![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/91861047/rectangle_large_type_2_f85e76b958787a151cb8da67316cd004.jpeg?width=1200)
歴史的金星に至る数々の伏線~2022カタールW杯GL 日本2-1ドイツ
pic. by FIFA/Getty Images
アジアの伏兵日本が優勝経験国ドイツに逆転勝利の大金星を挙げた。
鮮やかな後半のギアチェンジ
こんなに、前半と後半で違うチームを、見たことがない。
ものすごく興奮した。
正直、前半のドイツは、隙がないように見えた。
DFラインでのボール回しに前田と鎌田がチェイシングするも、GKノイヤーも交えたパス交換で、いとも簡単に潜り抜けられた。
前半のドイツのボールポゼッションは、81%という驚異的数字だった。
決定的な崩しは、「日本のディフェンスをセンターに集中させた後のサイドアタック」で、特に左のラウムは、効果的なオーバーラップで、日本の右を再三切り裂きまくった。
PKの直接原因は確かに権田なんだけど、それ以前に、フリーでラウムの侵入を許した時点で、もう失点モノのミスだった。
ただ、日本はその後のドイツの攻撃にも耐え、僅か1点のビハインドでハーフタイムを迎える。
後半。森保監督は、システムを変更する。
前半は戦い慣れた、4-2-3-1 のシステム。
![](https://assets.st-note.com/img/1669266013735-GpNo4gZ4TF.jpg)
後半は、3-4-3。
![](https://assets.st-note.com/img/1669277800231-fXWi3dqWh1.jpg)
前半と後半で、どれほど劇的にシステムを変えたか、よく解る。
鎌田がトップ下から、ボランチの位置に1列下がる。
伊東、三苫のウィングバックは、守備時はディフェンスラインとともに5バックを形成し、攻撃時はFWの位置まで上がって5人で攻める。
左サイドのオーバーラップも5バックが受け止め、日本は息を吹き返す。
前線からのプレスも、枚数多く嵌めに行ったことで、機能を取り戻す。
いつ獲られてもおかしくないドイツの猛攻を、権田の神がかり4連続セーブ、遠藤の鬼デュエルなど、耐えに耐えた。
こうなるとサッカーの女神は、日本に味方してくれる。
最後の交代カードを切った直後、歓喜の同点ゴールが生まれる。
冨安が左サイドの三苫にフィード
三苫がドリブルで切り込み、南野に縦スルーパス
南野は左足ダイレクトで、シュート性のセンタリング
浅野がファーで詰める
GKノイヤーがニアでセンタリングを弾く
堂安が詰めてフィニッシュ
という見事な連携で、ドイツをチンチンに崩しきった結果だった。
後半の交代全選手が絡んだ点でも、森保采配がズバリ当たったといえる。
![](https://assets.st-note.com/img/1669273816857-caIar88FoA.jpg)
複数の戦術を使いこなし掴んだ逆転勝利
これまで日本は、残念ながら1つの戦術しか持たず、最後は根性論や精神論まで持ち出すも、結局は強豪国に「当たって砕け」続けてきた。
まあ言ってみれば、所詮「戦術的に無垢でナイーブな田舎の青年」という感じであった。
ところが最近は、世界の強豪国でさえ(あるいは強豪国だからこそ、なのかもしれないが)複数の戦術を準備し、相手チームの出方に応じて試合中に柔軟に戦術変更することが、当たり前になっている。
しかし、簡単に戦術変更というが、
戦術的に、複数システムをオプションとして準備
テストマッチ・予選など実戦を通じた、戦術の実践的落し込みとチーム理解徹底
相手戦術に対応した、早めの手当て(と迷いない采配)
鎌田のユーティリティさとスタミナ
両ウィングバック三苫、伊東の豊富な運動量
これらの、どの一つが欠けても、後半の戦術は機能しなかったハズだ。
まさに、鳥肌モノだった。
W杯で4度のチャンピオン経験国に勝つ、それも前半のビハインドをひっくり返して逆転勝利するためには、周到な準備があった。
それが結実した映像を目の当たりにして、私は「氷山の海面下の部分」の大きさを、俄かに、しかし、確かに悟ったのだ。
ちなみに、W杯本大会で日本が逆転勝利したのは、この試合が初めてのことだ。
逆転負けは、2006年のオーストラリア戦やら2014年のコートジボアール戦やら2018年のベルギー戦やら、たくさんあるのだが。
その点でも、非常に感慨深い。
この試合日本は、余計なイエローカードを1枚ももらっていない。
酒井や冨安の怪我が心配ではあるが、その代償を払っても余りある成果を、日本は第1戦で手に入れた。
喉から手が出るほど欲しかった「勝点3」である。
さて、これでグループリーグ突破のための展望が、大きく開いた。
コスタリカ戦では、勝点3獲得し一気にグループリーグ突破を決めてもいいし、極端に言えば、消耗激しい遠藤や鎌田などの主力をターンオーバさせるオプションも取り得る。
いずれにせよ、次戦(日曜)まで、ルンルン気分で過ごせるのである!