政策金利上昇と不動産

2024年7月31日の金融政策決定会合にて政策金利を0.25%に引き上げると決定された。
これを受けて各銀行の短期プライムレートも上がる見込みである。すでに三菱UFJ銀行は1.475%→1.625%(+0.15)へ引き上げると公表している。
2009年1月以降変動がなかったことから実に15年半ぶりのことである。
短期プライムレートは住宅ローンなどの変動金利の基準となっているため、今後切り替えのタイミング(6ヶ月毎)において、返済額が増額する。
たとえば、残債5000万円返済期間20年の元利均等返済とし、現状の金利0.5%が0.65%に上昇したとすると年間4万円程の増額となる。
一方で、長期の固定金利も上昇すると想定され、仮に固定期間10年で金利2.0%に切り替えたとすると返済額は年間40万円程増額となる。
変動金利が上がる見込みだからといって安易に固定に切り替えることはリスクが大きい。また、支払金利が大きくなる場合には元金部分の返済が少なくなり完済までの総利払額が大きくなる。低い金利を継続しながら必要に応じて繰上げ返済を行っていく方が総利払額を減らすうえでは望ましい。

今後の不動産市況について考える。リーマンショックにより不動産価格が大きく下落して以降、不動産価格は都市部において右肩上がりで上昇してきた。ここ数年は株価上昇や相続対策による不動産ニーズ、収益不動産投資ニーズの高まりもあり上昇は更に顕著であった。
この上昇期間は短期プライムレートが変動しなかったこの15年間と概ね一致している。今後、段階的に政策金利が上昇すれば不動産市況にも大きく影響があるように思われる。

アパートローンに関しても、数年前には中古収益不動産購入においてフルローンが可能という時期があったが、かぼちゃの馬車事件以降には各行が審査を厳しくしており現状においても自己資金が必要となっている。今後、政策金利の上昇に伴い銀行の審査金利も高く変更される可能性があるため、より自己資金を求めるケースが増えてくるように思われる。その結果、従来であれば購入可能であった層が減ることにより、需給バランスが崩れていくことも考えられる。
また、不動産投資利回りの観点でも金利上昇によりレバレッジ効果が薄くなることから現状の利回りでは投資対象とならず、より高い利回りを求めるため結果として不動産価格が下がる可能性がある。

相続対策ニーズについても近年区分所有建物の評価手法の改正(いわゆるタワマン節税の改正)や過度な節税に対する税務署の否認などがあり不動産を利用した相続対策にも影響が生じている。また、建築費の高騰も同様に逆風となっている。
このような金利以外にも不動産市況に影響を及ぼすような事象が発生している。

住宅ローンの上昇は生活に直結する切実な課題であり、また仮に不動産の売却を検討する際に不動産市況が悪化している場合には売却によるローン完済が困難となる。しばらくは、金利と不動産市況に注視が必要であると思われる。


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