恐るべし、セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー
幻の先制点 pic. by 毎日新聞
ついに始まりました、カタールワールドカップ。
豪華な開会式
まさに、豪華絢爛たる開会式だった。
特に感動的だったのは、歴代のW杯のテーマソングが流れ、歴代のマスコットたちがフィールドに踊った、その瞬間だった。
いくつもの時間がよみがえり、泣きそうになってしまった。
不名誉な「開幕戦で敗れた初めての開催国」
W杯では、開催国がA1(グループAの第一チーム)にアサインされ、オープニングマッチに登場するのが恒例になっている。
開催国は予選を免除されて本大会に参加できるので、大概の対戦国は所謂「格上」となるのだが、不思議なことに開幕戦はアップセットが、これまた恒例だった。
おそらく、初戦にピークを持ってくる開催国チームのコンディション、大応援団の声援、開催国サッカー協会の意地、いろんなものがその要因であるに違いない。
ところがところが。
今回の開催国カタールはエクアドルに2-0で、あっさり負けた。
全くいいトコロなく、エクアドルのベテラン(こちらは恒例高齢)バレンシアに2点決められた。
こんなこと、記憶にないなぁと思っていたら、やっぱりそうだった。
報道によると、開催国が開幕戦でゴールできなかったのは1970年メキシコ大会以来。
そして、開催国の開幕戦成績は、過去21大会で、16勝6分。
つまりカタールは、「開幕戦で敗れた初めての開催国」ということなってしまったようだ。
オープニングマッチで、トンでもないことが起こった!
そんなことはともかく、肝心のゲーム。
開幕戦というのは、カードとか勝敗以上に、その大会の判定の「基準」を推しはかるうえで、非常に重要なのだ。
基準というのは、新たなルールがあればその運用はどんな感じなのか、ファウルの判定はどの程度厳しいのか、そういう塩梅というかさじ加減というか、そのものさしをフィールドで確認できる、ということである。
ということで、私もそれなりに注視していたのだった。
トンでもないことというのは、今回のW杯で初導入された「セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー」のことである。
まあ、「半自動オフサイド判定技術」とでも言おうか。
何でも、ボールに仕込んだチップと18台のカメラとAIで、わずか3秒でオフサイドかどうか判定してくれるというシロモノである。
それはいきなり、前半の3分に起きた。
エクアドルの鮮やかな先制点(だったはずのプレー)が、セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー(の助言)によって、「オフサイド」と判定された。
オフサイド/オンサイドの判断は、審判の裁量ではなく自動的に判定される。
主審は、オンフィールドレビューすら経ず、VARの助言(実質的には「指示」)に従い、淡々と右手を上に上げる、ということだ。
これはすごい。
オフサイドが、「タッチライン/サイドラインを割ったかどうか」並みに淡々と判定される、ということを意味するからだ。
少しおさらいになるが、そもそもオフサイドというのは、「ゴール前にベタッと張り付いて味方からのフィードを待つのは、競技としてあまりにも安易で面白くない」という精神で導入されたものだ。
つまり、最終DFより離れる程ひどいオフサイド、ということになる(厳密に言うとオフサイドにヒドいも軽いもないのだが)。
TVで観戦している限りにおいて、このオフサイドは、ヒドいオフサイドではなかった。
何しろ、オフサイドポジションに出ていたのは、膝下だけだった。
TVの解説も、いや現場の副審でさえ、オフサイドを見逃していた。
つまり、これまでの「人の目視で運営されるサッカーの試合」では見過ごされていたレベルでの「厳格さ」で、このセミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジーというやつが最初に適用されてしまった、ということである。
何だか釈然としない。
過去のあの試合のあの疑惑のオフサイドは。。。とか、いろんなものがグルグルと頭を巡っている。
こうなると、サッカーの審判に、副審は要らんのではないか?
そんな考えもよぎる。
この大会は、トンでもないものを導入してしまった、そういう大会になるかも知れない。
でも、あれか。
延長Vゴール方式(国際的にはゴールデンゴール方式と呼ばれた)や、スローインに替わるキックインなど、試験的に導入されたけど不評をかこって廃止になったルールも沢山あったから、まあ様子を見ようか。