シバの女王:アンジェリーク・キジョー Angelique Kidjo "Queen of Sheba"
アフリカはベナン出身のミュージシャン、アンジェリーク・キジョーについて書きそびれていた。それが先日 (2022/9/13) 、NPR の Tiny Desk Concert の記念すべき1000回目に彼女が演奏したというニュースが目にとまった。
1960年生まれで、wikipedia (アンジェリーク・キジョー - Wikipedia) によれば、デビューは1981年の "Pretty"で、その後「グラミー賞に4度ノミネートされ、米紙ガーディアンに「世界でもっとも啓発的な女性Top100」の内の一人として取り上げられた。」ということで、今はニューヨークとパリを拠点に活動しているという。
西アフリカの伝統的な音楽をもとに、泥臭さを抜いた明るいポップス色、明るい力強いボーカルが魅力だ。
1991年の "Logozo" を聞いてみよう。
2019年の "Celia" も同様にいい感じだ。
2021年のアルバム "Mother Nature" はもっとずっとポップよりで、メッセージ色が強い元気のよい曲ばかりだ。ジンバブエにルーツのアメリカ女性アーティスト・Shungudzo、ナイジェリアのYemi Alade (イェミ・アラデ)や、Burna Boy (バーナ・ボーイ)、Sampa the Great, Blue Lab Beats, Getto Boy そしてマリ発「ワールド・ミュージック」の草分け Salif Keita (サリフ・ケイタ)と共演(3 "Africa, One of a Kind")している。
南アフリカの雰囲気がある音作りの 7曲目 "Omon Oba” 、13曲目、"We have to live together, Life is so beautiful" と歌う "Flying High" が気に入っている。
つい先週、17世紀から19世紀の西アフリカを舞台にしたアメリカの映画 "The Woman King" (The Woman King - Wikipedia) のサウンドトラックで、ジェシー・ウイルソンとの共演、"Keep Rising" がリリースされた。
比較的単調でメッセージも単純な感じではあるが悪くはない。
そして、今年(2022年)にリリースされた、レバノン出身トランペッターのイブラヒム・マーロフとの共作 "Queen of Sheba" が素晴らしい。全世界の人に聴いてほしい。
1曲目 "Ahan" からノックダウンだ。不思議な感覚のノリのいいリズム、言われて初めて気が付く8分の10拍子だろうか、何度も繰り返して聴きたくなる楽しい演奏だ。
2曲目 "Eyin" は、4拍子の中に3連符が入っていると見るか、3拍子×4小節とみるか、あるいは 6/8拍子とカウントするのか、だまし絵のように複数の重なるリズムと、ボーカル、トランペットの絡みも聴きどころだ。3曲目 "Omije" は一転して哀愁ある抒情的な歌をピアノを中心にしたシンプルなバックで歌い上げる。うねるようなリズムの "Ogbo"、 意を決したかのようなくっきりとした曲構成とリズムの曲が最後キーボードのリフレインとトランペットで終わる "Alikama"、キーボードをバックに不思議な感覚の和声進行で静かに始まりながら中盤から盛り上がりを魅せる"lfe"と続く。全体を俯瞰するように一曲のなかで様々な表情でドラマティックな展開をみせる "Obinrin" で終わる。
中東とアフリカと良質なポップスとジャズをミックスしたような音作り、ドラマティックで映画を見ているようなアルバム全体の構成もいいし、声も歌も、トランペットのフレーズも音色も、すべてが物語を見事に構成しているようだ。
ネットで検索したら、いい解説があった。
どんな謎かけだったのだろうか。旧約聖書の「列王記」10章に記されているらしい。
いくらか調べたところ質問は3つだったようだが、どうなのだろう。今年中には解決しておきたい謎である。
ともあれ「シバの女王」、おすすめだ。
■関連 note 記事
"Queen of Sheba" はアン・パセオに似たテイストがあると思う。