火曜日しばらく雑記帳・22:ドイツのシンプル料理
私たちは空間のなかで分離するが、同様に時間の中で固定する。
ベルクソン「創造的進化」p.197
■今年 7冊目の洋書は、Brian Christian とTom Griffith の "Algorithms to Live by" を読み始めている。
現代のコンピュータやプロセッサは、単純に一つ一つの命令を順番に処理しているわけでなく、先の展開を読みながらいくつもの処理を並列に処理して処理の高速化と効率化を図っている。時には分岐やループの予測に失敗して、キャッシュに読みこんだデータが無駄になることもあれば、処理の大幅手戻りが発生することもある。しかし、それは適当にやっているわけでなく、数学的に確率と期待値を見ながら最適な動作になるようにアルゴリズムを実装している。
ということは、人間の日々の判断も、このようなアルゴリズムを応用しない手はないではないか。
例えば、家を買うときにどうするか。ピンと来た時に即決するのがよいのか、何軒か見て回った後にしたほうがよいのか、それなら、判断せずに見て回るのは何軒くらいにしとけばよいのだろうか。
あるいは、スロットマシンやパチンコで、この台はあたらないなぁと思ったら、どの時点で台を変えるのがよいのだろうか。あるいは、会社を辞めるべきか続けるべきか、どの辺で判断するのがよいのだろうか。
そんな問題意識に対して、ソーティング、キャッシュ、スケジューリング、ベイズ統計、ゲーム理論、などなど、11の項目についてそれぞれ例を用いながら、なかなか読ませる語り口だ。
こういう、教養・ハウツー・ビジネスに役立つという本は、誰にでもわかるように書かれているので、比較的読みやすいストレートな文体で、見慣れない長い単語を使わうことなく、だけれどもかっちりとした文法の文章なので、読みやすい。
しかし、やはり長い。Amazon のデータでは紙の本の長さで369ページとあって、なんとか1か月とちょいくらいで読めるかな、すらすらいけば3週間、と思っていたら、Kindleのページを繰っても繰っても読了割合の %表示 が増えない。紙の本は 1 ページに文字がぎっしりつまっているということなのだろう。だいたい下の写真の kinldeの 2ページちょいぶんが紙のページの1ページ分という勘定になっているようだ。
毎日、会社のオフィスに出社していると往復の通勤時間で読書も捗るのだが、今、一週間に1日程度なので、なかなかだ。それでも9月末には読み終えることができると思う。
偶然や確率・統計をどう取り扱うか、わからない未来に対する判断にそれらをどう生かしていくのか、なかなか興味深いところだ。
■ドイツは出張でよく行った。初めての海外出張がドイツのミュンヘンで2004年の2月だった。後から思えばドイツでよかった。こちらのつたない英語も、先方にとっては外国語、お互いに努力してコミュニケーションを図ることができた。今から思えば、あまりに未熟だったあのころの自分自身に、思い出しては地団駄踏んでいる。
直近では、2018年の10月に Ulm, Kiel, Munchen を訪ねて以来、そのうちまた行きたいものだと思っているが、今のところメドがたたない状況だ。ときおり、現地のレストランで食べたものを思い出しつつ、ドイツ風の簡単な一品を作る。
簡単なのは Eintopf (アイントプフ) 一つの鍋で作るスープ。たとえば、一昨日の日曜日に作って食べたドイツ風、レンズ豆のズッペ。
ミュンヘンといえばヴァイスヴルスト(白ソーセージ)。探せば、輸入品のほか、作っているところもあるので日本でも入手できるが、ちょっと高いので泣かされる。
9月17日から10月3日が、ミュンヘンでオクトーバーフェストとなる。去年と一昨年は中止になっていたので、3年ぶりだ。残念ながら出張のタイミングが合わなかったので、これまで体験したことがなく、そして今年も無理だ。
自給自足。日本で楽しんでおこうと思う。
■ 先週にひっかかってきた音楽をいくつか。
1.女性のジャズボーカル、Samara Joyの新しいシングル、イタリアの凄腕ギタリストパスクァーレ・グラッソをギターのバックに伸び伸びとスイングする一曲だ。
2.このところ、ずっとイタリアのジャズシーンが熱い、と思うのだけど、トランペットの Fabrizio Bosso (ファブリッツィオ・ボッソ)を聴いていた。
サックス奏者、Rosario Giuliani(ロザリオ・ジュリアーニ)もいいい。ファブリッツィオ・ボッソとの2021年のアルバム、"Connection" 元気の出るアルバムだ。オルガンが入るオーソドックスなサウンドに加えて、あたらしい風を感じるのがいい。
先週からよく聴いている。
3.オルガンといえば、名手、ジョーイ・デフランセスコが8月25日に天国に旅立ってしまった。
ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエル、ほか多くの私が愛しているミュージシャンと共演しているし、レイ・チャールズやベット・ミドラーとも共演している。選曲は難しいが、私はやはり、パット・マルティーノとの演奏をあげたい。
パット・マルティーノについては、つぎの記事で詳しめに書いたことがある。
R.I.P.
4.ポーランドのジャズ・ピアニスト、Marcin Wasilewski(マルチン・ボシレフスキ)もよかった。ECM で、ベースとドラムスのトリオ演奏を基本にしている。
2008年のアルバムはジャケ写も美しい。
2021年の "En attendant"
5.マレーシアの歌姫、シティ・ヌールハリザの新曲のシングル "Sama-Sama" がリリースされた。映画のサウンドトラックのようだが、力強く美しい明るい声でしっとりと歌い上げる。
万人に聴いてほしい。
■首都圏は、先週の土曜日に夏の日差しと気温が戻ったものの、その後ぐっと気温が下がってきてだいぶん過ごしやすくなってきた。夜には秋の虫の声も聞こえてくるようになり、天気がぐずついた日が続くものの、季節の移り変わりを感じているところだ。
先週の木曜日のオーネット・コールマンへの愛を語った記事は、比較的よく読まれたようだ。やっぱり、意外に好きな人も多いのだな、と実感。ただ、いまだに文末がしっくりこないので、パンチラインはそのままに、ちょこちょこと書き直したりしている。
権威と自由、形式、情報、コンセプトの共有、多くの人を巻き込み動かす力、そんなことをあれこれぼんやり考えながらうまくまとまらないままだ。
オーネットの音楽を聴くのにそんなことを考える必要はないのだけれども。