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戦力外通告2021:荒木郁也(阪神)《プロ野球コラム》
著 T-Akagi
今季、個人的に去就を注目していた選手が「荒木郁也」選手だった。
主に内野のリザーブとしてスポット起用されてきた荒木選手。
そのプロ生活を簡単に振り返りたいと思う。
2010年にドラフト5位で阪神タイガースに入団。
当時のショートには不動のレギュラー鳥谷敬がいた為、入団時から主にセカンドで勝負していく事となった。
しかし、セカンドにも関本賢太郎からレギュラーの座を奪った平野恵一や、若手有望株の大和が起用されていた。
大学時代、ショート・セカンドの両方でベストナインを獲得していた荒木だったが、やはり分厚い二遊間の層に阻まれる形となった。
1年目は一軍出場2試合、2年目は出場なし、3年目20試合となかなか一軍に定着できない。
4年目の2014年は15試合に留まった。この年は開幕早々、西岡剛の大怪我でチャンスが回って来る可能性があった中、歳の近い上本博紀が131試合に出場して出番はほとんど回って来なかった。
5年目の2015年には29試合出場にとどまったのだが、5月28日の楽天戦で自身初の3安打猛打賞と2盗塁に加え、6打席6出塁の記録を打ち立てた。この試合の記録は鮮明に残っている。
転機というのか、チャンスが最大まで膨れ上がったのは間違いなく翌2016年、金本新監督になった初年度であった。
この年の前半戦、チームは信じられないほどの低迷を続けた。
要因は様々であったが、鳥谷敬の不振と西岡剛のアキレス腱断裂による離脱が非常に大きかった。代わりに起用されると思われていた上本も6月に腰痛で離脱していた。
後半戦早々に二遊間が絶対的レギュラーが不在に近い形となった。
この時、荒木の名前を挙げる人もいた。私自身も荒木選手のセカンド起用を期待していました。
しかし、スタメンは18試合にとどまり、結局は守備面で抜きん出ている大和がセカンド守る事が多かった。ショートは鳥谷に代わって、北條史也がアピールを続けていた。
この後の彼のキャリアを考えると、この年にもっとアピール出来ていたら、全く違う形の未来が待っていたのかもしれない。
そして、2017年はキャリアハイの49試合に出場したものの、二遊間での起用はなく、主にファーストの守備固めと代走での起用となり、勝負強さが売りの打撃も鳴りをひそめた。
翌2018年には、大山悠輔・糸原健斗・植田海らが活躍し始め、一軍出場はなし。
2019年には、ルーキー木浪が北條とレギュラー争いを繰り広げ、セカンドには糸原が完全に定着し、やはり二遊間での起用はなかった。
2020年は、コロナ感染者の代役としてスタメンで出場。実に4年ぶりの先発出場で合った。
そして、翌2021年は一軍での出場がなく、戦力外通告を受け自由契約となった。
トライアウトを受けたが、未だ声はかかっていない。
という事で、今季を以って阪神タイガースを退団する運びになった。
セカンドのレギュラーが毎年変わった10年はなかったと言える2010年代。
一ファンである僕の中で、『期待していた3人の選手』がいた。
上本博紀、北條史也、そして荒木郁也選手だった。
三人に共通して言えるのは、私自身がその勝負強さの片鱗を球場で目撃した事だ。
そして、野球に関して言えば決して器用な方ではない三人なのだ。
プレー面では穴も多い。しかし、面白い特徴があって、まっすぐ野球に取り組んでいる姿が見て取れた。
どこでも守れるし、足も速い。中でも走塁は非常に上手い。
荒木選手は、もし私自らが指揮を振るうとしたら、絶対にベンチに置いておきたい選手だ。
最期に、荒木選手は起用法に泣いた選手の一人なのだと思っている。
どの時期も、荒木選手よりも半歩先に結果が出た選手がいた。それも、常にそうだった。
どこかのタイミングで、半歩先を荒木選手が歩んでいるのを見たかった。
そうすれば彼の評価は全く変わったのだと思う。
ちなみに、実物はとてもスマートでスタイルがよくかっこいい。いわゆる『ハンサム』だと思っている。
阪神タイガースファンは、荒木郁也選手がいたという事を忘れないように、どこか頭の片隅にでも刻んでおいて欲しい。どうか。