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ビアンカ・ジスモンチ, デュオ・ジスブランコ:Bianca Gismonti - Duo Gisbranco - "Maria Maria"

ブラジル出身のジャズ・ミュージシャンの中で、「鬼才」といえばこの人、エグベルト・ジスモンチ(*1)だろう。もう35年前だったか、もう少し前だろうか、私が一番好きなベーシスト、チャーリー・ヘイデンのリーダー作 "Magico" で、サックスのヤン・ガンバレクとトリオで演奏しているアルバムを聴いてファンになった。

エグベルト・ジスモンチはこのアルバムで、1, 2, 4 曲目でギターを 3曲目と5曲目でピアノを弾いている。"Silence" がいちおしだが、"Bailarina" も素晴らしい。"Magico"も、"Spor"も、"Palhaco"もどれも静かで力強い美しさがある。

最近になって、エグベルトの娘さんで、ビアンカ・ジスモンチという素晴らしいピアニストがいることを知り、よく聴くようになった。

2013年のアルバム、1曲目の "Festa No Carmo" は、流れるようなメロディーとリズムよく明るくて元気のいい演奏で、魅力的だ。明るくてカラフルな音作りで、遠くで風に乗って長く伸びる笛のような音が聞こえてくる。心地よい。

アルバムがリリースされた2013年のライブの動画も上がっている。

2018年はエグベルト・ジスモンチの生誕70周年で、トリオでコンサートツアーをしていたようだ。父エグベルトゆかりの名曲の数々を演奏したということで、これも動画でいろいろ視聴することができる。

[2022/6/19 追記]
本記事のコメント欄を是非チェックいただきたい。ありがたいことに Shiomin様が、コンサート中のビアンカのMCを、日本語に訳して紹介してくださっている。それを読めば、面白さ8倍増だ。また、この後に登場する「ジスブランコ」の名前やミルトン・ナシメントについても書いてくださっているので、是非、合わせて読んでいただきたいと思う。

最近では、ブラジルのピアニスト、Claudia Castelo Branco と "Duo Gisbranco" という名のピアノデュオを組んで素晴らしいレコーディングを発表している。

2016年のライブ・アルバム "Duo Gisbranco Dez Anos" は一曲目は"Festa no Carmo" がピアノデュオで演奏される。躍動感あふれる演奏で、これもなかなかいいではないか。

粒ぞろいの曲がそろっているが、二人のピアノとボーカルのデュエットで楽しく聴ける。


2018年の"Pássaros" は、不思議な力に満ちている。

タイトル曲はゲストの男性ボーカル、セルジオ・サントスがなかなか印象的だ。他に3曲目、7曲目にも参加している。また、すべての曲がシコ・セーザルとの共作ということだ。このアルバムを聴き親しむまで知らなかったのだが、Chico César (シコ・セザール) は、1964年生まれのブラジルの個性派ミュージシャン "singer, poet, composer and songwriter. (Wikipedia Chico César)" ということで、相当に濃いルックスだ。

ゆったりとした曲と躍動感あふれる曲とうまくバラエティに富んでいるし、どの曲もエネルギッシュで、ちょっと聴きなれないタイプの曲がそろっていて楽しめるし、クセになる。

[2022/6/28 追記]
シコ・セザールとデュオ・ジスブランコのライブ、次の動画も素晴らしかったので貼っておく。


2021年の EP、女性シンガーのユリア・ヴァーガス(Julia Vargas)を迎えた小品もいい。

とにかくこの二人の演奏は楽しそうだ。

ミルトン・ナシメントの名曲、"Milagre dos Peixes" (*2)を歌ったのがこちら。

さらに、"Maria Maria"(*2) の演奏もすごくよかった。

MPB4というグループがコーラスで共演している。サムネイルの下方に写っているお年寄り(失礼)たちの4人組だと思うのだが、ちゃんと調べていないのでそれ以上のことはわからない。彼女ららしい、とても楽しそうな演奏だ。

Duo Gisbranco のアルバムは、2005年のデビューアルバムから2021年の "Pássaros (ao Vivo), homenageando Chico César" まで4枚だけのようだが、かなり活発に活動している様子が伺える。

これからも目が離せないミュージシャンだ。


■ 注記

(*1) エグベルト・ジスモンチ

10弦、12弦、14弦といったギターを超絶テクニックで弾くだけでなく、ピアノも演奏するし、作曲家としても高い評価を得ている。私は ECM の何枚かのアルバムで知ったのだが、今回、改めて調べてみて、もともとはインストよりも歌謡曲畑だったということを知った。

1944年、ブラジル・リオデジャネイロ州の田舎町カルモ (Carmo) にて、レバノン人の父とイタリア人の母との間に生まれる。彼の家族は祖父と叔父がバンドを率いている音楽一家で、彼自身も5歳の時、クラシカルピアノ、フルート、クラリネットそして音楽理論のレッスンを開始する。10歳の時セレナータが好きな母のために独学でギターを始め、後にカスタムメイドの10弦、12弦、14弦の多弦ギターや両手タッピング奏法をマスターする。
8歳の時から15年間、彼はピアノを学ぶために、ジャック・クライン (en:Jacques Klein) とアウレーリオ・シウヴェイラ (Aurélio Silveira) に師事した。1964年、彼はクラシックをウィーンで学ぶための奨学金を獲得したが、ポピュラー音楽を専攻したいと考えるようになり辞退した。

Wikipedia エグベルト・ジスモンチ

(*2) ミルトン・ナシメントの曲でどれが一番好きか、と言われたらとても迷いながら 55%くらいの確率で "Maria, Maria" を選ぶと思う。 

45%は "Travessia"。

本文中、Duo Gisbrancoのカラフルな動画を紹介した "Milagre dos Peixes" も好きな一曲だ。


他にも同じくらいいい曲が数えきれないほどたくさんある。


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