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先生、先生、埴谷雄高先生、
『ETV8特集 埴谷雄高・独白「死霊」の世界』を食い入るように観たのは1995年の事だったようですが、まさか自分が「精神のリレー」に参加することになるとは思いもよりませんでした。
未だ何も書いてはいなかった僕は、ブラウン管を通して埴谷雄高先生—先生と呼ばせてください—から直接「バトンを渡して頂いた」のだということに、その時はまったく気がつきませんでした。
それから二年の後、1997年に先生がお亡くなりになったのは、いま驚きとともに振り返るのですが、その前年に亡くなった武満徹さんのご命日の前日でありました。
その時でさえ、僕はお二人が描こうとしていた何かかが、同じ、とても大事な全ての根源であることにまったく気がついていませんでした。
ただ、何もわからず、我武者羅に何かを書こうとしていただけの僕は、異なった分野で闘い続けていらした、お二人の優れた日本の作家から手渡して頂いたものを—或いは強引に受け取りに飛び込んだのかもしれませんが—世紀をまたいで握りしめ、走り続けています。
先生、先生、埴谷雄高先生、
先生に、僕が走っているリレーのゴールを、先生が全力で駆け抜けたそのリレーのゴールを、その歴史あるバトンの輝くさまを、このリレーに参加した全ての先輩がたとご一緒になり、是非ご覧頂いて欲しかった。
そう、心から思うのです。