カナリア色の月
カナリア色の月
大鳳 万
あるところに、一羽の美しいカナリアがいました。お月様の光を吸ったように綺麗な羽はとてもしなやかでしたが、その翼でお空を飛んだことはありません。カナリアは雛の頃から籠の中で育ちましたから、外のことはほとんど、何も知りませんでした。籠越しに見る窓の外の森だけがカナリアの知る外の世界でした。
それでもカナリアは毎日幸せに暮らしていました。カナリアの飼い主はとても優しいお金持ちの老人で、毎日美味しい餌と綺麗なお水をくれました。そのお礼にカナリアが歌を歌うと、嬉しそうに微笑んでくれました。
それに籠の中からでも窓の外は充分に見えます。お屋敷の周りをぐるりと囲む森はいつも穏やかで、カナリアは何も知らなくてもとても幸せでした。
ある日の夜、カナリアがいつものように仲良しのお月様に話し掛けている時でした。物陰から、シュルリと何か物音がしました。闇の中から金色の瞳がふたつ、こちらを見て笑っています。
「やぁ、何をしておいでかな。」
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