建築設計海外転職記 #0 : はじめに
0-1. はじめに
ニューヨークで建築設計を仕事にして生活している日本人です。
動機は何であれ、「外国で働いてみたい」日本で生まれ育った方の中には、一度はそう漠然と考えたことがある人も多いのではないでしょうか。私自身、幼い頃から洋楽や洋画をきっかけに漠然と憧れがありつつ、想像していなかった形で転職で渡米することとなりました。建築設計であれば、海外留学の延長で就職、あるいはゼネコンの海外駐在で滞在するというキャリアはよく聞きますが、日本から転職で外国へ、というのは中々珍しいのではないでしょうか。
とりわけ日本語では全くといっていいほど情報のない中、自力で書類作成、応募をし、面接までこぎつけ、最終的にオファーまで辿り着きました。その後にも様々なコンディションの交渉、端的にいうと給与交渉が待っていました。アメリカに住んでいる友人に相談しながら交渉を行い、双方で合意に至り今に至ります。正直、大変でした。思い返すと中々珍しい経験をしているので、自分の経験が何かの参考になればとの思いで、体験を書き記すことにしました。
*なお、日本より海外で働く方がいい、日本より外国の建築の方が優れているなどと考えているわけでは全く無く、一つのキャリアの選び方として海外就職もいいのでは、と思っている立場です。日本での生活、勤務も素晴らしいと思います。
0-2. プロフィール
平成生まれ、国内の国立大学・大学院卒(意匠設計)。大学院在籍中にヨーロッパにてインターン(*こちらについてもその内記憶を頼りに書こうと思います)を経験。帰国し大学院修了の後、東京の設計事務所で7年半勤務。一級建築士。英語は大学院入試のときでTOEIC840でした。
国内で勤務していた際には、海外インターンの経験もあり、日本語・英語の両方を使う案件にアサインされることが多く、ビジネス英語力の向上には役立ったと思います。
0-3. きっかけ
国内の設計事務所では非常に充実した時間を過ごせました。もちろん、ひじょうにハードな日々を過ごしましたが、上司やチームメイトにも恵まれ、楽しく過ごしていました。7年目を過ぎた頃から会社の体制が変わり、雰囲気が変わり始めたことをきっかけに、かつてのモチベーションを保てない自分がいることに気づきました。「一度しかない人生だから、何か新しいことにチャレンジしたい」そう思い、昔からぼんやりと憧れていた海外勤務に挑戦しようと思ったという流れです。
0-4. 実際働いて思うこと
まず、待遇が全く違います。もちろん生活費、物価が全く違うので一概に生活のレベルが上がったわけではありませんが、今のレートで日本円で比較すると額面で2.5倍程度(ボーナス含まず)、手取りだと3倍近くになります。
また、引越し費用、ビザ取得費用など、日本円にして合計200万円弱は会社からサポートしてもらっています。更には自分や家族の健康保険(詳細は省きますが、アメリカには国民保険がなく、高額な医療費が問題になっています)も会社負担です。(眼科、歯科保険は若干の自己負担で任意加入可能)こうした引越し補助や福利厚生、Relocation Package や Benefit Package と呼ばれる内容ですが、これらはポジションや会社によりますし、交渉次第と思います。
働き方も、時期によりけりですが労働時間は日本に比べると短いです。集中して作業を行い、効率的に打ち合わせをして切り上げる印象です。東京で勤務していた際は、意味があるのかないのかよくわからない出張や外出に出ていたり、側から見ると無駄な打ち合わせや電話に追われ設計業務に集中できない人が多かった印象ですが、こちらの人は効率的に勤務している印象があります。
そして何よりも毎日楽しいです。とくにニューヨークという街にいると、本当に色々な文化や人、つまり多様性に触れることができます。働く国や街によって感じ方は変わるかもしれませんが、相対的に日本の文化や慣習を見つめる機会になり、様々な側面に違いを見出すことが多く、刺激になります。
次回は、求人の探し方など、具体的なステップについて書こうと思います。
続編はこちら↓
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