Hollow Suns 真摯に良質な音楽を鳴らすバンド
Hollow Suns東京のオルタナティブロックバンドである。昨日今年リリースされた力作OTHERSIDEのツアーファイナルなるを無事成功させたこの時点でHollow Sunsへの想いを綴ろうと思う。
Hollow Sunsの存在を知ったきっかけは別のnoteの記事で綴ったOtusが関係している。OtusのベースのタカシさんがHollow Sunsというハードコアでは無いバンドをサポートしているという事を知り興味を持った。Process of Losingのアルバムを聴いてみた。Waiting for the time〜Into the waterの流れで既にグッと心を掴まれた。オルタナでメロディーに哀愁があってとても良いって思った。音楽性もJROCKの旋律ではなく海外バンドの雰囲気のそれで音もダイナミック。自分はメロディックなバンドはヴォーカルが上手くて声質が自分好みじゃないと幾ら曲が良くても好きになれないからHollow Sunsのヴォーカルは凄く良い歌声で自分好みだった。
そこから気に入ってProcess of Losingを良く聴いていた。そこから暫く経ってからHollow Sunsが新譜をリリースするというニュースが飛び込んできて、なんとこのアルバムはあのWill Yipがプロデュースしたという。自分はこの頃洋楽をよく聴きあさってたからWillの事は知っていた。TURNSTILE,TITLE FIGHT,TIGERS JAW,CODE ORANGE等をプロデュースして大ヒット作を沢山輩出した名プロデューサーだ。これは凄いことだ、次回作は間違いなく良い作品になると確信した。
新作から先行して、Dry Out,Deep Downが配信されて、聴いてみたら明らかに今までと音も洗練されて楽曲の質も上がり、素晴らしくてこの2曲を繰り返し聴いていて新作への期待が高まっていった。
そして今年6月に遂に新作のOTHERSIDEが発売された。自分は先行予約してた。この作品はジャケットも素晴らしくてフィジカルで絶対手に入れたいと思っていた。聴き始めてFrom the Insideから震えた。物凄く音が良い。前作も良かったけど明らかにそれを超える音の質感。そこからDeceptionへと流れ込む。一気にダイナミックでクリアな音が迫ってくる。BONESさんの歌が素晴らしく良い。元々BONESさんは良い声だけど、更に艶やかで英語の発音も凄く良くて言葉が伝わりやすい。各パートの音がそれぞれクリアに聴こえて音の拡がりが凄い。WILL YIPがプロデュースするとここまで進化するのかと驚きと感動しきりだった。
OTHERSIDEは仏教思想三途の川をコンセプトとしていて自身のエゴを捨て去り、現世と別れて今いる場所と反対側へ到達することでより意味のある生を得ることができるという思考、苦悩、経験がテーマになっている。
音楽的にはDeceptionの様な拡がりのあるダイナミックな曲、Deep Down、Gravityの様な重厚感とフックのある曲、Namelessの様なメロディが美しいエモーショナルな曲、切ない空気感のWhen It's Overと多彩な曲が含まれているけど、一枚通して散漫になることなくバランスよく通して聴けるとても感情を動かされる素晴らしいアルバムである。
OTHERSIDEがリリースされて是非これはライヴ観たいと思ってリリース後初ライヴの下北沢シェルターのライヴに行った。この日はCastawayがゲスト。Castawayも自分は大好きなバンドで、一聴しただけでは良さが余り分かりにくいし、メロディックパンクだけど曲を知ってないと乗りにくい。いわゆる通好みのバンドで聴けば聴くほど良さが分かるスルメの様なバンド。Castawayは良曲を丁寧に演奏してしっかり伝える真摯なライヴ姿勢に毎回胸が熱くなる。
Castawayの素晴らしいライヴを観たあとに遂にHollow Sunsだ。アルバムではドラム以外全部BONESさんが演奏しているがライヴでは現メンバーが演奏するからそれも楽しみだった。この日はアルバム通りFrom the Inside〜Deception始まりだった。演奏力の高いメンバーが集まってるからOTHERSIDEの楽曲の良さを引き出していて始まった瞬間にHollow Sunsってライヴも最高じゃないかって思った。タカシさんはOtusばりのバキバキのベース鳴らしててそれも凄く良かった。Deep Downのベースなんてたまらなかったよね。コウさんとはこのライヴで初めて会って、そこからungulates知って今やコウさんのサポートするバンド、ungulatesのバンドも大好きだから出会いって大切だなって思ってる。アユムさんはBBSTREETの店長さんで何回かホロサンのライヴ行ってるうちに覚えてくれたみたいでアユムさんから声掛けてくれることもしばしばで笑顔が素敵なとても良い方だ。
BONESさんのヴォーカルはライヴでも抜群に良くて、ああこの声本当に好みだなあって再確認した。このライヴを終えた後、Hollow Sunsはまたライヴ観たいなって思った。凄く良いライヴするバンドなんだって分かった。
リリース後暫くしてからHollow SunsのオフィシャルサイトにOTHERSIDEの制作日記のDiary of Othersideが掲載された。どの様にしてOTHERSIDEが作られていったのか、Willとどの様にしてレコーディングを進めていったのか知りたかったので、全部最初から最後までくまなく読んだ。パンデミック真っ只中の中BONESさんは渡米してレコーディングに臨んでいた。最初は数々の名作を生み出したWillのスタジオにいることやそこにある数々の機材に興奮しているBONESさんだったけど、肝入りの自信のある曲がボツを食らってダメ出しを受けて凹んだBONESさんさぞかし悔しかっただろうと思う。
最初はWillとの作業にテンションが上がり、どんどんアルバムが出来ていく過程が楽しくて仕方がないBONESさんだった。しかしギター撮りになってからWillからOKが出ずにイントロだけで2時間弾き続けて、終わった頃には精神ボロボロになったらしい。そんなに厳しいんかと自分はこれを読んだ時に驚いた。
それを超える過酷なのが歌撮りだったのが読んで分かった。発音、音程、タイミングが合わないとWillはすぐにNG出してやり直しになるらしい。だから何回も歌い直したらしい。やってもやっても終わらない何百回と歌い直さなければならない過酷さでBONESさんは心身共にかなり疲弊したのが文章からも伝ってきた。やはりWill Yipの名が刻まれる音源は一切の妥協を許さないWillの強固な意志の元でレコーディングが行われるんだなと感じた。だからこそ素晴らしい作品ができるのだろうけど。
その自身との戦いを乗り越えてBONESさんは見事にOTHERSIDEを完成させた。このインタビューを読んでからOTHERSIDEを聴くと作品の重さが前よりも深く感じられた。
OTHERSIDEがどの様にして出来上がっていったのかこのDiaryを読むとよく分かるから最初から最後まで是非読んでほしい。
OTHERSIDEのツアーは余り行けなかったけど、Country Yardとのツーマン見に行ったのはとても意義のあるものだった。自分は埼玉住みなんだけど地元埼玉の熊谷ヘヴンズに自分の好きなバンドが来てくれるのは嬉しいものである。
Country Yardはステップアップ時代の初期から好きだった。ピザオブデスに移籍して音楽性も初期のメロディックパンクからオルタナティブに変化して今や大人気バンドだ。カントリーがなぜホロサンとこのツアーを組んだのかをMCで言ってくれたのだが、ホロサンの様に素晴らしい音楽をやってるバンドが拡がっていない状況が残念でこういう機会でホロサンを観て気に入ってくれて周りに広めてくれたら嬉しいって言ってて、自分もこの趣旨には素晴らしいって思ったし、とても共感した。
ファイナル前のライヴは吉祥寺のサーキットイベントだった。サーキットだったけどファイナル前の最後のライヴだったからファイナルに繋げる為にメンバーも気合いが入っていてとても良いライヴをしてくれた。熊谷で観た以降にツアーで何箇所か回ってバンドの状態も更に良くなっているのを実感できた。
そして迎えた12/16渋谷O-WESTツアーファイナル。BONESさんはファイナルはO-WESTという大風呂敷広げちゃったから是非来てほしいって毎回MCで言ってて、BONESさん、アユムさん、タカシさん、コウさんも自分が出るライヴや他で観に行ったライヴ時にも出口に立ってフライヤーのビラ配りをしてたのを何回も観てきた。それだけこのファイナルはHollow Sunsにとって大事なものだった
O-WESTのデカいステージに佇むHollow Sunsは堂々としていて誇らしかった。いつもは小さなライヴハウスだけど、広いO-WESTの会場全体にも音はしっかり響き渡っていて新旧織り交ぜた1時間のロングセットはHollow Sunsの魅力を充分に伝えてた素晴らしいステージだった。
BONESさんがアルバムの中でも好きな曲やりますって演ったNamelessは聴いてたら涙が溢れた。曲自体もとても美しい曲だけど、前記したDiaryの中のセルフライナーノーツで「歌詞は自分の結婚式の日をテーマにした。初めて妻のことを歌にした。」ということを知ってたから。Diary読むと分かるけどOTHERSIDEのレコーディングにはBONESさんの奥さんも帯同して、奥さんは普段は通訳とかのお仕事をしているから、渡米中は本当に心強かっただろうし、奥さんもOTHERSIDEを一緒に作り上げたひとりに間違いないから。そんな感謝と愛情の気持ちを持ちながらNamelessを歌うBONESさんを想像すると涙なしには観られなかった。
Hollow Sunsは勢いで突っ走ってインパクトを与える派手さがある様なバンドではないけど、海外のバンドにも引けを取らない良曲を高品質なサウンドで鳴らす、とにかく良い曲を創って丁寧に演奏して届けることに集中している真摯な姿勢の素晴らしいバンドなんだ。こういう本物のロックが日本でもっと拡がって認められて欲しいって切に願っている。そんなHollow Sunsが自分は大好きなんだ。
英語でファイナルのことツイートしたらなんとWill Yipが拾ってくれてイイねしてくれた。Willに届いてとても嬉しかった。Willもファイナルの成功喜んでくれたんじゃないかなって思う。
ファイナル観に来れなかった人にもダイジェスト動画作ったので観てみて是非雰囲気を感じ取ってみてください。