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テナー・サックスの愛:ヌビア・ガルシア "Source"

ジャズのテナー・サックスは、なぜかしら、スピリチュアルというか神がかり、というかそんな雰囲気が漂う。いや、私があまり広くよく知らないからかもしれない。今年になってからよく聴いているテナーは、イギリスはロンドンの新進、ヌビア・ガルシアだ。

この NPR の動画を見てもわかるように堂々とした演奏、朗々と歌い上げるフレーズ、素晴らしい。

2020年のアルバムのタイトルは "Source" だ。

何かにとりつかれて狂ったように踊るエモーショナルというよりも、静かに巡礼をしているような感じ、と聞こえないだろうか。迷いがなく確信をもった静けさが、かえって秘めた熱さを感じさせる。

彼女が中心の6人組のマイシャ(Maisha)というグループも熱い。


そういえば、エモーショナルで、まるで教会のイベントのような盛り上がり、というと、カマシ・ワシントンが思い浮かぶ。こちらも気に入っていてたまに聴く。

なに言っちゃってるの、音楽はそもそも熱いものでしょ、という人も多いかもしれない。

ライブでオーディエンスも一体になって盛り上がる。拳を突き上げ、ヘッドバンギング、一緒に踊ったり、あるいは、演歌の掛け声やアイドルのコール。尊い。

イスラムの一派スーフィーの音楽を思い出す人もいるかもしれない。パキスタンのカッワリーが有名だ。私が熱心に聞いていた大学のころは、1997年に亡くなったヌスラット・ファテ・アリ・ハーンが評判でよく聴いた。2-3か月前、なぜか Spotify  のおススメで、ヌスラットの甥のラハット・ファテ・アリ・ハーンが上がってきて、懐かしく聴いた。けっこうクセになる。

脱線した。

さて、ジャズのテナーといえば、ジョン・コルトレーンだ。「至上の愛」が一番好きでよく聴く。もの思いにふけるときはいい。あまりに有名なオリジナルもいいが、ブランフォード・マルサリスのライブ盤が神憑り的で素晴らしい。

他にあまりに有名な "Giant Steps"もいいし、私は、"Impressions"が好きだ。

このあたりが、テナーといえばスピリチュアルな雰囲気、という先入観を与える決定的なアルバムだったのかもしれない。

コルトレーンは、バラードがいい。しつこいかもしれないが、秋の夜長にぴったりだ。

スタンダードの "My Favorite Things" もゆったりと落ち着いて聞けていい感じだ。


そして、マイケル・ブレッカー。2007年の1月に骨髄異形成症候群によって若くして天国に召されたが、ひょっとしたら、私は、今まで、この人のサックスのメロディを、他のどのミュージシャンの音や声よりも長く聞いているかもしれない。リーダーアルバムの枚数は10枚にも満たない、それほど多くはないものの、この人が参加しているアルバムの枚数は星の数より多いかもしれないのだ。いろいろ思いを書くといくらでも長くなるので、またいずれの機会に譲ろう。今日は、一枚のアルバムだけ選曲。

亡くなる前年の夏に録音の遺作、2008年にグラミーを受賞したアルバム だ。

パットメセニー(g)、ハービーハンコック or ブラッド・メルドー (p)、ジョン・パティトゥッチ (b) ジャック・ディジョネット(ds)のメンバーと、1曲目から全開でブリブリと吹きまくるアルバムの最後をしめるタイトル曲が "Pilgrimage," つまり「巡礼」だ。

とりとめなくなったが..。

ヌビア・ガルシア、上に紹介したアルバム "Source" の一曲目の "Pace" のライブ演奏 (The Mercury Prize 2021) が YouTube に上がっていた。同じ曲を何度も紹介するのもなんだが、4分弱、いい演奏だ。

最初に聴いたときに、単に「熱い」「エモーショナル」とか「スピリチュアル」というだけではなく、マイケル・ブレッカーと似た骨太な姿勢と迫力を感じる、と、ハッと撃たれたのだ。これから注目のミュージシャンだ。


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