つれづれなるままに #3
恋はしたことはある。
むしろ恋多き、というか惚れっぽかった。
すぐ好きになるくせに、自分の気持ちが大きすぎて、それを受け止めてもらえないと分かったら冷めてしまっていた。
全力で恋するから、相手にも全力で好きになってもらいたかった。
でも、そんな相手、さらさらいないから今まで本気で好きになった人はいなかった。
それに人を好きになったら恋愛を自分の生活の中心に持ってきてしまうから、しんどくなってしまった。
一時期はポン・デ・リングのような恋愛、つまり生活の一部に恋愛を組み込もう、という大人な計画を試みるも、断念。
やっぱり恋愛は真ん中に持ってこなくては本調子が出ないみたい。
そんなこんなで、好きな人へのベクトルと、その相手からの好きのベクトルが同じ大きさでないと気が済まない、というのは私が恋愛をする上での不動の条件となってしまった。
もちろん、そんなこと、さえこには言えない。
「そんなんじゃ一生結婚できないよ」と笑われるのが目に見えているからだ。
なので、「まあ、そのうちいい人見つけるわ」と適当に流し、この話を終わらせる。
「あ、そろそろバイト行かなきゃ」とさえこが立ち上がった。
私はこの後何も予定がなかったので、もう少しこのままゆっくりしていく旨を伝えると、さえこはキラキラ輝いた笑顔で手を振り、軽やかに店を出ていった。
さえこがいなくなった後も、街は変わらなかった。
腕を組んで店を眺めるカップル。
クレープを食べながらふざけ合う高校生達。
スマホを眺めながらスタスタと歩く女性。
色々な人が行き交う様子を見ていると、それぞれに生き甲斐を聞いてみたくなる。
「あなた、何を目標に、何のために生きてるんですか?」って。
私はきっとそれを見失っているのだろう。
どうすれば見つかるのか、生き甲斐なんて。
次の日、起きたら、また涙が溢れていた。