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盲目のギタリスト:田川ヒロアキ、Jeff Healey "See the Light"

布袋寅泰が紅白に出るという。初出場だということだ。そういえば、私はあまりちゃんと見ていなかったのだが、この夏の東京パラリンピックでデコトラでのバンド演奏が評判だったそうだ。そして、先月、全盲のギタリスト・田川ヒロアキを初めて知った。それまで知らなかったのは私としたことが迂闊だった

この動画の 1 分 17 秒あたりから、4 小節ほど、短いが素晴らしいソロを披露する。布袋 (*1) も「素晴らしい出会いで、もはや自分のライバルだ」と言っている

NHKのアナウンサーが「ネックを上から持って弾くんですよね。」とコメントしているとおり、変則な構えと奏法だ。クリアで太い音、深いビブラートと創造的な高速の旋律がかっこいい。YouTubeでいろいろオフィシャルの動画が上がっているし、その素晴らしい演奏を聴くことができる。


ギターがよく歌っていて聴いていて気持ちがいい。スティーヴ・ヴァイに近い感覚だろうか。

さて、盲目のポピュラー・ミュージシャンというとスティヴィー・ワンダーがすぐに思いつくだろう。また、「オンリー・ザ・ロンリー」や映画「プレティ・ウーマン」の主題歌 "Pretty Woman" でも有名なロイ・オービソンを思い出す人もいるに違いない。ロイ・オービソン (HMV - Roy Orbison プロフィール) はいい。あの深い声は一度聴いたら忘れないだろう。私は "Not Alone Anymore" が好きだ。


そして。盲目のギタリストというと、ジェフ・ヒーリーだ。この人のギターの構えは、坐って膝の上にギターを水平に置いて、そして、左手をネックの上から押えて演奏する(*2)。左手の親指の使い方が大きく異なるように見受けられるが、田川ヒロアキとジェフ・ヒーリー、よく似た奏法だ。

1988年のライブ、Dr. John on piano, Marcus Miller on bass, Omar Hakim on drums, という錚々たるメンバーを従えての演奏が YouTube にあがっていた。曲は彼の代表作のひとつ、"See The Light"だ。ジェフ・ヒーリーは力強い声もよく、歌もいい。

上に紹介した動画は、超有名ミュージシャンで固めているが、ふだんのジェフ・ヒーリーはジェフ・ヒーリー・バンドとして活動していた。バンドのメンバーの結束は固い。アルバム See the Light からもう一曲、ヒット曲 "Angel Eyes" 。

「君が、ピエロのような僕だけを見てくれるのは不思議でしょうがない。僕の言ったこと、僕がしたこと、何が君の天使の瞳を僕に向けさせたんだろう?」

ファースト・アルバムの "See The Light"は1988年リリースで擦り切れるほど聴いた。

ボブ・ディランの曲もカバーしている。私も好きなディランのアルバムの一枚 "Empire Burlesque" (*3) から "When the Night Comes Falling" がいい。

他に、ディランの "All Along the Watchtower" (見張り塔からずっと)の演奏もよい。ビートルズの、というかジョージ・ハリスンの、と言ったほうがいいか、"While My Guitar Gently Weeps" もこの人の十八番で、アルバムでもライブでもエモーショナルな素晴らしい演奏を聴かせる。

他に、スティーヴィー・レイ・ヴォーンとの共演や、エリック・クラプトンとの共演などもあるし、いろいろ楽しめる。

ジェフ・ヒーリーは1966年カナダ生まれ、1歳のときにガンにより失明、3歳でギターを持ち17歳でバンドを結成したという。See the Light は1988年リリースだから22歳のときだ。次第に体をむしばんでいくガンと闘かいながら活動を続け、2008年に遺作となる "Mess Of Blues"がリリースされる直前に亡くなったということだ。

時代もあるし音楽のテイストもシーンも違うので、違うといえば違う。時に右手のタッピングも使ってトリッキーなフレーズも作る田川ヒロアキのほうが現代的でメタルな音、ジェフ・ヒーリーのほうがよりブルージーでより暖かく歪んだ音だ。人によっては、まったく違うじゃないか、と言うかもしれない。

しかし、"See The Light" ー「君が必要だ。君が欲しい。僕の瞳の光が見えるかい?その想いが僕の瞳に輝いているのが見えるかい?」いずれ田川ヒロアキも歌うかもしれないな、と、にわか田川ファンの私は自分勝手に想像している。


田川ヒロアキ オフィシャルサイト:https://fretpiano.com/

Jeff Healey オフィシャルサイト:https://jeffhealey.com/


■ 注記

(*1) しかし、相変わらず、布袋寅泰はかっこいい。バンドブームがたけなわなころ、私はBOØWYはあまり肌に合わず熱心に聴かなかったが、布袋寅泰は好きだった。その後のソロでの活躍は好きでたまらない。ちなみにあのころ私が一推しだったバンドはバービーボーイズだ。

(*2) 奏法というか構えそのものは、スチール・ギターを知っている人にとっては目新しいものではないかもしれない。スチール・ギターといっても鉄でできたギターではない。ハワイアン音楽でよく聴くので、その音色とフレーズは聞いたことがある人が多いはずだ。

ギターを水平においてスライドを使って演奏する奏法がかなり古くからハワイで広まり、ハワイアンやカントリーでの主要楽器として発展し、エレクトリックギターを変形したような今の形になったという。(Wikipedia)

私もこれまでちゃんと知らなかったのだが、チューニングや奏法はYouTubeで検索するとすぐに出てくる。

それにしても、この関万里子氏は 84歳だという。笑顔が明るい、ゆったりした話っぷりもいいし、めちゃめちゃ分かりやすい。チャンネル登録してしまった。

昔なら埋もれてしまっただろうこういう人に出会えるのが今の時代。いい時代になったものだ。

(*3) 1983年、リズムセクションにスライ・アンド・ロビーを迎え、マーク・ノップラーのプロデュースでタイトな音づくりで衝撃的だったのが、大好きな "Infidel"。1984年のライブアルバム "Real Live"を挟んで、 1985年にリリースされたアルバムがこの "Empire Burlesque"、対照的に力の抜けた少し猥雑感があるリラックスしたアルバムだ。

ジャケ写もいいし、私はなかなか気に入っているのだが、ディランのアルバムの中では評価があまり高くないかもしれない。


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