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vol.180「デニムの話:説得力は「量」と「主観」で作られる。」
10月26日は「デニムの日」だそうです。(10・2・6の語呂から)
すこし遅れましたが、関連書籍の読後メモ。
藤原裕さん『日本人が見出したヴィンテージの価値 教養としてのデニム』
(付箋箇所より抜粋・要約)
デニムハンター=古いデニムを"発掘"する職業。昔は労働着として使われていたため、鉱山の跡地に埋もれていたり、断熱材や緩衝材として壁の隙間に押し込まれたり、先祖代々農家の倉庫に保管されたままになってたりする。買い取って、ヴィンテージ市場で売ることで利益を得る。
デニム=「サージュ・ド・ニーム(serge de nimes)」、フランス語の「ニーム産の綾織物」に由来すると言われている。ChatGPTによると「16世紀のフランスの都市 ニームで製造され、丈夫でしなやかな布地として知られ、主に労働者の衣服や農業作業着として使われた」とのこと。
太平洋戦争中、アメリカでは物資統制が行われ、デニムも廉価なボタン、内布に廃布を使用することが義務付けられた。「リーバイス」社は政府の要請に抗い、それまでよりも厚手で頑丈なデニム生地を採用した。
ゴミ同然だったデニム、スウェット、スニーカーにヴィンテージという付加価値をつけたのが80年代の日本の古着屋だった。後に価格が高騰し、自分たちが見出した美的価値を自分たちで高騰させてしまった。
ダメージデニムの用語「タテ落ち」や「ヒゲ」は海外でも通じる。
ビング・クロスビーがデニム着用を理由にホテルのチェックインを断られたことから、リーバイス社がデニムタキシードスートを特注で造ってプレゼントした。
表に見える畝(うね)が右肩上がりになっているのが右綾、生地が伸びにくい、色落ちが激しく出る。左肩上がりは左綾、織り込みの力加減がやや甘くなるため 生地が柔らかく馴染みやすい。
2000年初頭にリーバイス社のアメリカ国内工場はすべて閉鎖。
ジャパンデニム
KOJIMA DENIM(岡山県倉敷市児島)。ビッグジョン、ベティスミス、ボブソン、エドウィン(東京)。エヴィスなどヴィンテージデニムを再現した新製品のブランド。
なぜ岡山で発展したか
江戸時代から続く藍の栽培、干拓地が塩分を含んでおり米の栽培に不向き→綿花の栽培。全工程を県内で完結できる。
カイハラデニム(広島県福山市)
日本のデニム生地最大手。リーバイスヴィンテージクロージング(LVC)に採用。ユニクロとパートナーシップ。
デニムの未来(サスティナブル)
化学薬品を多用し大量の水を必要とする製造方法、環境に悪影響→水量を減らす、水の再利用、端切れの再加工、リサイクルコットン、オーガニック染料などの取り組み。
日本人バイヤーの訪問国:アメリカ、東南アジア、パキスタン、ヨーロッパ。今やヴィンテージデニムの在庫(質・量とも)は日本が世界一。
(巻末対談)
大坪洋介さん:「本を出すからには世界一の本にしよう。世界中で読まれるようバイリンガルにしよう」
吉井和哉さん:「リーバイスはゴツいっていうブランドイメージがある。だからボブ・ディランはリーを、ジョン・レノンはラングラーを穿いたのではないか」
(付箋箇所より ここまで)
2年前に買って積読のまま、先日再開してようやく完読した一冊。デニムよろしく書籍自体がデッドストックになるところでした。
読了直後の所感を備忘でメモしておきます。
◆価値は後から作られる。
"ゴミ同然"だった「誰かの着古した服」に「ヴィンテージ」「古着屋」という商品価値を作った。
ぜんぜん違うけども、捨てる部位だった内臓を料理の1ジャンルにしたり、部位(カイノミ、サンカク等)にスポットを当てるのとちょっと似ている。意味や定義を見出すことの価値の大きさ。
◆「好き」を仕事にした人。
藤原さんは元は紙の卸の会社に勤めていた。配達用トラックで移動の合間に古着屋に寄っていた。フリマやキャットストリートでの交流から、現在の会社(ベルベルジン)を紹介された。
「好きを仕事にするか 仕事を好きになるか問題」は、もちろんどちらか片方が正解ということはないけど、別のコミュニティ、没入できることを持っておくことの重要さ。
◆理解するための「切り口」。
あるジャンルをざっと理解するためには「切り口」が必要で、そのひとつが「歴史」だと思っている。歴史で順に説明されると頭に入ってきやすい。(人類の祖先の移動、食・穀物、鉄器、貨幣 等)
◆説得力は「量」と「主観」。
同じくなにかのジャンルを語るとき、説得力を持つのは、まとまった量と話題の種類。そして、実体験に裏付けられた主観だ。自分の、バランスに強弱濃淡のある意見だ。
この点は分野によらない共通の要素だ。
◆何にエネルギーをつぎ込むか。
ヴィンテージデニムを買付にいく人たちのエピソードがいくつか出てくる。スマホの無い時代、渡米して電話帳から「JEANS」や「WESTERN」とあるお店を探して、順に現地(店舗)を訪問する。車に乗っていくつかの州を数か月かけて回る。その過程で信頼関係構築できると、良い物を長くにわたって売ってもらえるようになる―。
日本で「いくつかの県をまわる」のとはわけが違うのだ。初対面の人と会話して最低限の関係を築くのは 苦手というほどではないけど、文化の違う国(治安の違い、ルール、習慣の違い)で英語でそれを繰り返しながら転々とするのは相当なハードワークだと思う。向き不向きでいえば向いていない。「じゃあ何で自分の価値を出すのですか」と考える。
◆質問の価値、フィードバックの価値。
対談で「吉井さんはデニムについていろいろと質問をしてくださるので、それがすごく勉強になっています」というくだりがあり、あぁやっぱりプロほど外部からのフィードバックに価値を感じるのだ、と納得した。
ある世界のトッププロとは当然 識見・経験値・投じた努力量(才能)に大きなギャップがあるのだけど、そのギャップがいわば"自動的に"意味を生むのだ。もちろんプロの周囲には多くの人がいるから、その中で「この人間のフィードバックは時間を取って聞こう」と思ってもらうには、結局自分に独自の価値が求められる。
綾織の右綾と左綾の違いがよく飲み込めなかった。右肩上がりか左肩上がりかの違いだけで同じなように思えるけど、糸の撚(よ)りが非線対称である以上、織り方の向きに寄って出来上がる布の形状が実はまるで違うのだ、という話なのだと思う。もうすこし検索して確認します。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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