋で飾れてよかった
うぃーくさんのねこちゃんと風景
強烈なインパクトのフレームはさすがのセレクション
お人柄も優しくて、お会いできてよかったなと思ったおひとり
前回お近くで飾らせていただいた田熊さん
ガチ度が凄くて圧倒されると同時に
ここまで入れ込まないとダメなんだなと思わせられる方です
作品も相変わらずの絶景っぷり
勝手にポートレート仲間だと思っている、るるまるさん
機材への投資額が半端ないのと、実力の向上具合も凄まじく
今回の二葉は圧巻の仕上がりでした
本気になれる人はすごい……
以前からTwitterで存じ上げていたおっかーさん
今回お会いできたというご縁もあり
スナップに対する感度が高くて、非常に勉強になるのです

展示を終えてみて

設置していたBookに書いたのですが、私が撮る写真はある種手紙のような存在だと考えています。
ここをご覧になっている方ならお分かりの通り、どうしても長文をツラツラ並べたくなってしまう性分でして。
特にお気持ちを並べようとするとそれはそれは……見るに堪えない。

なので手紙を書いて送るという行為に少々抵抗がありまして。
だったら写真を手紙に見立てて飾ろうという魂胆。
何か伝わったらいいな、と。

今回、お忙しい中3名のモデルさんにお越しいただきまして。
実際にご覧いただいて感想を訊けるのは、ポートレートの醍醐味と改めて実感しています。
また写真を見てモデルさんのSNSをフォローしてくださる方も多くいて、写真をやっている甲斐があるなと思いつつ、少しでもお力添えが出来ているのかなとも。

またSNS上で繋がった方のなかで、写真はやっているけど展示は未経験という方にもご覧いただきました。
SNSに投稿することとはまた違う難しさと魅力を伝えることも、経験者としての役目の一つかなと勝手に思っています。
今後はその場を作る側として。

いろいろ大変ではありましたが、やってよかったなと改めて実感しています。
冒頭でも申し上げましたが、関係各所に感謝の限りです。
今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今後の目標~写真グループ展を開く~

昨年同様燃え尽き症候群になるよ~

…と言えないのが今年。
なんと僭越ながらグループ展の主催として準備を進めております。
詳細がまだ決まっていないのでリリースはできませんが、おいおい発表いたします。

どんな写真展であっても、完璧なものというのはありません。
美術館で開催されるもののように、歴史と権威に根ざした格式高いものもあれば、市井の人々の心温まるものもあり。
その中で私なりに、いいなと思う点、どうかなと思う点、いろいろあったのです。

決して他の展示会の批判をするわけではありません。
でも「もっと展示でやれることあるのでは?」という個人的探究心を、参加者様のお金をお預かりするプレッシャーのもとやってみようという試みです。
おそらく燃え尽きると思いますが。

こうしてツラツラ文章を書く人間の構想する写真展。
乞うご期待。

それでは。

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たかはしあさぎ
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