秋の夜長に 4:トゥーツ・シールマンス Toots Thielemans "Ne Me Quitte Pas" 「行かないで」
トゥーツ・シールマンスが好きで昔からよく聴いている。まずはブルーゼット。
3拍子の軽快なリズムに乗って美しいメロディが口笛で演奏される。30年くらい前だろうか、来日公演に行ったことがある。もちろん、この曲は、オーディエンス全員口笛で合唱する。
エリス・レジーナとのライブ演奏がYouTubeに上がっていた。トゥーツ・シールマンスのひょうきんな表情もいい。
ギターのアドリブの旋律と口笛がユニゾンで演奏していることにも気が付くであろう。この人のギター演奏も大好きで、優しい音色で特にテクニックを誇ったりするようなところはないが、歌心あふれる演奏が最高に好きだ。というか、口笛とユニゾンで流麗なアドリブ・ソロを弾ける人は他に知らない。
そして、トゥーツ・シールマンスといえばハーモニカだ。
私は、中学生になったばかりだったと思う、1981年ごろだろうか、ポール・サイモンの1975年のアルバム "Still Crazy After All These Years" の A面の最後、"Night Games"を聴いたのがトゥーツ・シールマンスとの出会いだった。
このアルバムの中の "I Do It for Your Love" も美しい曲で、私が愛する曲のひとつだが、トゥーツ・シールマンスもライブで度々演奏していてレコーディングも残っている。
饒舌だが暗めのトーンで寂し気なニュアンスを感じさせる息使いのハーモニカは、このような哀愁に満ちたポップスの演奏がいい。ジャック・ブレルの'Ne Me Quitte Pas' 「行かないで」も好きな一曲だ。
ギターにジョー・パスを迎えてのライブ演奏、"Autumn Leaves" 「枯葉」も静かな晩にゆったりと聴ける。
トゥーツ・シールマンスは、たくさんのミュージシャンと共演している。なかでも、1969年のエリス・レジーナとの共演は伸び伸びと溌剌とした演奏で何度聴いてもいい。
2016年に94歳で天国に召されてしまったが、2012年の90歳記念ライブが YouTube に上がっていた。車椅子での演奏だが、ハーモニカの音色と旋律はまったく歳を感じさせなず、聴き惚れる演奏だ。
今日、こうしてトゥーツ・シールマンスの曲をいろいろ聴き直しながらこの記事を書いていて、開け放した窓から虫の声が聞こえる秋の夜長に仕事しているときにちょうどいい一曲を見つけた。
"Whistle While You Work" 口笛まじりで仕事する、って感じだろうか。この秋は、この曲を口ずさみながら仕事するとしよう。