洋楽紹介3「Delta Dawn」切ない歌詞と悲しい過去
皆様こんばんは、今回ご紹介するのはカントリーミュージックの名曲、「Delta Dawn」です。日本では「デルタの夜明け」という題名で知られています。作詞・作曲はアレックス・ハーヴィー(Alex Harvey)とラリー・コリンズ(Larry Collins)で、1971年にハーヴィー自身がレコーディングを行った後、翌年1972年にターニャ・タッカー(Tanya Tuckerが、そのさらに翌年1973年にヘレン・レディ(Helen Reddy)がそれぞれ歌ったものがリリースされ、どちらも大きな成功を収めました。
今回の曲もまだ著作権が切れていないので、歌詞の紹介をせず歌の雰囲気・背景について解説させていただきたいと思います。この歌はたくさんの歌手に歌われていますが、先ずはヘレン・レディのバージョンを貼りますので、聞きながらお読みいただけたらと思います。
雰囲気
この歌の歌詞を読んでいくとなんとも切ないものであり、思わず誰かこの人に救いを与えてあげてよ、と言いたくなる。一方、歌詞は常に「Delta dawn」ではない第三者の視点で書かれており、彼女の身の上を語った後は終始「Delta Dawn」に語り掛ける感じになっているのである。そのためメロディについてもしんみりとしているわけではなく、むしろ力強いとまで感じる。特にバックコーラスがつく一番力強い部分においては、とても華やかな感じになり、なんとなく夜明けの朝日のまぶしさのような印象を受ける。・・・いや、タイトルのせいで勝手にそう思っているだけかもしれない。
「Delta dawn」もまた私のお気に入りのドライブソングの一つであり、特にアメリカの真っ暗な夜の田舎道を走っているときに聞きたくなる気がする。暗闇に日が昇ってくる感じがするから、というのもあると思うが、なんというか、暗いほうがこの曲の雰囲気に浸りやすい感じがする。
舞台とモデル
「Delta Dawn」のモデルはこの名曲を作り出した二人のミュージシャンのうちの一人、アレックス・ハーヴィーの母であったとされる。そのため、彼らの物語を語らずしてこの歌を語ることはできないのである。
ミシシッピデルタ
この曲のモデルであるハーヴィーの母エミリーは、テネシー州南側に位置するミシシッピ州の、所謂ミシシッピデルタと呼ばれる地域の出身であった。
ミシシッピデルタは、世界でも最大級の河川の一つであるミシシッピ川流域の一部である。平地が延々と続いており、古くは綿花産業で大いに栄えていたが、経済の大部分を農業に頼り、貧困が蔓延しているのもまた事実であっった。エミリーは小作人の家族に生まれ、ハーヴィーが生まれるまでの間にテネシーへと移り住んだ。「Delta Dawn」のデルタについて、おそらくエミリーの出身地であるミシシッピデルタとみていいだろう。
テネシー州ブラウンズビル
ハーヴィーは1941年にテネシー州ブラウンズビルで生まれた。当時のブラウンズビルの人口は約1万9千人ほどで、現在より栄えていたものの決して大きい町ではなかったようだ。
やがてハーヴィーは音楽への道を進み始め、その矢先に事件が起こった。
そして1971年、アレックス・ハーヴィーが歌った「Delta Dawn」が初めて公開され、その後この曲はカントリーミュージックの名曲の一つとなった。
2回のヒット
ターニャ・タッカー
最初のレコーディングが行われた翌1972年、当時まだ13歳だったターニャ・タッカーのデビュー曲として発表された。当初の計画ではもっと明るい子供らしい曲が用意されていたようだが、タッカー本人の希望で「Delta Down」に変更された。彼女のバージョンは1972年の全米のカントリーソング第6位に輝いた。当時13歳とは全く思えない歌声である。少ししみじみした感じのハーヴィー版より明るい感じが強い。訛りについてはテネシーの南部訛りよりかは西のテキサス訛りが強い。
レコード版
テレビ版
ヘレン・レディ
そして冒頭で聞いてもらった1973年のヘレン・レディ版。他のどのバージョンより力強い印象を受ける。オーストラリア出身のレディのバージョンには勿論南部訛りはなく、比較的カントリー風味は薄いが、断然歌が上手いのはヘレン・レディでありとても聞きやすい。現に、彼女のバージョンは1973年の全米1位に輝いただけではなく、カナダとオーストラリアでも1位をかっさらっているのである。ただ、ハーヴィー・タッカー版にはレディ版にはない味があり、どれもありだと思う。
まとめ
いかがだったでしょうか。歌詞に刻まれた切ない思いと悲しい過去、そして過去の呪縛をとかれたハーヴィーが作った名曲「Delta Dawn」。みなさんも夜道で運転することがあればぜひこの曲をかけてみてください。ご覧いただきありがとうございました。
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