茶品種 おくゆたか
優雅で豊かな香気とまろやかな滋味
強い旨みとコクは玄人好み
「おくゆたか」は、やぶきたより6日前後遅い中晩生種。煎茶としてやぶきたと異なった優雅な香気を持ち品質は優良です。まろやかな口当たりの中に、強い甘みと旨みがあり、その豊かな風味は高級茶のブレンドにも使用されることがあります。煎茶用品種として登録されましたが、遮光下でも芽の育成が良いため、かぶせ茶、玉露、てん茶など用途が広がっています。
「おくゆたか」は、「ゆたかみどり」と「F1NN8」の掛け合わせにより生まれました。「ゆたかみどり」は、味わいが濃く、鮮やかな緑色を持つ品種です。「F1NN8」は、品種登録されていないため番号です。
特有の特徴を持つ個体「F1NN8」
「F1NN8」は、品種改良の過程で交配によって得られた特有の特徴を持つ個体種です。番号で管理されています。「おくゆたか」の親が「F1NN8」であるように、番号で管理された個体種は新しい品種を生み出すために、その特性が使われることがあります。「F1NN8」は、品種として正式に登録されていませんが、そのすぐれた特性が生かされて、「おくゆたか」が生まれました。「F1」は、交配後の第一世代を示し、「NN8」はその中で選抜された個体の番号を表しています。多くの個体が番号で管理されますが、その中で品種登録されるのはごく一部です。
このように、お茶は様々な特性(個体種)が番号で管理されているのですね。
小さく丁寧に作られている品種「おくゆたか」
「おくゆたか」は、主に、特定の時期に集中して高品質な茶を生産することに特化した小規模な茶工場で作られています。「おくゆたか」は収穫時期が短いため、大規模な茶工場では作られません。限られた期間に集中して収穫・加工を行う必要があり、大規模な茶工場では、生産計画や品質管理が困難なためです。それゆえに、全国的に生産量が少ない品種です。
小さく作られていることも、玄人好みの品種らしい作られ方ですね。
現在は、主に九州で生産されている深蒸しの「おくゆたか」
「おくゆたか」は、静岡県の茶業試験場(現在の静岡県農業技術研究センター)で静岡県で生まれた品種で、1983年に品種登録されました。静岡県の気候と土壌に適した品種として開発されましたが、後に九州でも栽培されるようになり、現在では九州地方での生産が多くなっています。「おくゆたか」の多くが深蒸し茶として多く流通されている理由のひとつに、九州での生産量が多いことが関係しています。九州地方では、深蒸し製法が盛んで、九州の気候風土に適した製法として定着しています。
静岡県産の「おくゆたか」
一方で、静岡でも一定の品質を誇る「おくゆたか」が生産されています。地域ごとの特性を生かした栽培、製法が行われていますが、今回ご紹介する、静岡県産の中蒸し製法の「おくゆたか」はなかなか珍しいと思います。
深蒸しでは得られない、「おくゆたか」の潜在的な美味しさをお楽しみいただけると思います。「おくゆたか」特有の甘みや旨みが引き出され、濃厚で豊かな風味の中に、軽やかさもある味わいがお楽しみいただけます。
玄人好みのお茶の時間
「おくゆたか」は玄人好みの品種と言われています。単純な味わいではなく、甘み、旨み、渋み、苦みが複雑に豊かな風味を醸すため、茶の旨みをしっかり感じ取ることができる人にとっては魅力的な品種だからでしょう。ゆっくりとしたお茶の時間におすすめです。
今回は、茶の旨みをしっかり感じ取りながら楽しむいれ方をご紹介したいと思います。
小さな一煎めと、たっぷりの二煎め
一煎めと、二煎めのお茶を2つの器でいただきます。
今回は、2つの湯のみにお茶をいれます。
小さなお茶のカップには、ぐい呑みを利用すると良いでしょう。
一煎めは、「おくゆたか」の旨みが堪能できます。少量の小さなお茶です。
二煎めは、普通サイズの湯のみでどうぞ。
一煎めと飲み比べながら楽しむと、「おくゆたか」の品種特徴がよくおわかりいただけると思います。
※準備:ポットに沸かした熱湯を詰めておきましょう。
だいぶ前になりますが、市内の日本茶喫茶でお茶を注文したときのこと。
お盆の上には、お店の人がいれてくださった、一煎めの小さなお茶、一煎めをいれた後の急須と、ポット、普通サイズの湯のみがセットされていました。「二煎め以降はご自分でいれてお楽しみください」と、二煎めのいれ方を書いた紙が添えられていました。
まずはお店の方がいれてくださった一煎めのお茶で癒されました。その後、お互いに自分のタイミングで二煎め以降のお茶をいれながら、会話もはずみ、ゆっくりと良い時間を過ごすことができたのを覚えています。
ご一緒した東京のお客様が、「さすが静岡!お茶に対する愛情が感じられた。」と、喜んでいました。茶どころ静岡人にとってはうれしいお言葉でした。
今回は、そのお店で過ごしたお茶の時間を思い出して、このようないれ方をご紹介させていただきました。「おくゆたか」は、ゆったり過ごすお茶の時間にピッタリです。
「おくゆかた」のお茶うけには水ようかんを合わせてみました。
日本茶の伝統を感じさせてくれるような奥深い味わい、という印象の「おくゆたか」。だから、伝統的な和菓子を合わせたくなるのでしょうか。
すっきりとした甘みの水ようかんはピッタリでした。
ポットと急須を添えて、
T&G.の茶葉は、3煎め以降も楽しむことができます。
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