アルージ・アフタブ, Arooj Aftab "Vulture Prince"
パキスタン出身でニューヨークを拠点に活躍しているという女性シンガー・ソングライターのアルージ・アフタブ、初めて聞いたのはつい最近だと思う。
今年の Coke Studio Pakistan Season 14 で、Asfar Hussain とのデュエットのライブ演奏がなかなかよかった。
失ってしまった恋愛を二人で切なくしっとりと歌い上げていて、アルージ・アフタブの内省的で浮遊するような声がぴったりと合っている。
2021年末の NPR の tiny desk <Home> concerts では2021年のアルバム "Virtual Prince"から3曲をライブ演奏している。バイオリン、ギター、ベース or シンセとハープという編成をバックに、透明な中にややスモーキーで浮遊感がたっぷりの声で音楽を紡いでいく。
ブルックリンのアパートだろうか雰囲気たっぷりだ。ワインをおいた小さな机が洒落ていて目を引く。
このアルバム "Vulture Prince" は2022年のグラミーを受賞したということだ。全編、同じ雰囲気の音楽で統一されていて、このような幻想的な音世界に浸る時間が欲しいと思えば、とてもよい。
今年になって、シタールのAnoushka Shankar (アヌーシュカ・シャンカル) (*1) との共演 Udhero Na (Visualizer) が加わった delux 版もリリースされている。
シタールの演奏が加わることで、インド・パキスタンあたりの雰囲気が加わるが、自分自身の作り出す音楽の世界は微動だにしないという感じがして好ましい。
Spotifyでは、もう一枚、2018年のアルバムを聴くことができる。"Siren Islands"というタイトルで、明確なメロディや刻むリズムなどはなく、シンセを中心に幻想的な音と彼女のボーカルを重ねて流れていく音づくりで、4曲で49分弱ではあるが、少々退屈する向きもあるかもしれない。
当時のライブ動画も、なかなか悪くない。
そういえば、"Vulture Prince" の2曲目に収録されている "Diya Hai"は、私の大好きなブラジルの女流ギタリスト、バジ・アサドとも共演していて、ビデオクリップで見ることができる。
バジ・アサドが、弦の中央あたり、つまり12フレットのあたりだろうか、棒を弦とネックの間に挟んで両側をつま弾く、珍しい弾き方をしている。
今日、こうして紹介した曲はどれも同じような雰囲気の曲ばかりになってしまったかもしれない。なかなか聴いたことのない音ではあるし、とても面白く楽しめるのだが、すでに完成してしまったかのような雰囲気もある。
これからどんな音楽を作っていってくれるのだろうか。なかなか楽しみだ。
■ 注記
(*1) Anoushka Shankar (アヌーシュカ・シャンカル) は、世界的に有名なシタール奏者のラヴィ・シャンカルの娘で、ノラ・ジョーンズと異母姉妹だ。
去年のライブだろうか、次のライブビデオが、1時間20分と、ちょっと長いけれどもなかなかいい感じだ。チェロやベース、ピアノといった楽器との組み合わせにボーカルも入って、なかなかこれまでにない、でもどこかで聞いたことがある、そんな感じのアンサンブルだ。ゆったりとした導入から次第にテンポが速くなりエキサイティングに盛り上がっていくいつもの展開もいい。
伝統を大事にして良さを生かしながらも大胆に新しい要素を取り入れていく、そんなダイナミズムを感じるライブだ。
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バジ・アサド、ぞっこんである。
パキスタンのミュージシャンといえば、カッワリーのこの人。
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