【人事に効く論文】自己効力感、メチャ大事 → The role of personal resources in the job demands-resources model.
仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)における「個人の資源」について研究した論文です。
Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B. (2007). The role of personal resources in the job demands-resources model. International Journal of Stress Management, 14(2), 121–141.
1. 30秒で分かる論文の概要
JD-Rモデルは、職務を取り巻く環境を仕事の要求度(Job Demands)と仕事の資源(Job Resources)の2つの要素に分け、これら2つが、バーンアウトやエンゲイジメントといったアウトカムに影響を与えているんだよ、という理論です。このJD-Rモデルに対し、「個人の資源(Personal Resources)が、仕事の要求度と仕事の資源のアウトカムに何か影響を与えているんじゃない?」という仮説を投げかけたのが、この論文です。
論文では、個人の資源を「自己効力感」「組織内自尊心」「楽観性」の3つの典型的な特徴を含むものと定義しています。そして、研究の結論としては、、、
(1)個人の資源は、仕事の要求度と疲弊感(バーンアウトの要素)の関係を相殺しない
(2)個人の資源は、仕事の資源とエンゲイジメントや疲弊感との関係を媒介し、仕事の資源に対する認知に影響を及ぼしている
という2つのことが分かったそうです。
2. 現場目線の解説/感想
結論(1)個人の資源は、仕事の要求度と疲弊感(バーンアウトの要素)の関係を相殺しない
→ なるほど、自己効力感とかが高くても、仕事の辛さは軽減されないってことね。自己効力感さえあれば、仕事の辛さも何とか乗り越えられるのと思っていたんだけど、そうじゃないのか…。
結論(2)個人の資源は、仕事の資源とエンゲイジメントや疲弊感との関係を媒介し、仕事の資源に対する認知に影響を及ぼしている
→ ん? どういうこと? 結局は、個人の資源が高ければ、仕事はうまくいくってこと?
当初、少し混乱してしまいました。「媒介」という言葉をしっかり解釈できていなかったためです。つまりは、個人の資源はそれ単体では仕事の要求度の高さになす術がないけれども、仕事の資源が一緒になると「何だかいけそうな気がする~」という前向きな気持ちになり、アウトカムに良い影響を与える、ということであると理解しました。(間違っていたら、ごめんなさい)
ちなみに、パス図はこんなこと ↓ になっちゃっています。
3. 読後の余談
英語の論文を最初から最後までしっかりと読むのはこれで5本目なのですが、かなりコツを掴めてきました。以前は毛嫌いしていたのですが、今はもっと読みたいという気持ちになるほどに。英語論文漁りのノウハウがたまってきたら、そのうち記事にしたいと思います。
4. 関係性の高い論文
Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology, 22(3), 273–285.
2022年1月16日 初稿作成
2022年1月29日 タイトルを小変更