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組織の分断は、いびきを蚊だと思い込むことから生まれている

ぶーんという音がして蚊と思って叩いたら、蚊などそもそもおらず、隣の人のいびきがうるさかっただけ。これが組織の分断を生むのです。僕は組織に分断を生みたくないのです。(は?)

こんにちは、ばんです。(Xnote

さて、前回のnoteでは、「集団の中での記号化」について探究してみたいと書きました。今回はその続きを深掘りしながら、「そもそも記号化とは何なのか?」そして「なぜそれが組織内の分断を生むのか?」について考えてみたいと思います。

そこで、このnoteでは、「集団の中で起こる記号化」について深掘りしていきます。たとえば…

  • 「”現場”は、仕事のやる気がない。変化する意欲がない人」

  • 「”えらい人”たちは、現場をよく見ずにコロコロいうことが変わる人」

  • 「”営業”は、ノルマがあって数字ばかりを見ている仕事」

  • 「”マネージャー”は、板挟みにあう役職」

  • 「”⚪︎⚪︎さん”は賢い人」「”⚪︎⚪︎さん”はいつも気を配ってくれる人」

  • 「”自分”は⚪︎⚪︎さんよりできる人/できない人」

……こんなちょっとした思い込みが、組織内のすれ違いや分断をこじらせてしまうことがよくあります。

もし「会社でのコミュニケーションですれ違いがあって困っている…」「他部署や経営層とのギャップにモヤモヤしている…」ということがあれば、ぜひ読んでみていただけると嬉しいです。

今回は、このテーマを考えるうえで、「能動的推論」という概念を活用してみようと思います。なんやら難しそうなキーワード。。

これは認知科学や神経科学の分野で議論されている理論らしいです(よくは知らん)。人間がどのように世界を理解し、適応しているのかを説明するものです(よくは知らん)。日常の何気ない行動にも密接に関わるものなので、できるだけわかりやすくお話ししていきますね(よくは知らん)。



能動的推論ってなに?

簡単に言うと、私たちの頭の中には、世界を予測するモデル(内的モデル)として、“世界のミニチュア”のようなものがあります。この地図を使って、まわりのことを予想しながら行動しているんですね。

たとえば、夜、部屋の中で「ぶーん…」と音がしたとします。多くの人は「もしかして、蚊がいるかも?」と思って、キョロキョロと目で探しますよね。そして、本当に蚊を見つけたら、「やっぱり、この音は蚊だった!」と、頭の中のミニチュアが正しかったことがわかります。

でも、もしその音の正体が、実は隣で寝ている人のいびきだったとしたら?「あれ? なんだ、蚊じゃなかったのか!」となって、今度は頭の中のミニチュアを作りかえることになります。

こんなふうに、私たちはまわりの様子を見て、それが正しいのかどうかをいつもアップデートしながら生きているんですね。そして、もし「予想」と「外の世界」にズレがあったとき、
❶ 頭の中のミニチュアを作りかえるか
❷ さらにヒントを探しにいくか
のどちらかを選ぶ仕組みになっているんです。これが能動的推論です。
たぶん。

こんな感じ?

記号化ってなんだろう?

では、この「能動的推論」という考え方と、「記号化」はどうつなげられるんでしょうか。

記号化とは、たくさんの情報をギュッとまとめて、わかりやすくすることです。たとえば、「営業」「経営層」「A社」といった言葉を聞くと、それぞれの役割や特徴がパッと頭に浮かぶ。これは、言葉が記号のようなはたらきをしているからです。

このおかげで、話をするときに、いちいち細かい説明をしなくても伝わるので、とても便利です。でも、その一方で、「こういうものだ」と決めつけてしまいやすい、という問題もあります。これがステレオタイプ思い込みにつながることがありますよね。

たとえば、会社の中では、こんな言葉がよく使われます。

  • 「経営は現場をわかっていない」

  • 「営業はこういうタイプの人が多い」

  • 「あの人は〇〇な性格だから、きっとこう考えているはず」

こうした言葉は、ただの意見のように見えますが、実は私たちの頭の中のミニチュア(内的モデル)の一部になっています。そして、この内的モデルを使って、私たちは日々、物事を予測しながら判断しているのです。


記号化がグループの分かれ目を作るしくみ

ここで、「記号化」がどのようにしてグループの中の分かれ目(分断)を生んでしまうのかを考えてみましょう。

たとえば、会社の経営層が、「これからは、会社全体で勉強やスキルアップを大事にします!」と発表したとします。このとき、働いている現場の方が「えらい人たちは、現場のことを分かっていない」と思っていたら、どうなるでしょう?

「なるほど、つまり『お前らはまだまだ勉強が足りない!』って言いたいんだろうな。。現場の忙しさなんて何も分かってないくせに。。。」

こんなふうに思ってしまう人もいるかもしれません。

でも、経営層は本当は、「これからの会社には人的資本経営・組織が強くなることが大事だし、現場が楽しく成長できる環境じゃないと退職者が出てしまう。もっとみんなが疲弊するのは避けたい…!」と考えているかもしれません。

ただ、働く人の頭の中にあるイメージ(内的モデル)が「えらい人たちは、現場を知らずに押し付けてくる人」となっていると、その考えにはなかなか気づけません。その結果、話し合いをしても、心の中ではお互いに分かれてしまう(分断が生まれる)ことになります。

これは、会社どうしが合併するときにもよく見られます。たとえば、

A社の人「B社は、のんびりしすぎて、甘い会社だ。」
B社の人「A社は、いつも上からの命令が強くて、軍隊みたいな会社だ。」

こうした「決めつけ」が先にあると、お互いの行動や言葉を「やっぱりそういう会社なんだ」と思いこみ、どんどんそのイメージを強くしてしまいます。もし、「A社の人がフラットに話し合っている場面」があったとしても、「いや、たまたまだろう」と見なかったことにしたり、自分に都合のいいように解釈したりしてしまうのです。

さらに、この分かれ目がもっと強くなってしまう理由のひとつに、「自分にとって都合のいい情報だけを集める」という人間のクセがあります。たとえば、

「えらい人が『現場の人はそんなに忙しくないよね』って言ってたらしいよ」(本当は、年の閑散期で仕事が今は落ち着いている時期かな?と聞いただけ)
「A社の社員は、えらい人にお酒をついでいたらしいよ。」
(A社の社員の中でも、もともとの同期で戯れていただけ)

こんなうわさが広がると、本当はちがう意味だったとしても、「やっぱりそうなんだ!」と信じこんでしまうことがよくあります。こうやって、「相手はこういう人たちだ」と思いこんでしまうと、どんどんグループの間に分かれ目ができてしまうのです。


どうすれば分かれた気持ちをなくせるのか?

気持ちのすれちがいをなくすには、「〇〇って、ほんとうにそうなのかな?」ともう一度考えてみることが大事です。そして、一番早い方法は、おたがいに直接話をして、相手の事情を聞いてみること。これが、一番シンプルで手っ取り早いやり方かなと思っています。

でも、実際には、そんなに簡単じゃないですよね。人は気持ちのある生きものだから、「なんか気に入らないな…」と思ったら、もう話したくなくなることもあるし、「どうせ話してもムダだ」と思うこともあります。それに、もともとの関係がむずかしかったり、上の立場の人と下の立場の人という関係があると、なかなか言いたいことを言えないこともあります。

だからこそ、話しやすい場を作ることが大事で。たとえば、だれかが中立の立場でそばにいてくれたり、話すときのグランドルールみたいなものを決めたりするだけでも、おたがいに話しやすくなります。ちゃんと考えられた場で話し合うことで、気持ちのすれちがいを少しずつなくしていけるんじゃないかなと考えています。


まとめ

これまで組織の分断に関する相談を受けてきましたが、1対1で話してみて「悪い人」に出会ったことはほとんどありません。本当に、それぞれの立場や事情、見えている景色が違うだけなケースが圧倒的多数。

しかし、集団になると、記号化が働き、相手の姿を固定化して推測してしまうことがあります。人間にとって、言葉は強力なツールですが、それが記号となり、分断を生んでしまうこともあります。

だからこそ、一度立ち止まり、「この内的モデル、本当に正しいのかな?」と考えてみることも大切。

もし「ぶーん…」と音が聞こえたら、焦らずにちゃんと確かめてから叩きましょう。誤解して隣の人を叩いてしまったらそれこそ、取り返しのつかない分断が生まれてしまいますからね!(は?)

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