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Rain


雨が降る。

叩きつける雨の音を感じながら
曇った窓ガラスを手のひらでそっと拭い
真っ暗な夜を眺めていた。

今朝方から降り続いた雨は
まだ止む気配はない。

冷えた窓ガラスに、ゆっくりと唇を這わせ
火照った身体を少しだけ大人しくさせる。

それでも、
くべられた炎は収まりを見せず
私の心根の奥底から
身体を燃やし焦がしていく。


雨が降る。

消せないあなたの存在が
私をどんどん狂わせていく。

苦しい、苦しい。
こんなにも愛が私を苦しめるなんて。

なんの矛盾もない愛情に
支配されていく身体が
まるで操り人形のように感じる。

本当は違う。違うんだ。
私はもっとあなたを、はねのけられる。

時に鋼のように
時に刃のように
もっと私は強くなれる。

その強さと共に備わった
童のような無垢な自分と
子犬のような従順さが
私を両極から支えている。

そして
私という果実を
たわわに実らせ
大輪の花をきらびやかに主張し
私の取り巻く全てを服従させる。

それはまるで
神話のような尊さと
お伽噺のような浮遊感を持ち合わせ
誰しもを私の虜にさせてきた。

どうして、どうして。

あなたという存在が私を惑わせ
あなたという存在が私を浸食する。

もっと、こうありたい。

もっと、自分でありたい。

だのに、

あなたという存在に触れる刹那に
私は木偶の坊になってしまう。


雨が降る。

いつからだろう
あんなにも雨が嫌いだったのに
あんなにも雨を疎ましく思っていたのに

雨が私を、

私の事を救う

一筋の望みになっているなんて。

そっと包み込むように肩を抱いて
私の耳元で囁く声。

伝わる心音と温もり
香り立つベルガモットの匂いが
私を、違うなにかに変えてしまう。

囚われた心は
もう、なす術もなく
ただ静かに深い海の底へと堕ちてゆく。

そして
その沈みゆく私の身体に
あなたは篝火を灯し
じわじわと心を焦がしていく。

全てが燃え尽きる前に
あなたはそっと愛を置いていく。
誰も気付かないくらいに
そっと愛を置いていく。

その愛をくべられた私は
もう、なに一つ抗えない。
身体を支配する欲情が
私を飲み込んでいき
ただ、ただ、のぼりつめていくだけ。


雨が降る……



🔷アーティストSAGIさんの歌う
『Rain』はこちら♪



🔷別ver.の『Rain』
私とサカガミが演奏で参加した
アコースティックver.です!⬇️



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