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美しいと認識する力・9:バレエ「コッペリア」

昨日 (2023年10月15日)に、去年・一昨年に引き続いてバレリーナの友人がダンススクールの発表会に出演するということで、見に行ってきた。今年の演目は「コッペリア」だ。

今回も予習は万全である。イギリスのロイヤル・オペラ・ハウスの DVD を 1か月前にAmazon で購入し、何度か鑑賞した。

Royal House Opera Coppelia
ヒロインのスワニルダが、マリアネラ・ヌニェス、相手方のフランツがワディム・ムンタギロフ、人形を作る職人の Dr. コッペリウスが、ゲイリー・エイビス、人形のコッペリアが、アシュレイ・ディーンという布陣。

筋書きを紹介しておこう。

コッペリアはコッペリウスが作った人形である。あまりによく出来ていて、美しいその姿に、みな人間の少女だと思いこむ。スワニルダの婚約者のフランツもコッペリアを一目見て恋に落ち、スワニルダと喧嘩になる。コッペリウスが一杯飲もうと家を出たときに鍵を落としてしまうが、それを見つけたスワニルダは友達たちとコッペリウスの家へ忍び込む。

スワニルダと友達たちは、いろいろ試すうちにコッペリアが人形であることに気付く。そしてすっかり安心した彼女たちは部屋にあるほかの人形を動かしていたずらをするが、そこにコッペリウスが帰って来て、追い出されてしまう。

そこにコッペリアに一目会おうと、フランツが忍び込んでくる。コッペリウスはフランツをとっちめようとするが、あることを思いつく。それはフランツに薬をしこんだ酒を飲ませて意識を失わせ、魂を抜き取ってコッペリアへ命を吹き込もうという算段だ。

実は、逃げ遅れたスワニルダはコッペリアに扮していた。魂が吹き込まれた人形の風を装い、コッペリウスをうまくだまして演技し、最後には正体を現し、フランツを起こし、コッペリウスの館から二人で首尾よく逃げ出す。

かわいそうなのはコッペリウス、すっかり人形然となったコッペリアを抱きかかえて嘆き悲しむのだった。

最後の幕は、スワニルダとフランツが幸せに結ばれ、結婚を祝って、村の人たちとともに踊り、コッペリウスも祝いのおこぼれをあずかり、めでたしめでたし。

ポーランドとハンガリーの伝統的な舞踏をとりいれた音楽や踊りも親しみやすく楽しくていいし、場面場面、踊りやパントマイムがわかりやすくぴったりとはまっていてわかりやすい。曲芸のような見せ場はほとんどないが楽しめる。


今回の発表会では、最後にコッペリウスが着飾ったコッペリアを祝賀にわく広場に連れ出し、二人で踊る場面が設けられた。教室を主宰する二人の先生が見事なパ・ド・ドゥで魅せた。

演出・振付は、教室の生徒たちにそれぞれ見せ場があるように工夫されていて、毎年、感心させられる。それぞれ力量に合わせてうまく配役をしてある。ご家族や関係の人には見どころがあって顔が緩みっぱなしで拍手喝采、楽しめたことだろう。講演後のロビーではそれぞれの出演者を囲んで笑顔、おしゃべり、記念写真。私もそのなかの一人であったわけだ。

しかし、それにしてもこの発表会に向けて、出演者それぞれが皆、大変な練習を積み重ねてこのような形を作り上げたのだと思い、その費やされたエネルギーと時間を想像するとめまいを覚えた。

そして、私は時間をかけてDVDや動画を鑑賞して予習した。しかし、そんなことくらいで私が認識できる部分はほんの一部分にすぎない。

美しいものを美しいと感じさせるためには、そして、最高峰の美しさを提示するためには、途方もない努力と時間と才能が必要なのだ。そして、その美しさを認識するためにはやはり相応の努力と時間と才能が必要となる。不思議ではないだろうか。

もし客観的な美というものがあるならば、それは自己の外部にあって提示されるものであるのだろう。そしてそれはどうやらあるらしい。そのことはバレエだけでなく、音楽や絵画や芸術一般を愛する人にとっては自然なことであろう。洋の東西を問わず、長い時間を超えて生きている芸術があり、現代に生きる芸術があることから自明だと考えられる。しかし、それは個人がそれぞれ自分自身の内部に向って突き詰めていくその先にあるわけで、その意味では極めて主観的なものでもある。


ここに、主観と客観、主体と客体、見るものと見られるものとが一体となるわけだ。だから、美しいかどうかを大切にすることは、経営・マネジメントにおいて、あるいはいい仕事をするためには、つまりは世界を渡っていくうえで、とても大事なことなのだと改めて思った。


■補追

コッペリアはわかりやすい。が、上に書いたあらすじが私の筆力の問題でよくわからなかった人もいるかもしれない。
YouTubeで新国立劇場の「3分でわかる!バレエ『コッペリア』」があるので、興味ある方はみてもらうといいだろう。


また、私が購入したDVDの一部が Royal Opera House 公式からYouTubeに上がっている。感じがよくわかるだろう。

第三幕のパ・ド・ドゥ、フランツとスワニルダとの二人の踊り。

そしてフランツのソロ。やはり空中浮遊している錯覚も覚えるジャンプの高さと足の動きは驚きだ。

スワニルダのソロ。こちらは公式では上がってないようだったが、このDVDのマリアネラ・ニュネスとナターリャ・オシポワとを比較した動画があって面白い。やはり私のイチオシのオシポワは素晴らしい。

そのオシポワがスワニルダを演じるボリショイのコッペリアは全幕動画が上がっていた。そのうち見れなくなるかもしれないが、貼っておこう。

最後に、Spotifyのリンクを貼っておく。音楽だけ楽しみたい方はこちらをどうぞ。



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